見出し画像

第1話 無人島生活の始まり

むかしむかし、あるところに、人づきあいが苦手な者がおった。
名前を「音無(おとなし)スカシ」と言った。
スカシは人づきあいが苦手で、常に一人になりたい、一人でいたいと
願っていた。その願いが天に届いたのか、ある朝、目が覚めると
そこは、見たこともない大草原が果てしなく広がっていた。
一人になりたいという願いがかなった、その場所は、文字通り無人島だった。その島は、ジャポニカガクシュウ島と言われていたところだった。

慌てて飛び起きたスカシは、産まれたままの姿(何も身にまとっていない)だったことに氣づくが、彼のほかに誰もいないこと、気候も温暖で過ごしやすく感じたことから、とりあえずは「ま、いいか」って感じだった。
 (無人島ライフストーリーは突然に♪・・・ってか)

初めのうちは一人の空間に満足したのか、のんきに鼻歌を歌ったりして開放感を味わっていたが、しばらくすると、虚無感、孤独感が彼を包み、身体を抱えてガタガタと震えだした。
「一人になりたい」と願ったことを後悔するようになっていた。

空腹感と喉の渇きも感じてきた。水を確保しないと・・・
その時、彼の額に何かが滴るのを感じた。木の葉から落ちてくる滴(しずく)だった。
これまでの生活圏でも樹木は当たり前のようにあったが、日々の暮らしの
忙しさと雑踏にもまれた生活に慣れていたせいか、その“当たり前”に氣づくことも目を向けることもなかった。
スカシは、今、確かに木の葉から滴り落ちる滴を感じて、その滴を味わい、葉の香り、滴の甘みも感じていた。

足元にはアリの行列があった。スカシは時がたつのを忘れ、そのアリの行列をジィーっと見つめていた。すると、一匹のアリがスカシを見上げた。一瞬だけど目が合った?ような氣がした。スカシは虫の死骸らしきものをアリの巣にせっせと運ぶ、その命をつなぐ営みをそっと見守っていた。この目が
合ったような気がした一匹のアリが、スカシの無人島生活に知恵を与える大きな存在になっていく。

その様子を木の枝から見下ろしているサルがいた。サルはスカシに向かってなにか赤いものを投げてきた。それはリンゴだった。
(万有引力って、こんな感じで発見されたのかな? サルが“ヒュー”って投げたのが“ストン”と落ちて、発見者が“ヒューストン”っていう有名な名前に
なったのか?)
スカシはリンゴが落ちてきた方角を見上げるとサルと目が合った。
「腹が減っただろう。うまいぞ。食ってみな。」そう言ってくれてるような氣がした。スカシはリンゴを手に取り、一口かじった。
芳醇な果汁が口の中に広がり、その香り、リンゴの蜜の甘みをかみしめながらリンゴを味わった。
 今まで当たり前のように、何も感じることもなく、ただただ空腹を満たすだけだったリンゴが、こんなにも味わい深く、ありがたいものだったことに氣づかされ、衝撃を受けるとともに、彼の頬に温かいものが流れ落ちた。
枝の上にいたサルもにこっと笑って、突然の訪問者となったスカシを温かく迎え、歓迎してくれてるように感じた。

スカシは今までのことを振り返った。人づきあいが苦手な彼にも、親がいて、周りにはいつも仕事仲間や友達がいたが、それでいてなぜか孤独を
感じていた。
 今、無人島では人っ子一人いない“孤独”な状態なのに、なぜか、アリや
サルと出会ったり、当たり前のように感じていた自然の営みが、新鮮で生き生きとしてるのを感じて、不思議と心が温まる感じがした。
 こうしてスカシが自然に触れ、その恵みに感謝する心が芽生えたことで、彼自身の「生きる」生命力と「自然に感謝し、自然と共存する」命の営みが本能を刺激し、彼自身が氣づいていなかった“超感覚”と“テレパシー”(念話とか念写)能力が開花していく。

スカシはさっきまでの虚無感も孤独感も、すっかり消え失せていた。
一匹のアリと一匹のサルが友達になってくれたような氣がした。

    テレレレッテレー♪
  スカシの無人島クエストに、アリとサルが加わった。
  新しい仲間に名前をつけましょう。

スカシはアリに「アリンコチエ」、サルに「サルモノクレタ」と名付けた。

  この物語はフィクションであり、作者である私の妄想から
  産まれた空想物語です。したがって、登場する人物や名称などは
  実在のものとは異なりますので、ご注意願います。

        つづく

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?