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未来洞察と私02.実践編・発想を飛躍させるため、想定外の変化の兆しを掴む手法~「スキャニングの楽しさ」について

未来洞察に携わるわたしは日頃からスキャニングを楽しんでいます。趣味がスキャニングと言えるかもしれません。


1.スキャニングとは

スキャニングは、想定外の「未来の芽」「変化の兆し」をつかむ手法です。
具体的には、既存の視野の範囲外にある情報媒体に目を向け、「不確実性」の高い未来を示唆する記事を拾い上げ、分析を加える作業です(noteでは、その過程を「ミライの小石」としてお見せしています)。本業や経験則から離れた着想を得たい、と考える人々にとって、有効な手法でもあります。
わたしが目を向けている情報媒体は業界紙や、地方紙、海外紙であることが多いです。
東京圏に居住し、コンサルティング業界しか経験のないわたしにとって、これらの紙面を読むことは、ちょっとした冒険です。
ファッションや漁業、沖縄やアフリカといった個人的には縁の遠い世界にお邪魔して、聞き耳を立て、情報をかき集めています。


世の中には、いろいろなニュースが転がっている


2.その記事は、「変化の兆し」と呼べるのか?

しかし、そのような媒体に掲載されている記事が果たして「変化の兆し」と呼ぶに値するかどうか、判断するのは難しいことです。
まず、記事の内容が事実であるか、に気を付ける必要があります。フェイクニュースが跋扈する昨今、ファクトチェックは欠かせません。
そのうえで、スキャニングにとって重要なのは不確実性の高さです。不確実性は「起こるか起こらないか言い切れない」ことを指します。原則として、不確実性の高い記事を「変化の兆し」とみなして採用し、低いものは排除しています。

言い換えれば、A.すでに起こっている事象や、B.すぐに起こるであろう事象、C.確実に起こらないであろう事象は「変化の兆し」とはとらえていません。わたしは記事を目にしたとき、下記のように思いめぐらせます。


A. すでに起こっている事象かどうか?

当該記事に描かれている事象がすでに世間一般で浸透しているかどうかは、知識があれば判断できることです。その道ひと筋のプロには及ばないかもしれませんが、業界特有の用語や近況をざっくり認識したうえで、特定の業界にとどまらない広い視野を持つことが求められます。


B. すぐに起こるであろう事象かどうか?

未来を示唆してはいるものの、数カ月や1年後といった近い未来に実現する、蓋然性の高いニュースが存在します。2023年であれば、ChatGPTや画像生成AI関連の、「AIはこんなことができる」という趣旨のニュースがちまたを騒がせました。これらは新規性に富んでいても、拾いにくい。変化の兆しではなく、半ば確定した事実とも呼べるからです。
ただし、「すぐ起こるかもしれないと考えていた出来事が、現実には起こらなかった」事例も往々にしてあるのが悩ましいところです。


C. 確実に起こらないであろう事象かどうか?

まず起こりえない、広まらないものごとは、未来を示唆しているとは言いがたい。他方、ニュースに記載されている事象について「起こらない(あるいは、広まらない)ことがはっきりしている」と簡単に言い切ることもできません。
「起こるはずがない」と切り捨てることは簡単ですが、わたしたちは少し前では考えられなかった現実に遭遇し続けています。

記事に描かれた事実や背景となった価値観が実現する可能性を、飛躍しすぎない範疇で模索する。そのこと自体は、スキャニングの妙かもしれません。ただし、「飛躍しすぎていないかどうか」も、経験則や手持ちの知識に頼らざるを得ず、危うさを孕んでいます。


その記事は未来につながるかもしれないし、つながらないかもしれない


3.あらためて、スキャニングの楽しさについて


さて、ワークショップの現場では、参加者の方々から「変化の兆し」への新鮮な解釈が不意に加えられることがあります。そんなとき、思考の制限から解放されたような気分になり、とてもうれしくなります。未来を考える営為は、みんなで行うともっと楽しい

スキャニングの楽しさは、未知の情報であふれた海に飛び込むことにも、情報を解釈し未来を思い描くことにもあります。そのうえで、記事や自分の解釈をもとにまだ出会わぬ誰かが面白いことを考えてくれるかもしれないという期待を抱けることも、スキャニングが楽しい理由のひとつかもしれません。



この記事を書いた人
藤本一輝
繁華街の路地裏や川沿いを散歩しながらああでもないと考えを巡らせるのが好き。属性を問わずいろいろな人と交流するのも好きです。
関心…考現学/エスニック料理/国内サッカー/モードファッション/路線バス/文化論

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