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読書録115 石井暁著 「自衛隊の闇組織 秘密情報部隊「別班」の正体」

今更ながらなのだけれど、年末年始で「VIVANT」を観た。

さすがに2023年のエンタメ界を席巻した作品だけあって、やっぱりとても面白く、そうなると「別班」について知りたくなるという次第。

で、手に取ってみたのが本書なのだけれど、これがイデオロギー強めで読みづらい…

「シビリアンコントロールとは無縁である別班」は問題があるという主張と「特定秘密保護法」への反対という二本柱のテーマへ拘るばかりで、具体的な「別班の正体」は、あまりはっきりしない。

昔の時代劇で、「(隠密同心は)死して屍拾うもの無し」という台詞があったけれど、高度な諜報活動を行う場合には、非合法な手段を取る場合もあるため、組織との関係性を無いことにするのは常道ともいえる訳で、表向きの関係性を否定されたからといって、「シビリアンコントロール」の埒外の組織と考えるのは、粗忽に過ぎるように思うのだよね。

それに、自衛隊の諜報機関を潰して、「特定秘密保護法」が無くなって得をするのは誰だろう?と考えると、他国の諜報機関って答えが出てくる訳で、作者自身が「お前は世界中を巻き込む大きな渦に入り込んだ(阿部ちゃん口調で)」状態じゃんと思ったら、逆に面白くなってきたのだよね。

著者が取材していた自衛隊(別班)関係者の気分で読むと、著者ってリアクション良いのよ。
おそらくは、表に出しても差し支え無い情報をちらつかせただけで、会食中に血相変えて何回も中座しては便所でメモ取ったり(笑)

ちょっと脅かしたり、持ち上げたりする度に一喜一憂する著者をアレコレ振り回して、かつ他国諜報機関に牽制球を投げるという高度な諜報戦の有様を、知らず知らずのうちにモニターとして取り込まれたポンコツ記者が、自覚のないまま書いちゃったノンフィクションと視点を変えたら、とても面白い作品でした(笑)

ちなみに、VIVANTスタッフもおそらく本作を参考にしたと思われるのは、乃木が別班の試験を受けるシーンなんかに表れているのだけれど、同じ題材を使ってもVIVANTスタッフの方が格段に面白く描けているし、むしろ「別班」の実態に近いんじゃないか?と思ったね。

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