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誰も信用しない利己主義者の日常②【超ショートショートまとめ】

Xには『裏垢女子』と称する明らかな詐欺アカウントに群がるバカな男共が大勢いる。
俺はそういう男共のリストを作り、客に困ってそうな立ちんぼたちにリストを売り込む。
さらに男共のリストを買った立ちんぼたちのリストを作り、今度はそれを客に困ってそうなホストたちに売り込んでいる。

一度売ったリストは転売されることもあるが、立ちんぼもホストもライバルに塩を送るやつは少ない。

架空の現代人、比嘉冷射士(ひが れいじ)の日常を描いた超ショートショートのまとめです。
比嘉冷射士は信頼していた人々に裏切られた経験から、他者を信頼できなくなった青年です。
比嘉冷射士本人は他者を「利益追求の道具」として考えていますが、実際は他者と騙し騙される関係を持つことで寂しさを紛らわせようとしています。
詳しい経緯については〈比嘉冷射士のプロフィール〉にて。

説明

〈比嘉冷射士のプロフィール〉


皺だらけの手がおひつから湯気の立つ白飯を掬い、鮮やかな橙色のイクラを包み込んだ。
白飯は宙で回転しながら三角に成形され、仕上げに海苔が巻かれた。
受け取ると、「よくこれを触っていたな」というほどに熱い。
あぁ、まさか人が素手で握るタイプのおにぎり屋だとは。
無理かもしれない。

雑菌が繁殖しているかもしれない白米

比嘉冷射士はゲイであるが、後に結婚詐欺のターゲットとの間に子供を授り、無償の愛を捧げる喜びに目覚めた。
最期は子供の治療費を稼ぐため身を粉にして働き、過労で死んで骨だけになった。

ある未来での末路

青空に月が浮かんでいる。
あれには利用価値があるのだろうか。
資源が眠っているのだとしたら、利権争いに勝つ国はどこだ?
……いつからだろう。
自然の美しさを素直に感じられなくなっている。
何を見ても、競争の対象として捉えてしまう。
子供の頃、世界は俺だけのものだったのに。 

無心で眺めていても、すぐに「大人の考え」をしてしまう月。

いつも以上にやかましく講釈を垂れていた女性の社員が、急に黙り込んだ。
「ちょっとトイレ……」
弱々しく言って背を向ける社員のタイトスカートから覗く太腿に、血が滴っている。
俺はすぐに「○○さんが怪我を!」と騒ぎ、皆の注目を集めた。 その社員は狙い通り顔を真っ赤にしていた。

自宅にて、自分の切れ痔から垂れた血を眺めながら、少しだけ罪悪感を覚えた。

読んでいただきありがとうございました。
あなたが他者を足蹴にしてでも幸福になる逞しさを持っていますように。

挨拶

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