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三輪自転車に憧れて

なんだか妙に憧れているものがある。それが「三輪自転車」だ。前に二輪と荷台がついており、海外で言うカーゴバイクのようなものなのかもしれない。荷台には屋根がついていて、もちろん自転車としての機能は持ちつつ、停まると屋台のようになるやつだ。

三輪駄菓子屋すいすい

川越で、知り合いの方が週に一回駄菓子屋をやっている。前に荷台がついた三輪自転車で住宅地を走り抜け、空き地や軒先に現れる”移動式の駄菓子屋”だ。
ずっと気になっていて、ようやく出店している日に行くことができた。

なんだかこの自転車の形態と、その出没する様に猛烈に惹かれてしまった自分がいる。

この駄菓子屋をやっている荒木さんはご自身も3人の子どもを育てる父。三輪自転車の駄菓子屋を続けるのは大好きな子どもとの接点を持っていたいから。子どもたちがどんなことを考え、何にハマっているのか。駄菓子というきっかけを介して他愛のない会話をしたり感性に触れることを楽しんでいて素敵だなと思った。

駄菓子の金額はどれも50円しないくらい。子どもの小遣いくらいで買える。ただ買えるだけではなくて、やたらと当たりがよく出る駄菓子を揃えていたり、一人一回必ずジャンケン大会をして、勝てば好きな駄菓子がもらえる。お金のない子でも楽しみに来れるし、その楽しい空気に居心地のよさを感じているようだった。

告知方法も昭和的で、親向けにInstagramはやっているとのことだが、子供が情報を得るのは来月の出店予定が書かれたA5版くらいの小さな紙。しかもなにかの裏紙。これを見て子どもたちはまた来週来よ〜という感じでやってくるそう。
それでも次から次へと子どもがやってきて、久しぶりな子もいれば毎日顔を合わせている子もいる。
子どもたち同士の関係性をつくる場になっているし、親たちが見守りできるような場所になっている。なんとなくこうして顔見知りの関係性ができることが、その地域で暮らす上での幸福度につながっていたり、いざというときに助け合える関係性なのだと思う。

ただの空き地に、オジサンが現れる場所にぱっと公園のような空間が出来上がっている。どんな場所でも居場所をつくることができる。大それたことではなく、自分の好きの延長でやっていたら集まってくるのだということを教えてくれた体験だ。

平日の夕方、ただの空き地に小学生や親御さんがぞろぞろと集まってくる

自転車の小商

ちょっとした小商のお店というと、どこかのスペースを小さく借りてやるか、キッチンカーでやるか。どちらもスモールスタートとはいえ、場や車を持つにはそれなりのコストもかかるし、なんだか個人でやるには覚悟がいる。
だけど、この”自転車”だったら、とてもライトにふらふら漂う感じがする気がした。そんな親しみやすさがあるのかもしれない。

三輪駄菓子屋すいすいの他にも、
川越でまちなかの軒先でコーヒースタンドをやっている「COFFEE POST」や、

https://brutus.jp/coffeshop_newwork/

鎌倉で人気となった、ケーキを行商スタイルで販売する「POMPON CAKES

https://colocal.jp/topics/think-japan/kamakura/20180315_111777.html

コペンハーゲンとかには、スクーターの荷台コーヒースタンドやホットドックを売って、本業とは別に、休日に公園で小商する人も結構いるらしい。

https://parkful.net/2017/01/photocontest201701_interview_nozycoffee/

三輪ではないけど、イギリスの郊外でファーニチャーを自転車で運んで広場をつくる「Mobile Town Square」というプロジェクトもあった。めっちゃかわいい。

https://www.dezeen.com/2013/09/10/cricklewood-mobile-town-square-by-spacemakers/

最近では休日にマーケットが開かれたりすることが増えてきたが、日常的にこんなお店があちこちに点在しているまちも素敵だなーなんて思う。

三輪自転車で てんてんと・・

三輪自転車に惹かれるのはこんなところがポイントなんだろうと思う。
・手軽に低コストではじめられること
・自転車がアイコンになっていること
・なにも無かった場所にパッと空間ができていること

OpenA+公共R不動産の編著『テンポラリーアーキテクチャー :仮設建築と社会実験』でも、都市を軽やかに使う事例、制度、アイデアを掲載している。
いきなり本格的な建築をつくるではなく、まず小さく早く安く実験する。都市をもっと軽やかに使いこなそう。と、著書でテーマにしていたことを、自分の生活に置き換えて考えるようになってきた。

自分も三輪自転車に乗ってまちなかをてんてんと出没するオジサンになるというのが一つの夢である。

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