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【映画評】ショーン・ベイカー監督『フロリダ・プロジェクト 真夏の魔法』(The Florida Project, 2018)

 最初はどこまで汚くて憎たらしいのかと嫌悪感すら抱いていたはずのクソガキ(少女)のことを、最後にはどうにかして助けたいと思わされるんだから、これはやはり大した映画なのではなかろうか。
 カメラが、この映画の登場人物たちの貧しく救いようのない人生を、しかしあまりにも色鮮やかに映し出すので、また俳優(特に子供たち)がまるでその状況を生きているかのようにそこにいるので、私は嘆息と涙をもって、これを見守るしかなかった。
 ここでフロリダのディズニー・ワールドは、何人をも受け入れる理想郷ではなく、死ななければ辿り着けない彼岸としてある。その周囲に位置し、主人公の母娘がその日暮らしを続け、ついには追い出されるモーテルは、その名をマジック・キャッスルといい、隣のモーテルもフューチャー・ワールドという。畢竟、そこは初めから夢の果てる地であったのであり、そんな場所だからこそ、彼らの人生、いや命もほんの一瞬、輝いて見えたのかもしれない。
 「プロジェクト・フロリダ」(語順は逆)とは、ウォルト・ディズニーその人がディズニー・ワールド建設時に掲げていた(未来都市エプコット計画を含む)、ディズニー・ワールド・リゾート構想の源流に位置する計画の名称である。

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