見出し画像

読書録112 大谷敬二郎著「憲兵」

活字中毒は親譲りらしく、いつも何かしら読んでいないと気がすまないのである。

亡くなった父の所には、毎月近所にある富士書房さんという個人営業の本屋さんが、文藝春秋と母が読む主婦の友かなんかを届けてくれていて、欲しい本を注文すれば問屋さんから取り寄せてくれたりした。

俺が読書に目覚めたのは中学生の頃で、限られた小遣いでより多くの本を読もうと古本屋に入り浸るようになっていったのだが、その頃父に「憲兵」という本が無いか探して欲しいと頼まれたのである。

俺の古本屋巡りの日々に、敬愛して止まない父から依頼された重要なミッションが課せられて、勇躍してあちこちの店を巡り巡って30有余年、父は亡くなり俺も50歳を迎えた今年、ようやく復刊されたという本作に出会った次第。

実際、父が欲しがっていた作品なのか?はわからない(作者も出版社もわからずタイトルだけしか情報が無いのだ)のだけれど、何か運命的な出会いのような気がして購入したのだが、まず間違いないのではないかな。

筆者は、憲兵大佐かつ地区司令官まで務めた方だが、文章は堅苦しくなくて読みやすい。

「2・26事件」や「シンガポールの軍政」「終戦前後の帝都東京の混乱」など、あまり今まで知らなかった裏面からの話が満載で、とても面白かった。

読了したので、改めて父の仏前に供える訳だが、父が本当に探していた本なのか、夢枕にでも立って教えてくれたらいいのになぁ。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?