誰かのために手作りしたモノが凶器にならないために : DIYにおける安全管理

先月、父親が作った手作りだんじり(祭りなどに使う乗り物)が横転して子供が亡くなった事故が起きてしまった。まだ原因を調査中なので、どういう状況だったか分からない。記事によると台車に木枠を取り付けて、走っていた所、横転して事故が起きたらしい。固定方法や乗り方などの問題もあるだろう。

ただ、ものづくりやDIYに関わるものとしては、誰かのために作ったものが、その人を傷つけてしまう道具になるのは、とても悲しい。最初は誰かが喜ぶだろうと思って作ったものが、最終的にその人を傷つけてしまう道具になってしまった。責任などの問題うんぬんより、この矛盾する状況に対して非常にやるせない気持ちになる。

似たような事故は過去にも起きている。私も参加した2016年の東京デザインウィークでは、建築科の学生が制作した展示物から出火して焼死事故が起きている。このときは木製のジャングルジムが白熱灯の熱により発火して事故につながっている。当時、ネット上では作者の安全管理が問われていた。一方で、作者のモチベーションとしては、子供を喜ばせるための作品を作りたかったのだと思う。作者の安全に対する責任が問われるのは、ごもっともであるが、安全のために作るきっかけが失われるのもどうなのかなと思う。一方で、DIY的に何かを作る製作者全員に安全講習をするのも、なかなか非現実的な話でもある。 

どうしたらこのような事故を防げたのだろう。個人ではなく、国や企業はどのように考えているのだろう。

遊具の安全基準

アメリカの1990-2010までの子どもの傷害に関係した製品、第2位10.3%が遊具であった。子供は公園の遊具で想定しない遊び方をしてしまいがちなので、事故につながりやすい。2002年に国土交通省から発表された「都市公園における遊具の安全確保に関する指針」では、ひっかかりや衝突、落下対策などに対して、具体的にどのような形が不適切かというガイドラインが用意されている。

また科学館Exploratoriumの展示物設営マニュアルには、展示物のチェックリストが用意されている。高電圧や熱源の対策、ガラス等の危険物に対するチェックをするように促している。(TDWでは屋外展示のため消防法が適応されなかったらしく、こうした運営のチェックが必要である)

こうした子供向けの遊具や展示物などは、あらかじめ危険な状況というのを想定して、ガイドラインやチェックリストを用意していて、新たに作る人はそれを参照することが出来る。

製造物責任法

それでは、企業における製品の安全管理はどうなっているのだろうか。製造物責任法 通称PL法は、企業が製造した製品が消費者を傷つけたりした場合賠償責任が問われるという法律である。最近は3Dプリンタで作ったり、パーソナルファブリケーションによる製品に対しての責任なども問題視されているので、よく取り上げられる法律である。今回は責任の問題というよりは、具体的な事例を見てみたかった。例えば、国民生活センター相談部調べの訴訟一覧では、人工呼吸器のコネクタの欠損やレンジのつまみによるやけどなど具体的な製品による事故が記録されている。

さらに経済産業省の製品安全に関する事業者ハンドブックでは、具体的に設計段階で、リスクを回避するための情報の取得方法などが記されている。

また関連して失敗学会のデータベースには機械や食品など様々なジャンルごとに、事故などをまとめられている。

"公"の安全管理を"私"のものづくりにも

こうした公共事業による遊具の安全管理や、企業による製品の安全基準も、責任が伴う以上、きちんと設計の段階から管理がされている。またたとえ不慮の事故が起きたとしても、データベース化されて失敗を減らす工夫が見られる。このような、"公"の安全管理を、日曜大工的な"私"のものづくりに取り入れるにはどうしたらいいのだろうか。

私が考える一つの解決策としては、設計ソフトの中に安全管理する機能を取り入れるということである。例えば、Fusion360という設計ソフトには、強度計算や耐熱計算などのシミュレーションを行う機能が入っている。例えばユーザが、設計した試作に対して、危険な場合、警告してくれるなどが必要ではないか。さらには、そもそも設計などせずに、つぎはぎのブリコラージュ的にものづくりを行う人も存在する。そのような人には、例えば制作の様子を録画して、画像解析で危険なプロセスが無いかを随時チェックするようなシステムが必要なのではないか。

こうした安全管理の機能は、事故を未然に防ぐのみならず、製作者の意識向上、学習効果も期待できる。次回以降の製作時に、危険を察知するようなスキルが身につくかもしれない。

誰かのためを思って手作りしたものが、凶器になるという状況に、非常に悲しくなった。このようなことが減るように、もう少し色々な分野の人と議論を重ねながら、解決のための方法を模索していきたい。

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Junichi Yamaoka

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