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セルフマネジメント、プロデュースの落とし穴

「音楽業界で成功したいのなら大手事務所やレーベルに所属しないと絶対に無理だ」


この慣例を破ったのが今や不動の地位を獲得したゴールデンボンバーさんでした。エアビジュアル系バンドと自らを称し、エンターテイメントを追求した結果、紅白にも出場し誰しもが知る国民的アーティストになりました。
アウトソーシングはあるものの、自分達の活動に纏わるほぼ全ての作業を自社完結しています。

楽器を弾かなかったり(一部は本当に弾いてるそうですが)出禁ギリギリのパフォーマンスには相当の批判があったでしょうし、それを貫くには勇気がいる事だったとは思いますが、新しい音楽ビジネスのあり方というのを提唱してくれたパイオニアです。


CDの売り上げは減少し、大手のレーベルさえもビッグネームアーティストを輩出する定石を見失う中で、先のゴールデンボンバーさんのように自分達で全て行う「※セルフプロデュース」という新しい活動の仕方が生まれました。  
※プロデュースの中にマネジメントも包括しているので、以後割愛致します。

自社レーベルと言われるオリジナルレーベルを立ち上げ活動するアーティスト(事務所も含めて)も無数に設立されました→有名なところでいくと9mm Parabellum Bulletを擁する残響レコードさん
また主婦やサラリーマンを現役で続け、それをむしろ売りの一つにして芸術家を目指すようなアーティストさんも次々と誕生しています。

そうした背景には、売れ線と言われる音楽のマンネリ化

音楽産業の売り上げの減少→最終的に自分達の給料にもろに反映される

自分達の納得のいく形で活動したいという拘り→事務所やレーベルのプロデュースですと、本当はデスメタル嫌いだけどめっちゃ売れちゃったから、仕方無くやらされてるとかそういうジレンマが起きます。注:デトロイトメタルシティから考察


そういった過去のやり方に囚われない自由な活動の仕方という事でセルフマネジメント、プロデュースは少しずつ広まっていきました。
しかし、誰しもがこの活動方法で上手くいくとは限りません。
むしろビジネスという事に全くの素人の人が
思いつきや命令されたりしたくないからといった安直な理由で活動をしだすと大失敗します」

これから活動を始める方、事務所やレーベルをやめて再出発を試みる方が
「こんなはずじゃなかった。。」なんて事にならないように転ばぬ先の杖となれたら幸いです。次項から順次公開していきます。


実際にセルフプロデュースで活動している(大半のインディーズの人はそれにあたる)人から寄せられた疑問や悩みを一部抜粋して掲載して参ります


「Facebookもツイッターもインスタもライン@もツイキャスも無料配布もぜーんぶやってるけどファンが全然つかないんだけど」

ど下手な鉄砲数撃っても当たりません


「毎回お金ばっかりかかって収入にならないんだけど、しかも気付いたらバンド費用なくなっちゃった」

稼ぐよりまず使い方を覚えましょう


「何したいのか見てて全然わかんないって言われちゃった」

自分達のやりたいように何となくでやりすぎた結果です


「フェスに出たいけど、ノルマ有りのところしか相手にしてくんない」

そもそも段階ってのがあるし、自分達の規模に合わせたライブは他にも沢山あります


「気が付いたら1年経っちゃった。。」

ご利用は計画的に


「ってか何していいかわかんないんだけど実際」

ググれカス



うーん。何だかネガティブな意見というより哀れな感じになってしまいました。。
実際そうなんです、大半の人が

「何となくやってるけど、何していいかわかんない」のです。

それは勉強不足なのか、そういった事を教えてくれる人がいないのか、気付いても無視しているのかそれとも全部なのかは分かりません。

ですが確実に言えるのがセルフプロデュースとは「会社経営と全く同じ」という事。

それぞれの悩みを会社の運営に置き換えると非常にわかりやすいです。

お金の管理→会社でいうと経理

アーティストの方向付け→何を売りにした会社、商品の策定

計画→年間事業計画、売り上げ目標等

ライブ出演→営業ルートの確保、拡大、販促

各種SNS→広告


その他にもバンド名→会社名 思いつきで決定すると検索されにくかったり、そもそも読めないからヒットしにくくなります
ファン対応→顧客対応 塩対応は痛い目みるよ
メンバーの役割→人事 マネージャーなどいない時は兼任になっちゃう
グッズ販売→二次商品 ラーメン屋で自前のスープとかインスタントラーメン売ってるよね


こう書いていくとまあ大体会社と同じだという事がわかるかと思います。
なので社会人経験(特にサラリーマンとか会社の構図を見渡せる仕事)の経験がないアーティストは不利だと言えます。

そういった諸々の面倒ごとを一手に引き受けてやってくれるのがレーベルや事務所なわけで、そういう事を考える事自体が苦手だったり嫌いだったりするアーティストにはそもそもセルフプロデュースは向いていません。
「都合よく自由に出来て全部自分達の収入になってハッピー!」とか考えてるのであれば大失敗するのは当たり前です。

普通の会社だってそんな甘くねーわ。

会社だって生き残りをかけて毎日必死で頑張ってる人達の集団なわけですから、それと全く同じように自分達も動かない限り勝機はありません(しかも商品は自分達だから余計盲目になりやすい)

逆にざっくりではありますが、以下の事が出来れば何とかセルフプロデュースは続けられる、若しくは食べていけるんじゃないかなという条件を洗い出してみました。
サラリーマンになれない=その他の仕事も務まらないというわけではありませんしね。


必要なのは明確な目標
その道筋を立てる考察力とイメージ力 
それを継続する根気と、リスクを恐れない決断力


目標は稼ぎたい金額でもいいですし、ライブに対しての集客数でも構いません。
ポイントとなるのは数値化する事と、目標達成までの期間の設定です。
数値化出来ないものは結果として換算しにくい為避けるべきです。
凄く上手になりたい!という目標をどうしても掲げるのであれば、現時点での課題曲の動画を撮り公開、達成時、若しくは期日にその時点の動画を撮り公開して閲覧数やコメント数、コメント内容などを比較対象としましょう。

会社では頑張ったからお給料あげるよ!とはなりませんよね?
仕事となった時点で結果を求められます。
よくある美談で経過がクローズアップされますが、しっかり結果を出している人は大抵その経過にも努力が垣間見れます。


考察力とは問題や課題に対して考える力そのものです。
何故そうなるのかという問い掛けを常に持つ事で鍛えられます。
絡み合った糸を見て両端から思い切り引っ張ったり、分からないものは分からないとすぐに諦めて放置する人は要注意です。
人の力を借りるのは大いに必要な事ですが、あくまで自分が主体となってやるべきです。
また方向性の定まってない人は大抵ここを蔑ろにしてる事が多いです。万人に好かれる事は無理ですし、無計画に活動しても時間とお金の浪費だけで何もいい事はありません。
企業でも見切り発車でプロジェクトが進行する事は稀です、綿密に計画を立てて(若しくは立てつつ進行させる)行動してます。

最初こそ上手くいったものの、途中から新規のファンが付かず伸び悩む事が絶対あります。
そういった際に問題の洗い出しなどの作業には自分達を見つめ考える事が大切だからです。
また活動の効率化や効果を最大限に上げる事にも関わってきます。普通の人の2倍動いても結果が半分以下だという方は、先ずは自分のやってる事を見直しましょう。


イメージ力とは考察したものが形になる事を想像したり予想する力です。
誰しもが理想とするアーティストや人間像があると思います。
それに向かって努力するのと、闇雲に突っ走ってやるのでは結果が大きく事なります。

ボディビルダーのトレーナーが行った実験で、片方には1年後の自分や自分の理想体型を常にイメージさせてトレーニングをさせ、もう片方には何もさせずトレーニングをさせたそうです。元の体型も行うメニューも全く同じものを採用したにも関わらず、結果はイメージさせた方は理想像に大幅に近付いたそうです。
させなかった方の結果はいうまでもありませんね。


始めた最初の頃や経過ではどうしても分かりずらいものではありますが、めげずにイメージを広げもっと具現化していきましょう。
MCやライブパフォーマンスだったり、声の質だったりをイメージトレーニングで鍛える事によって最終的に得られる結果が大きく変わってくるでしょう。


トレーニングや経理など誰にとっても非常に面倒です。人によって得手不得手がありますから、苦になる事もそれぞれ違うと思います。しかし仕事であり夢である以上は我慢です。努力した人間が必ず成功するわけではありませんが、継続や努力をした上でやりきった人は音楽以外でも物事への捉え方や取り組み方が変わります。
逆にそういった小さな成功体験を積み重ねる事が最終的に大きな成功となりますし、大手のように莫大な投資が出来ないセルフプロデュースのアーティストには積み重ねというものが必要不可欠な事なのかも知れません。


ミュージシャンに限らず人生において決断というのは非常に勇気がいる事だと思います。大手の事務所を辞めて独立するのも大きな決断ではないでしょうか?
リスクを取らないで大きく成功する事は不可能です。アーティスト像次第ではSNSを一切利用しない方が実はいい結果になる事もあります。
ただ群集心理としては取り敢えずやっておいた方が。。と思うはずです。

どんなに計算して努力しても詰まるところ結果は誰にも予想がつきません。オーディションなどでは受かったか落選かの二択ですしね。
しかし決断をしない事には負けはしませんが一生勝つ事もありません、ビビって何かに尻込みしている人は兎に角試しに行動してみては?

プロデュースをする側の人へ

仮にあなたがプロデュースをする立場だとして、ある程度アーティストに自由度(自分で考えて行動させたいという事)を委ねたいとしたら上記の条件に当てはまるか考えてみましょう。

もしどれも当てはまらないとすれば、それは全ての事をフォローしてあげなくてはならないので、相当の覚悟と根気とお金が必要です。
しかし考察力が備わっているのであれば、その他全ての条件は時間がかかりますが、根気よく教えていけばクリアー出来る可能性はあります。

常に考えさせる癖付けをして、目標を決めそこに対しての道のりを立てて、大舞台に立つ事を想像させモチベーションを最高の状態に保ってあげるのです。

赤ちゃんかよって思うでしょうけどマジでそうです。
学校の先生みたいな人には向いてるかも知れませんね。
自分がアーティストとして出来たら楽だよなーって思うけど、何故か自分だと出来ないのがこの世の理。目指せGTO。


何故プロデュースする自分には見えて
アーティストには見えないのか


僕にも経験がありますが、綿密に計画をたてて説明しても全く理解されずに一方通行になった経験はありませんか?
正直徒労感が半端ないので僕は今後プロデュースをやるにしても考察力といった部分はしっかり選定しようと思いました。

「こうすれば結果がこうなる」と計画を立てたり物事を俯瞰出来る人にはいいですが、そうゆう経験が無い人やそ考察が苦手な人に力説したところで理解はされません。

何故ならそれは算数が分からない人に数学を教えるようなものだからです。
問題に対してある程度でも自分なりに考えて取り組くむ事が出来る人間でないと、未知の物事に対してモチベーションや勇気を出す事は非常に難しいのが現実です。


また成功体験を持ってない人にはイメージも出来ず、幾ら力説しても不安は拭えず結果的にモチベーションが下がってパフォーマンスに問題が出て来て…という負のループになります。

特に若いアイドルを育てようとしているプロデューサーは非常に苦労するのではないでしょうか?人生経験って部分でも不利ってやつ。
逆にそうゆう人って一度でも成功体験をさせる事で飛躍的に伸びる事もあるんですけどね。


如何だったでしょうか?


上記を踏まえてセルフプロデュースをやるのか、事務所やレーベルに属すべきか決めてもいいかも知れません。

テレビに出たいよーとか自分ミリオン狙ってるんすよ!とかAネーション出てぶいぶいいわせたいっすって人は
下手にライブとか集客頑張ってやるよりも、キャラクターと容姿と特技を徹底的に磨いてオーディション受けまくった方が安パイです。
 (ついでに「オーディションの落とし穴」という記事も参考がてら読んでみてね)

逆に説明聞いても
「言いたい事は分かったけど、自分が向いてるのかはちょっとやってみないとわかんねーわ」って人には以下のテストを用意しました。
それを実際やってみて、もし失敗したら事務所かレーベルに属した方が良さげです。まあ結局中途半端にした上で入っても事務所は何もしてくんないですけどね。


以下にセルフプロデュースの適性テストとなる問題を掲載する。以下の項目をクリア出来たらセルフプロデュースの適性がある(あくまで適性なのでそれだけで必ず成功するわけではないです)

期間は半年間
毎日欠かさず2〜3時間目標に対して取り組みを実行する事

実行内容のルール
自分で目標や取り組む時間を決める事と、何故それにしたのか理由を説明をする事
お金で解決出来ない事に限定する
周りに経過報告や発表が出来る事を選ぶ
習ったりするのもOK
協力して貰うのはいいけど、完全に代行して貰うのはNG
出来なかったら近日中に必ず消化する事 

例:翌日と翌々日に+1時間ずつとか 休みたい日の前日にまとめて4時間行う等)
目標が変化したり進化するのはOK
例:パソコンに詳しくなる→DTMをいじってみる BPM200の早弾きを完璧にこなす→押尾コータローさんの楽曲をマスターする等

途中経過を一ヶ月などの区切りで発表したりまとめたりする事
途中でクリアしたら、残りの日数で達成出来そうな目標を掲げる事


出来るだけ明確な目標や数値化出来るとモチベーションも下がりにくいのでいいと思います。
セルフプロデュースに必要な事の縮小版だと思ってもらえるとわかりやすいかも知れません。仕事をして活動をする合間にやるのは結構しんどいので、宛てる時間は人それぞれでいいと思います。
手っ取り早く進研ゼミとかユーキャンとかでもいいんだけどね実際、でも好きだったり興味がある事にしておかないとマジで続かないからそこは注意した方がいいです。

最後に

セルフプロデュースが果てしなく難しい、ネガティブなやり方にしか見えない感じになっちゃいましたけど、難しい分達成感や楽しい事も多々あります。
私の場合は、考えてもなかった仕事に巡り合った事や(教習所でプロデュースしているアーティストがライブをさせて頂けた上にPAなどの周辺の仕事も請けおう事が出来た)
色々な角度で物事を見る事が出来たし、新しい目標も見えました。
セルフプロデュースで一番厄介なのが成功へのプロセスがイメージしにくい事です。
格闘技やスポーツでいえば勝てばいいですし、試験や受験でいえば受かればいいという明確な目的があります。一方で音楽や芸術というのはそのルートが無限に有るために迷いやすいといえます。しかし年齢や職業といった制限がないので、その道中すらも楽しんで取り組めるような気持ちでチャレンジしてみては如何でしょうか?
前進する人間には仲間が出来ます、応援してくれる人も出てきます。
仲間と会社を事業を興して、それを拠り所にした上で活動するなんて夢も実現可能です。

荒れ狂う音楽産業を切り開く、次のパイオニアはあなたかも知れません。


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