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自分がメニエール病になって

先日の投稿で自殺率について少し触れた。

実は私は精神障害以外にもメニエール病という病を抱えている。過去には厚生労働省で難病指定されていたのだが、2015年から対象外になった。

私が発症したのはまだ難病指定されていた時代だった。

毎日がしんどかった不動産事務所勤務時代、週末のある土曜日の朝、目覚めた瞬間から視界がぐるぐる回っていたのである。首を動かすと、動かした方に視界の回転の向きが変わる。普通の目眩じゃない。立ち上がってみても回転が止まらなくて立っていられない。またすぐベッドに倒れ込んだ。当時から過眠の傾向にあったのでもう一度眠ると目眩は治っていた。午後4時ごろになっていたと思う。
目眩は治り、耳鼻科はもう受付時間も終わっていたため、月曜日に休みを取って行った。「もう症状は治っているのですが診てもらえますか?」と聞くと「大丈夫ですよ」と言われ聴力検査を案内された。その後眼振検査も受けた。医師によるとメニエール病患者は聴力検査のグラフで特徴的な曲線を描くという。耳の中に水が溜まっているのが原因で、それを排出する薬を処方するという。「勝手に中断すると症状が悪くなるので、検査を続けながら徐々に薬を減らしていくようにしましょう。来週も来てください。」再診のお知らせ。

処方されたのは目眩止めのトラベルミンとその他諸々。そしてメインディッシュのメニレット30g。こいつがなかなかの曲者で、とんでもなく不味い。医師にも薬剤師にも「おいしくないですよ」と言われてはいたのだが想像を絶する不味さ。
匂いは特段強くないし少し薬品臭がするくらいで大したことはない。問題は味である。苦い。ひたすら苦い。そしてその苦味をなんとかしようとエーザイが考えついたのか、とんでもなく甘い味付けがされている。しかし甘みが苦味を打ち消すということはなく、それぞれが強烈に引き立った、素材の味がとても感じられる激マズゼリーである。この「味だけが不味い」というのがまた至って人工的で"不自然"で、飲み(食べ)にくさに追い打ちをかける。
私は漢方薬などでもそうなのだが、苦いものを飲み込むと吐き出してしまう。飲み込んで喉まで行っても「体に入れてくれるな」と言わんばかりに戻ってきてしまう。メニレットも一筋縄では行かないに違いない。さて、どうしたものか。
私が考えついたのは「苦味+甘み=コーヒー」ということで、牛乳で流し込むという選択だ。ゼリーが舌に触れないよう先に牛乳を口に含みゼリーを飲み込む。これが意外とうまくいって、私はこの投薬期間家の牛乳を大量消費した。

それにしても30gとはかなりの量で、半分飲み込んだあたりで正直うんざりする。しかもこの30gを飲み終わっても症状が改善していないとまた30gを1週間とか2週間分処方され、症状が改善していたらしていたで20gがやってくる。そして聴力検査が合格ラインまでいかないとこれが続き、結果メニレットとの付き合いは数ヶ月にもわたることがある。

私は思った。目眩という症状は1日で終わってしまうのに1ヶ月以上この"邪悪な"味をしたゼリーを食べさせられるのはむしろストレスで気が滅入る。しかもメニレットは

血漿浸透圧を高めることで、脳圧降下作用、眼圧降下作用、耳の内リンパ圧降下作用、利尿作用を示します。

メニレット70%ゼリー30g | くすりのしおり : 患者向け情報

というもので、症状に作用するものではない。あくまでも耳の中のリンパに溜まった水を抜くための薬だ。服用していて効果の実感がない薬、しかも服用するのに苦痛に伴うものは一気にモチベーションが落ちる。
「こんな不味いゼリーを一日90g無理やり牛乳で流し込んで、なんの効果も感じられない。これなら症状は悪くなってもいいから、治療をやめてしまいたい。」

ふと日本の自殺の多くは病苦からの自殺であることを目にしたことがある。警察庁の資料も発見したので参考にしていただけると幸いだ。

https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/jisatsu/H28/H28_jisatunojokyou_02.pdf

なんだか気持ちがわかる気がしてきた。
効果があるのかよくわからない薬、治療を続けているにも関わらずよくならない症状、苦痛を伴う治療、これらが合わさったら私も命を引き換えに治療をやめることを選んでしまうかもしれない。

たかがこんな経験で、病苦で自殺する人の気持ちが全てわかったとは、もちろん言わない。しかしその思考ロジックはほんの少しだけ分かったかもしれないと思った次第である。
私は今医療に強い大手化学メーカーのグループ会社で働いでいるが、治療は可能な限り快適でないといけないと感じている。

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