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未来洞察×人類学へのチャレンジ②

こんにちは、あわたです。

前回人類学的なアプローチ企業のマーケティングやイノベーションにおいてどのように役立ちうるかについて、私の経験をもとに紹介しました。

(前回の記事をご覧になっていない方は、下記リンクから!)

今回は、その人類学と未来洞察とがどのように関われるかについて、
人間や社会、そしてイノベーションを捉える私自身のまなざしがどのように推移していったかを通じて紹介していきます。


4.未来洞察は需要側視点でイノベーションを発想するもの?

未来洞察の現在地」でも触れているのですが、フォーサイトという組織機能に出会ったのは未来洞察×人類学へのチャレンジ①で紹介したスウェーデンの研究所で、
需要側イノベーションという考え方を知ったと同時に
フォーサイト(未来洞察)という考え方にも出会いました。


そのためか、フォーサイト(未来洞察)という考え方や態度は、それまでの「技術・供給側視点でのフォーキャスト(未来予測)」とは対照的で、
需要側の視点で未来を想像する」のならばマーケッターである自分にもできるのではないかと考えました。

その後、元SRI(スタンフォードリサーチインスティテュート)の皆さんにフォーサイトの基本的な考え方として教わったのが図1の概念で、「知らないことすら知らないことに気づく(アウトサイド・イン)と同時にひらめく(発想)」という頭の働きを活用し、未来を想像しながら洞察するものと理解しました。


図1 既知の領域や「知らないということを知っているという領域」の外側には、「知らないことすら知らない、気づいていない領域」が広がっている


でも、さまざまな人たちと共に未来洞察の実践を重ねるうちに、「需要側(≒人間)を色眼鏡で見ずに理解する」という人類学的な見方を下敷きにしていないと、うまく未来を想像できないのではないか?と感じる場面も出てきました。
私にとっては共通点があると思っている人類学と未来洞察は、何が似ていてどこが違うのでしょう?


5.人類学的な態度と方法は、未来洞察の態度と方法に通じる

まず、人類学的なものの見方や態度・方法の特徴を、(量的検証による)仮説検証型のマーケティングリサーチとの違いとして捉えると、
①対象となる人間に接する調査態度、
②調査結果の分析方法、

の2点にあると感じています。

①においては、対象を色眼鏡で見ない自前の仮説を押し付けない、むしろ対象となる人間の側から世界を見てみるという特徴があり、これは先に記したように未来洞察が需要側の視点で未来を想像するのと似ていますよね。
②の代表的分析方法が KJ法であるという特徴は、スキャニングで断片的に集めた変化の兆しを発展的にまとめて想定外な社会変化仮説を作成することにすでに生かしています。

つまり、クライアントや専門家と言われる人々が最後までわかりきれない「必ずしも合理的には説明しきれない人間」に寄り添う人類学者と、
同じくわかりきれない「不確実かつ曖昧な未来」に寄り添うフォーサイターとは、
似た態度や方法を身に着けているのかもしれない、と。

別の言い方をすれば、多様な解釈が成り立つものを簡単に割り切ろうとする(捨象してしまう)マーケティングリサーチや未来予測に抗うような、諦めの悪い人たちなのかもしれません。笑


6.未来洞察×人類学のビジネスにおける意義

また、未来洞察も人類学も、通常のビジネスでは敬遠される不確実性・曖昧性・非合理性を取り扱います。
すなわち、特定分野の問題解決というよりもむしろ、

対象を包括的に捉えながら見過ごしがちな機会や脅威を発見して意味づけたり(センスメイキング)、
従前の慣れ親しんだ課題定義や戦略そのものを問い直したり(リフレーミング)することに価値を発揮させられる技術と言えます。

それゆえ、VUCA時代を生きざるを得なくなった組織にとって厄介な課題である、非連続な変革(イノベーションやトランスフォーメーション)を推進する上では欠かせない考え方・方法になってきたのだと思います。


7.未来洞察×人類学の実践的可能性

ただ、未来洞察のプロセスではいまだこの世にないものを議論するためか、
具体的アイデアを発想しにくいとか、
そのアイデアをうまく周囲に説明できないとか、
アイデアの実現を自分事化できない
と嘆く人が出てくることがあります。

こうした人々の思考を補完するものとして、人類学的なアプローチの活用を期待することができると考えています。

たとえば、
取り組むテーマと自分との接点を丁寧に掘り起こして(個人史を記述する等)手触り感のあるテーマに引き寄せたり、
未来シナリオの作成時に将来の人間になりきってその価値観や行動、他者との関係性をありありと描いたり(未来ペルソナ)、
アイデア実現プランを練る際に活用できる自組織の強み・らしさを再発見したりなどなど、

抽象的で言語化しにくい未来アイデアの解像度を上げていく工夫ができるのではないでしょうか?


そこで、人類学者が創設したメッシュワークという会社の皆さんと「未来洞察×人類学」の実験に取り組み始めました。

少し実践してみたら、この場でレポートしてみたいと思います。それでは、また。



この記事を書いた人 あわた

博多出身のモラトリアム世代。職業は旅人と言ってみたいが、英語と酒が苦手なのが玉に傷。
関心…自転車散歩/珈琲野点/里山/アウトフィッター/EDC/写真/路上観察/水平思考

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