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腸内細菌と私 第6章自然治癒力をとり戻すために




自分を変える


多くの現代人が訴える体の不調。その背景にミネラル不足や腸の機能不全があることは今まで述べたとおりです。腸がしっかり本来の働きをしていないとき、大腸菌に代表される悪玉菌が繁殖して、その毒性が体内に悪影響を及ぼしていることも体の不調の原因でした。
このように弱ってしまった現代人の腸の中で、善玉菌が働きやすいように腸内環境を整えるにはどうしたらよいのでしょうか。
まず考えられるのは、食生活を改善して、不足したミネラルを補給するだけでなく、悪玉菌が繁殖するような体にしてしまったこれまでの自分を変えること、つまり、より総合的な自己改善が必要です。
 
◎「想いの力」とは「自然治癒力」を引き出す心の働きのこと
人間の体には本来、病気から体を守り、またたとえ病気になってもそれを自然に治癒する力があります。これを「自然治癒力」と呼んでいます。この自然治癒力を引き出すための、心のあり方、具体的にはストレスへの対処の仕方や気持ちの持ち方をプラスに働かせることこそが私が考える「おなかいきいき健康法」なのです。
まず、この自然治癒力を考えるうえで、体の免疫システムのことに触れないわけにはいきません。
免疫の働きがなくては人は1カ月も生きてはいけません。それは無数の細菌・微生物が存在する地球上において人間を安全に守っているのが免疫システムだからです。
では免疫とはどのような働きをいうのでしょうか。
私たちの体には、生まれたときから自分の体内にあったもの(自己)と、そうでないもの(非自己)を識別する能力があります。例えばウイルスや細菌など異物が体内に入ってくると、すぐにそれを非自己として識別して排除しようとします。非自己であると認識された異物は「抗原」と呼ばれます。体は体内に入ってきた「抗原」を記憶し、それに立ち向かう「抗体」をつくります。同じ「抗原」が体内に入ってくると、「抗体」が結びついて、一刻も早く「抗原」を排除しようとします。
この「抗原」と「抗体」が結びつく現象を「抗原抗体反応」または「免疫反応」といいます。
この免疫システムが正常に機能するかどうかは、その人の生活習慣だけでなく心の持ち方にも深く関係しています。つまり免疫力をつけるのは栄養とか運動だけではありません。リラックス・精神力といった要素も深い関係があることがわかってきたのです。

ストレスと健康


◎腸内細菌もストレスの影響を受ける
人のその時どきの精神状態によって、腸内にもさまざまな影響があらわれます。
例えば、便秘もその種類がいろいろありますが、精神的なストレス、感情の変化などによって起こるタイプのものもあります。便秘が多くの病気の原因であることに注意しなくてはいけません。
また、ストレスによって腸内細菌も影響を受けるということもわかっています。実際、病気になったときはもちろん、日常的に何らかのストレスの影響下にあるとき、腸内ではビフィズス菌などの善玉菌が減少して、ウェルシュ菌などの悪玉菌が繁殖してしまうのです。腸内フローラの悪化によってさまざまな症状が出てくることはこれまで見てきたとおりです。
ストレスが免疫系に与える影響を研究する精神神経免疫学という分野があります。そこでは、くよくよしていると病気になりやすい、といったことでも免疫の研究からそれを証明することができるそうです。ある研究では、ストレスを感じやすい人にある抗原を与えると、ストレスをあまり感じない人より免疫反応が弱かったという結果を得たそうです。つまり、同じ状況にあっても、ストレスを感じやすい人のほうが病気になりやすいということです。
ただし、人が自分の置かれた状況をどのように受けとめるかについては、その人の立場や年齢など、さまざまな条件によって異なってきます。例えば若い頃思い悩んでいたことが、年齢を重ねて経験を積むことで自然と解消される場合もあります。逆に若い頃は熱意を持ってとり組んでいたことが、年齢とともに苦痛になってきたりすることもあるのです。ですから一概にストレスに負けるのは弱いからだ、と決めつけるのは偏見です。ストレスを感じるのはその人が個性あるまっとうな人間だということです。
しかし、その人にとってストレスがマイナスに働いている場合、そのまま放置しておいては心身の病気としてとり返しのつかない状態になることも考えられます。私たちが健康で生き生きと生きることを目指しているかぎり、ストレスに対して適切な対処の仕方を身に付ける必要があります。
 

ストレスは微量元素不足をまねく


食べ物からのビタミン・ミネラルの摂取量が、昔に比べて減っている一方で、現代人は微量元素の要求量(必要量)が増大しています。これには三つの原因がありますが、その一つは現代人の生活環境に、多くの化学物質が侵入していることによるものです。これらの化学物質の大部分は私たちの体にとって異物であり、体はこれを解毒しなければなりません。この時、ビタミン・ミネラル類を大量に必要とします。
このような化学物質の侵入をストレス医学の分野では「ケミカルストレス」と呼んでいます。食品中の残留農薬、添加物、大気や水の汚染物質はいずれもケミカルストレスです。
次に、単にストレスと呼ばれる精神的なストレスです。これも栄養学的には大きな問題です。
長期にわたって一定強度以上の精神ストレスや、あるいは一時的にきわめて大きなストレスがあると、体は大量のビタミン・ミネラル類を消耗します。
体にとってのストレスは台風のようなもので、生体という家屋を破壊し続ける現象に例えられます。体内にその修理材料となる栄養素類が十分にあれば、破壊より修理速度が上回るので病気にはなりません。
最後に、ビタミン・ミネラルの欠乏による栄養アンバランスも体にとっては大きなストレスになります。栄養不足といえばタンパク質・炭水化物・脂肪の摂取不足を主に考えていましたが、その陰にミネラル・微量元素の栄養欠乏を忘れていました。ミネラル・微量元素の栄養欠乏の食生活が長く続くことは、生体の家屋の釘が次第にゆるんでくるのと同じ状態で、ストレスヘの抵抗力は割引されることになり、何か別のストレスに遭うとたちまち生体損傷が急進します。見ためがいくら立派な工場であっても、基礎が悪くゆるんだ釘で建っていて、中には錆付いた機械ばかりが並んでいれば、生産効率は悪いし、ちょっとしたことであっという間に建物も根底から崩れてしまいます。このミネラル・微量元素をしっかりとるということは、腸内善玉菌が産生した酵素を、有効に効率良く活用できるようにするということです。しっかりとねじを締め、釘を打ってやり、台風や地震がきてもびくともしない頑丈な建物にすると同時に、機械がしっかり動くよう油を差してやり、工場としての機能もしっかりと果たせるようにするのと同じことなのです。ミネラル・微量元素は表立っては見えないけれど、なくてはならない縁の下の力持ちなのです。
昔よりも精神的ストレスで心身の不調を起こしやすくなったのは、「栄養アンバランスのストレス」というハンディーが潜在しているためで、今ではあらゆる病気に対する抵抗力が低下し、すぐ風邪を引くなど感染症になりやすくなっています。日常生活ではいろいろなストレスは避け難く、健康と半健康との間を往復しています。したがって日頃からビタミン・ミネラル類を含んだ食材を十分にとることやサプリメントで補うなどの工夫が必要です。バランス良くミネラル・微量元素を補給することにより、腸内善玉菌の活動が活発になり、善玉菌が産生する酵素をはじめ、すべての体内酵素の働きを有効にします。このことはストレスへの抵抗力を強化するとともにきれいな血液をつくることになります。

「ポジティブ思考」と「感謝の気持ち」


◎自分の「想い」を省察する
私たち一人ひとりは、意識していようといまいとそれぞれのものの見方や考え方を持っています。それは生まれながらのものというより、さまざまな経験を経て、またいろいろな影響を受けて身に付けてきたものです。それを1日や2日で望ましいものに改善することは困難ですが、目標に向かう決心は今ここで固めることができるでしょう。私たちはより健康的に生きるために、自分の体や心をむしばんでしまうような精神的態度から抜け出すべきであると気づきます。ものの見方や考え方を変えることによってストレスの悪影響をできるだけ受けないようにすること。それは心の「クセ」を治すことでもあり、つきつめるとその人の人生観にもかかわってくる精神的な領域の問題でもあります。ですから個人的な問題を差し置いてさまざまなストレス解消法を知るよりも、その前提として正確な自己理解が必要だと考えます。
私たちはまず自分の「想い」を省察することから始めます。なぜなら、体や心に悪影響をあたえるネガティブ(否定的・消極的)な想念をコントロールし、体や心を力づけるポジティブ(肯定的・積極的)な想念をとらえていく、すなわち人生そのものを美しいととらえることができる心の在り方を目指しているからです。
私たちの意識はさまざまな想念(知覚・イメージ・ことば・感情など)の流れの中にさらされています。その大部分を占めているのは感情です。その流れの上層部分にあるポジティブな感情、すなわち温かさ、清々しさ、明るさ、平安、静けさ、やわらかさ、やさしさ、希望、成長する感じ、広がっていく感じ、愛などの感情が流れているゾーンに意識があるとき、私たちは自然とポジティブな想念をとらえるようになります。ものごとを本質的かつ建設的に考え、自然や人間性の美しさに打たれることでしょう。
しかしそれとは逆に、下層のネガティブな感情のゾーンに意識があるとき、すなわち冷たさ、どろどろした感じ、暗さ、不安、騒々しさ、酷薄さ、失望、衰える感じ、閉じこもっていく感じ、憎悪などの感情にひたされると、見るもの考えるものすべてネガティブに歪んでとらえてしまいます。世界は不幸と悲しみに満ち、夢は失われ、考えはすべて破壊的になっていきます。ネガティブな感情が自分の想念をネガティブに歪めてしまうため、遭遇するストレスから悪影響ばかり受けるのは当然です。先に述べたように、本人の心が衰えると腸内フローラも衰えてしまいます。

リラクゼーション入門 軟蘇の法

次回は 第6章 自分の「想い」を省察するです。お楽しみに。

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