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マンガ『栄光なき天才たち』。いやあ、「栄光」だらけですよ。すごい人たちだ!

 『栄光なき天才たち』シリーズ(作:伊藤智義、画:森田信吾、集英社)はいいですよ。是非ご一読を。

 私マンガ好きなんです。本棚二本分にぎっしり。(自慢できんなあ)
「週刊ヤング・ジャンプ」に連載され、『新栄光なき・・・』と『栄光なき・・・2009』から『栄光なき・・・2011』まで続きました。
 
 原作を担当した伊藤智義さんは現在千葉大工学部の教授。ご専門はコンピュータで、天文学用の重力多体問題専用計算機(GRAPE)を開発したとか。なにがなにやら・・・。
 すべての原作を担当したわけではなく、作画の森田さん単独で作ったものもあれば、他の人が原作を書いたものもあるそうです。森田さんはマンガ家コンタロウ氏のアシスタント出身。おお、コンタロウといえば、『いっしょうけんめいハジメくん』ですな。(知らなくてもよろしい)
 
 スポーツ界からは、古橋廣之進、人見絹枝、沢村栄治、円谷幸吉、アベベ、サチェル・ ペイジ。医学関係は、鈴木梅太郎、北里柴三郎、山極勝三郎、野口英世、芸術界なら、ドルトン・トランボ、マリリン・モンロー、樋口一葉、川島雄三、島田清次郎。科学界だと、数学のガロア、物理のハイゼンベルグ、それに大河内正敏、寺田寅彦、仁科芳雄の理化学研究所、等々。
 ジャンルなんてお構いなし。ありとあらゆる方面の天才が紹介されます。鈴木商店とか東大野球部とか、団体様も出てきます。
 
 さて、タイトルにある「栄光なき」とは、どういうことか?「今もって正当な評価を受けていない。」「現在は評価されているが、ご本人存命中は評価されていなかった。」「ご本人存命中も、現在も評価されてはいるが、厳しい社会情勢にさらされてご本人はえらく苦労した。」という点で、簡単に「栄光」とは言えんなあ、という天才たちです。
 
 貧困、病、失恋、周囲の無理解。
 天才たちが苦しんだ原因はいろいろとありますが、やはり非情なまでに人間を追い込み、破滅させるのは戦争です。戦争さえなければ、天才は、天才の名をほしいままにできたのかも・・・。まことに悲しいことです。
 特に、科学者たちは否応なく戦争に巻き込まれ、協力させられていきます。たとえみずから進んで協力したように見える人でも・・・、本心はどうだったのかなあ?全巻通して読むと、「やっぱり戦争はあかん」と思いますね。
 
 私のお気に入りは理化学研究所の寺田寅彦さん。明治から昭和の物理学者で電気火花の飛び方や琴の音色を研究した変人さんです。名言中の名言を残しています。「天災は忘れた頃にやってくる」。
 
 科学者にして、漱石門下。随筆、俳句を得意としました。ローマ字の短歌(?)を染め抜いた手拭いを作って配ったとか。

 Sukina Mono Itigo Kohi Hana Bizin Hutokorode site Utyu Kenbutu
 好きなもの イチゴ コーヒー 花 美人 懐手して 宇宙見物
 こんな歌は、よっぽど心に余裕を持った人でなきゃ詠めない。

 では、私もおひとつ。
 Sukina Mono Mugi to Budo to KomenoSake Kimito Futaride Keibakannsen

 まことにおそまつさま・・・。

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