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実践!フューチャーズ・リテラシー(futures literacy) ~「みらいのかけらを釣り上げて、へんてこなみらいを考えよう」の巻~

こんにちは、八幡です。最近、秋がなくなったとよく言われますが、今年は特に「秋不足」を実感する気候でしたね。
食欲の秋、運動の秋、芸術の秋などといったフレーズも、心なしか、あまり耳にしなくなった気がします。皆さんは、短い秋をどのように楽しまれましたか?

さて、いきなりの話題転換で恐縮ですが、未来デザイン・ラボでは、「思ってもみなかった未来に目を向けることで、少し自由になれる」との考えのもと、次世代を担う子どもたちに、いろいろな機会で"フューチャーズ・リテラシー(※1)"と銘打ったプログラムを提供しています。

直近では、2023年11月18~19日にかけて、サイエンスアゴラにて「Futures Literacy 2 ~大人が想像する未来のおてつだい~」と題したプログラムを実施しました。このコラムでは、サイエンスアゴラのプログラムにおいて、私たちなりに工夫したポイント(推しポイント)を紹介させていただきます。「これはいいね!」だったり、「こんなやり方もあるよ!」といったコメントなど、お寄せいただければ幸いです。


推しポイント①
楽しく未来を考えてほしい… ⇒  「みらい釣り堀」を作っちゃおう!


「環境に良いことをしないと、将来の温暖化で大変だよ!」とか、「大人になった頃にはAIに仕事を奪われるよ!」とか、「勉強しないと将来苦労するよ!」とか…。
未来を考えるって、本当は楽しいことのはずなのに、子どもたちの周りにいる「大人が語る未来」は、どうしてもネガティブになりがちではないでしょうか?
そんな、未来の暗いイメージから離れて、ポジティブ未来を考えてほしい、、、そう思い、まずは「シンプルに楽しい行動から始めてもらおう」ということで、みらい釣り堀を作りました。具体的には、もしかしたら起こるかもしれない、ちょっと変わった未来を表現した「へんてこなみらいのかけらカード」を20種類ほど作成し、鉄製のクリップをつけて、磁石の釣り竿で釣り上げてもらうという仕掛けです。


へんてこなみらいのかけらカード


みらい釣り堀の風景


子どもたちは、まず、「私も釣ってみたい!」というシンプルな気持ちでやってきます。そしてカードを釣り上げる。そこに書かれている「へんてこなみらいのかけら」を読み上げる。そのたび「うそ~」とか「やだ~」とか、何かしらの反応が返ってきました。時には、お父さんお母さんが先に反応することも。
そんな感じで、釣りという遊びから、へんてこなみらいに触れる機会を増やす取り組みでしたが、結果は大成功。当日は、150人ぐらいの子どもたちが釣りを楽しみながら、未来を考えてくれたのかなと思います。

楽しい行為の中に、みらいをそっとしのばせる。
そのぐらいのバランス感で良いのだなと実感した次第です。


推しポイント②
自由に未来を考えてほしい… ⇒  「へんてこなみらい」と言っちゃおう!


皆さんは「自由に考えていいよ」と言われると、うれしいですか?私は、反射的に、ちょっと困ったなぁ、、、と思ってしまいます。思い起こせば、日本の教育を受けてきた私にとって、「何かを考える(アウトプットする)」という行為は、基本的に、「何かしら正解があり、それと照らし合わせて評価される」ことと常にセットでした。何が正解なのか、問題の出し手である教師・学校側の考えを推測し、それにあわせて「大人が喜びそうな答え」を出す、といった、ある種の忖度に満ちた行為になってしまっていたのです。
これは、今の子どもたちも同様で、シンプルに「自由に考えてね」と言っても、無意識に、大人が喜びそうな答えに引き寄せられる、そういう回路ができてしまっています。そのような認識のもと、自由に未来を考えてもらうためにはどうすれば良いか…。そこで思いついたのが、「へんてこなみらい」を考えてもらう、というガイドです。

学校の先生は、へんてこなことを、言いません。
親も、へんてこなことを、言いません。
それは、先生や学校が、「正解」を背負う存在だからです。
であれば、大人の考えを慮(おもんぱか)り、先回りしてしまう、、、といったことが起こらないように、「へんてこなみらいを考えよう!」と宣言することで、自由に考えてもらおうと思ったのです。

考えてもらった「へんてこなみらい」は、あらかじめ用意しておいたシールや雑誌の切り抜きで表現してもらいました。参加してくれた子どもたちの中には、未就学児も多く、それこそ、大人から見た未来とは異なる、シンプルに楽しくなるような、子どもたち自身が望むような未来もたくさんありました。
普段、企業の新規事業のアイデア創出などに私たちもこの手法を用いている関係上、どうしても「アウトプットの質」で評価しがちですが、「いかに自由に未来を考えてもらえたのか?」という視点で見れば、100点満点だったのかなと思っています。

「へんてこなみらい」にこそ、自由が宿る。


みんなに考えてもらった「へんてこなみらい」


みんなに考えてもらった「へんてこなみらい」

楽しく未来を考えてほしい。
自由に未来を考えてほしい。

そのような思いで検討した今回のプログラムですが、よく考えると、これは、子どもに限ったことではなく、大人でも一緒だなと思いました。特に、企業において、新規事業を考える手段として未来を考える際には、ついつい「良いアイデアが出るだろうか…」ということが気になりすぎて、まじめに、事業につながりそうな未来を考えてしまいがちです。でも、それだと、「未来の広がり」が制限されてしまい、結果として、新たなアイデアが見いだせずに終わってしまう、、、という結果になりかねません。

次世代を担う子どもたちに、楽しく、自由に未来を考えてもらうための工夫は、
大人たちに、楽しく、自由に未来を考えてもらうための方法論にもなりうる。

そんな気づきを得ながら、次の企業向けワークショップでは、「釣り堀」を作ってみようかな、と妄想する八幡でした…。


参考

(※1)フューチャーズ・リテラシー(futures literacy)とは、人々が未来についての異なる視点や仮説を探究し、新たな可能性や選択肢を考える能力(ケイパビリティ)を指し、2012年より、国際教育科学文化機関(UNESCO)による探求と開発がスタートしています。詳しくは、「フューチャーズ・リテラシー ~自由になるための道具としての未来~」をご覧ください。
(※2)「へんてこなみらいのかけら」は、「非連続な変化の兆し」を示唆する出来事を集めた「スキャニングマテリアル」をもとに作成しました。日本総研未来デザイン・ラボでは、5千件以上のスキャニングマテリアルを収集・蓄積しております。



この記事を書いた人
八幡

文化祭のような仕事をしたいと思い、働き出して、はや20年。まだ祭りは続いています。いつかは和歌山に帰りたいが、そのうちイタリアに住みたい、惑いまくりの不惑です(2023年時点)。
関心...組織と個人/移住と妻の意向/二足の草鞋と学び/テニスと膝/我が子の行く末



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