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ヤングケアラーのアウトリーチ。 そのポイントは、医療機関勤務のPSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)による発見

 ヤングケアラーは、重層的支援の対象となる。なぜなら、介護支援、医療支援、就学支援、心理的支援などが必要となってくるからである。どれが欠けても、支援は不十分になってしまう。ヤングケアラーが介護していた親や祖父母に対する介護支援や医療支援はもとより、ヤングケアラーが教育を受けるためには、学校からの就学支援や地方自治体が実施する貧困家庭に対する家庭教師派遣制度なども必要となってくる。また、ヤングケアラーの心の支援のために、心理カウンセラー、ピアサポート、ピアサポートグループなども必要となってくる。時には、ヤングケアラー自身がうつ病や心身症となっていることもあり、精神医療が必要な場合もある。
 ヤングケアラー支援のためには、多機関連携によって、これらの複数の支援をコーディネイトすることになる。各自治体がこぞって、ヤングケアラー相談窓口を設置し、ヤングケアラーの支援に力を入れようとしているが、以上のような多機関連携による重層的支援を行えるかが課題なのである。
 さらに、もう一つ問題がある。それは、支援すべきヤングケアラーの発見の問題である。ヤングケアラー本人から相談機関にSOSが来ることは滅多になく、ヤングケアラーと関わる関係機関からのアウトリーチによって発見され、支援につながる場合がほとんどである。ヤングケアラーが自らSOSを出さないのは、家族の家事・介護をするのが当たり前であると考え、自身がヤングケアラーだと気づいていないことからくる。また、家庭の事情を外部に知られたくないという意識もあり、先生や周囲の大人に相談しない場合が多い。自分の家庭のことで他人に迷惑をかけたくないという道徳意識が強いヤングケアラーもいる。
 つまり、ヤングケアラーは、相談という行為が、いじめや不登校で悩んでいる子たちよりも、やり辛い状況にある。だからこそ、ヤングケアラーと関わる機関の職員が発見することになる。
 その一つは教師である。しかし、教師はソーシャルワーカーではないので、スクールソーシャルワーカーに繋がないと、多機関連携による支援には繋がらない。学校でのヤングケアラーへのアウトリーチは、いかに日頃から教師がスクールソーシャルワーカーと連携しているかが問われることになる。
 実は、教師よりも、ヤングケアラーへのアウトリーチがしやすい職業がある。
それが、医療機関に勤めるPSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)である。
例えば、母親がうつ病であるというヤングケアラーはかなり多く、医療機関で治療を受けている。他にも、認知症の祖父母を介護しているヤングケアラー、発達障害の兄弟の世話をしているヤングケアラーがいるが、これらの場合も、家族が患者として医療機関に通っている。
 PSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)が、患者の社会復帰や社会適応のために、患者の家庭環境などについてもアセスメントを行なっているはずであり、家事や介護を誰がしているのかと聞けば、すぐにヤングケアラーを発見できるはずである。例えば、母子家庭で母親がうつ病の場合、ほぼ全てがヤングケアラー状態であるか、あるいはそうなる可能性を秘めていることになる。
 つまり、ヤングケアラーの介護や世話を受けている家族が患者として通院する医療機関のPSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)が、患者へのアセスメントを通して、ヤングケアラーへのアウトリーチができるわけである。福祉職であるので、お得意のソーシャルワークを使い、学校、福祉事務所、児童相談所と連携ができると思われる。この場合、子供の人権や保護の観点から、守秘義務のある公的機関との連携は可能だと思われる。患者と共に、その子供も一緒に来てもらうか、家庭を訪問し、子供から家庭の状況を聞くべきである。患者の社会復帰・社会適応に相応しい生活環境を調整するのも、PSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)の役目であり、到底、ヤングケアラー状態の家庭が相応しい生活環境だとは思われない。
 医療機関のPSW(精神保健福祉士)やMSW(社会福祉士)は、ヤングケアラーを発見したら、所定の公的機関(児童相談所など)に情報提供すべきである。そして、支援に際しては、多機関連携の重要なメンバーとなるのである。
 


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