清水正浩

ポンコツにしてボンクラノート、略してP.B.N

清水正浩

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最近の記事

読書録123 鈴木理生著 「江戸の都市計画」

タイトルは「都市計画」とは言うものの、水運を中心にした「港湾史」と言った方が正確かなと思う。 予想とはちょっと趣きが違う内容ではあったが、港湾系の短大を出て、港湾企業で30年近く働いてきた自分的にも、なるほどと思う事が多く面白く読めた。 北日本から太平洋沿いに、東京湾に向かう航路の場合、現在運行しているような10,000トンクラスの貨物船でも荒天時に犬吠埼を越えるのは結構難しいのだけれど、当然小型の帆船時代には難しいわけで、手前の常陸那珂港で荷卸しして、江戸まで川船で運ぶ

    • 読書録122 喜瀬雅則著「中日ドラゴンズが優勝できなくても愛される理由」

      待ちに待った本作なのである。 https://note.com/jrc43z/n/n1e859f34c495 https://note.com/jrc43z/n/nbad207cdcb77 阪神タイガース、オリックスバファローズ、福岡ソフトバンクホークスと、著者の本は踏み込んだ取材でタブーにも斬り込むところが面白い上に、書かれたチームは必ず優勝するという縁起の良さもあって、次はドラゴンズを書いて欲しいと願っていたので、発売の報を聞くや書店に駆け込んで購入した次第なのであ

      • 読書録121 井端弘和・西尾典文著「日本野球の現在地、そして未来」

        落合博満さんの講演会に行くと必ず名前が挙がるのが「井端、荒木、森野」の3選手で、彼等は「地獄の落合ノック」をクリアし、ドラゴンズ黄金期を象徴する選手達なのである。 中でも本作の共著者である井端氏は、年長者でもあり、野球頭脳に優れ、万事に抜かりの無いスマートなプレーをする名ショートだったし、引退後もアマチュア球界に食い込みつつ、指導経験を積んでいるのは知っていたけれど、まさかここまで深くアマチュアも含めた「野球」に取り組んでいるとは驚いた。 井端氏にはいずれドラゴンズに指導

        • 読書録120 高鳥都著「必殺シリーズ始末 最後の大仕事」

          大好きな「必殺シリーズ」を深掘りする素晴らしいシリーズの3作目(別出版社の仕置人大全も入れたら4作目)なのである。 「最後の大仕事」とサブタイトルにあるのが寂しくて、読むまでに時間がかかってしまった。 今回は「仕事人」以降、いわゆる「後期必殺」の話がメインとなる。 リアルタイムで視聴していた頃の話が多く楽しかった。 演者の村上弘明さんは、デビュー作の仮面ライダーが直撃する世代だった事もあり、朝ドラ「都の風」大河ドラマ「武田信玄」「秀吉」他にも「腕におぼえあり」「柳生十

        読書録123 鈴木理生著 「江戸の都市計画」

          読書録119 森功著「鬼才 伝説の編集人 齋藤十一」

          生来の活字中毒だから、廉価かつ種類が豊富で持ち運びの楽な文庫本には随分と世話になってきた。 中でも新潮文庫のレトロなデザインと、栞のいらない紐付きの仕様はとても好きだ。 本書の主役である齋藤十一は、雑誌編集の「鬼才」なのだけれど、新潮社の創業から丁寧に描かれているので、文庫への親しみもあって興味深く読めた。 やっぱり、イデオロギーや主義主張に囚われすぎない、白でも黒でもない巨大なグレーの存在は面白いね。 ただ、新潮社は同族経営かつ、創業家の苗字が「佐藤」というポピュラ

          読書録119 森功著「鬼才 伝説の編集人 齋藤十一」

          読書録118 三浦英之著「涙にも国籍はあるのでしょうか」

          東日本大震災が起こる2年前に亡くなった父は、生前いつか関東にも大きい地震がくるからと、地震の際に気をつけるべき事について俺や弟にうるさく言っていたのだけれど、そういえば「高い所に逃げろ」ってよく言ってたな…と、あの日が訪れるたびに思い出したりする。 父自身は、横浜で生まれて戦中に祖父の故郷である千葉県木更津の金田村(今、アウトレットとかすごいあたり)に疎開しただけで、東北に所縁はないし、大きい地震に遭う事もなかったのだけれど、関東大震災の津波で木更津界隈も被害があり(清水一

          読書録118 三浦英之著「涙にも国籍はあるのでしょうか」

          読書録117 TAJIRI著「真・プロレスラーは観客に何を見せているのか」

          令和のプロレスファンに、「ガチヤオ論争」とか「ミスター高橋本」とか「ケーフェイ」とか言ってみても、きっと通じないだろう。 「怪しく」て「卑猥」で「曖昧模糊」とした、「巨大なグレーゾーン」であった「プロレス」も、長い低迷期を経て、白黒はっきりした「スポーツエンターテイメント」として再認識されたんじゃないかと思う。 だけれど、「日本プロレス界の父」力道山先生の出自である「相撲界」同様に、閉鎖的な「奥の院」が見え隠れする雰囲気は残っているようにも思う。  業界を広げるために必

          読書録117 TAJIRI著「真・プロレスラーは観客に何を見せているのか」

          読書録116 藤井青銅著 「トークの教室」

          もはや「伝説」となった、「オードリーのオールナイトニッポンin東京ドーム」の余韻に、どっぷりと浸りながら「青銅さんの新刊」を読むという至福を味わっている。 若様曰く「青銅イズム」を体現したのがオールナイトニッポンのトークになるのだから、面白くない訳がないのだ。 とはいえ、無駄に背伸びをして、中身の薄い流暢なだけのトークテクニックを指南するのではなく、本人の中にあるエピソードを、いかに整理したり視点を変えたりして伝わりやすく表現するかを、実例や実際に紙上レッスンを行う形でわ

          読書録116 藤井青銅著 「トークの教室」

          読書録115 石井暁著 「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体」

          今更ながらなのだけれど、年末年始で「VIVANT」を観た。 さすがに2023年のエンタメ界を席巻した作品だけあって、やっぱりとても面白く、そうなると「別班」について知りたくなるという次第。 で、手に取ってみたのが本書なのだけれど、これがイデオロギー強めで読みづらい… 「シビリアンコントロールとは無縁である別班」は問題があるという主張と「特定秘密保護法」への反対という二本柱のテーマへ拘るばかりで、具体的な「別班の正体」は、あまりはっきりしない。 昔の時代劇で、「(隠密同

          読書録115 石井暁著 「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体」

          読書録114 宮内義彦著「諦めないオーナー」

          現時点でパリーグ三連覇を果たし、現場と球団を合わせて最も充実している「オリックスバファローズ」のオーナーを、球団立ち上げから34年間務められた宮内義彦氏の著作なのだけれど、とにかく面白かった。 「オーナーだから出来る事」「オーナーには分からない事」を、きっちりと分別し、職分を果たしながらも「業界全体の発展」に全力を尽くす。 決して成功物語ではなく、むしろ失敗を教訓としたエピソードが多いのも興味深く、なにしろ宮内オーナー野球が大好きなのがとても伝わってくるのが良いよね。

          読書録114 宮内義彦著「諦めないオーナー」

          読書録113 伊集院静著「ノボさん」

          国語の教科書に載っている、キャッチーな横向き写真の人、柿を食べたら法隆寺の鐘が鳴ってしまう人、「俳人正岡子規」が、魅力的な「ノボさん」になったのは、司馬遼太郎さんの「坂の上の雲」を読んでからだ。 俳諧や短歌における業績もさる事ながら、短い人生をエネルギッシュに駆け抜けた「ノボさん」の人間的な魅力が好きなんだよね。 「坂の上の雲」では、秋山真之との友情がメインに描かれているが、本作では夏目漱石との友情がメインテーマになっている。 伊集院静さんは余計な描写を省き、子規居士い

          読書録113 伊集院静著「ノボさん」

          読書録112 大谷敬二郎著「憲兵」

          活字中毒は親譲りらしく、いつも何かしら読んでいないと気がすまないのである。 亡くなった父の所には、毎月近所にある富士書房さんという個人営業の本屋さんが、文藝春秋と母が読む主婦の友かなんかを届けてくれていて、欲しい本を注文すれば問屋さんから取り寄せてくれたりした。 俺が読書に目覚めたのは中学生の頃で、限られた小遣いでより多くの本を読もうと古本屋に入り浸るようになっていったのだが、その頃父に「憲兵」という本が無いか探して欲しいと頼まれたのである。 俺の古本屋巡りの日々に、敬

          読書録112 大谷敬二郎著「憲兵」

          読書録111 井波律子著「読み切り三国志」「トリックスター群像」

          中国文学者で、数多くの翻訳等もされた著者による「中国四大奇書」である「三国志演義」「西遊記」「水滸伝」「金瓶梅」に加えて「紅楼夢」の5作品について成り立ちやストーリーを解説したガイド本的読み物、二冊続けて読んだ。 特に後者は、「トリックスター」という作品世界を掻き回す存在に注目して書かれていて、着眼点が面白いため楽しく読めた。 とくに「金瓶梅」は、「水滸伝」のスピンオフでもあり、if物でもあり、2次創作でもあるっていうのが興味深く、更に「紅楼夢」は、「金瓶梅」を換骨奪胎し

          読書録111 井波律子著「読み切り三国志」「トリックスター群像」

          読書録110 福留孝介著「もっと、もっとうまくなりたい」

          星野監督第2期における目玉ルーキーにして、山田監督、落合監督期のチームの象徴的存在だった「福留孝介」が、メジャーリーグ、阪神タイガースを経て、ドラゴンズに帰還し、長い現役生活の最後を過ごしてくれたのは、とてもうれしい出来事であった。 現役を退き、解説者となった福留孝介氏が、毎回楽しみに通っている「落合博満講演会」にゲストとして登場し、会場でサイン本として売られていたので即買いしたのがこの本だ。 少年期から現在までを振り返った自伝的作品なのだけれど、現役時代のプレーを彷彿と

          読書録110 福留孝介著「もっと、もっとうまくなりたい」

          読書録109 高鳥都編著「必殺仕置人大全」

          まさに「大全」としか言いようがない。 出版社は違うが、高鳥氏が手がけた「必殺シリーズ本」2冊で積み上げた知識やエピソードがふんだんに活かされているので、内容がとにかく深くて良い。 基本的に、「仕置人」「新仕置人」の1話づつを、あらすじと内容についてのレビュー、キャラクター紹介、台本との違いという構成で紹介しているのだけれど、裏話やらエピソードが豊富で読み応えがある。 「仕置人26話」「新仕置人41話」を、紹介しているだけに文字通りの大ボリュームではあるし、内容もとても濃

          読書録109 高鳥都編著「必殺仕置人大全」

          読書録108 羽佐間道夫著「90歳現役声優 元気をつくる「声」の話」

          ロッキーとエイドリアンといえば、シルベスタスタローンとタリアシャイアなのだけれど、俺の中では羽佐間道夫と松金よね子が先に来る(笑) 今年で50歳になったのだけれど、心の底の方にあるコアな自我みたいなものが形成されたのは、おそらく中学生時代だと思う。 その頃に出会った「ロッキー」「特攻野郎Aチーム」「俺がハマーだ」の羽佐間道夫さん吹替3作品に食らった衝撃と影響は、今でも揺るぐ事がないし、それゆえに90歳を迎えた羽佐間さんが、「あの頃」と全く変わらないというか、年々更に進化し

          読書録108 羽佐間道夫著「90歳現役声優 元気をつくる「声」の話」