読書録113 伊集院静著「ノボさん」
国語の教科書に載っている、キャッチーな横向き写真の人、柿を食べたら法隆寺の鐘が鳴ってしまう人、「俳人正岡子規」が、魅力的な「ノボさん」になったのは、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」を読んでからだ。
俳諧や短歌における業績もさる事ながら、短い人生をエネルギッシュに駆け抜けた「ノボさん」の人間的な魅力が好きなんだよね。
「坂の上の雲」では、秋山真之との友情がメインに描かれているが、本作では夏目漱石との友情がメインテーマになっている。
伊集院静さんは余計な描写を省き、子規居士いう所の「写生」的に本作を描いているのがとても心地よく、辛い闘病の場面も、淡々としていてよい。
とくに向島のシーンは良かったなぁ…
子規居士の著作では、「病牀六尺」よりは「仰臥漫録」の方が個人的には好き。生き生きした感情は後者に出ていると思うので。
伊集院静さんも世を去ってしまった。本当に寂しい限り。
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