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(本)養老院より大学院

珍しくエッセイをご紹介。
内館牧子さんの大学院(東北大学)生活綴った作品。

自分の過去の読書の嗜好を鑑みても、人生をちょっと達観してるというか、主観的すぎず、少し引いた視点で物事を見ている人の作品が好きなんです・・。
内舘さんの自虐とユーモアに溢れた文章にクスリとさせられること多々。自分が最近まで社会人ドクターをしていたこともあり、何度も頷きながら読んでしまいました。

最近はメディアへの露出も減ってきている感じがしますが、自分が内舘さんに勝手に感謝の念を持っています。その1つの要因は、自分の母校の名前を宣伝してくれたから。2005年から、大学院生かつ東北大学の相撲部監督という二足の草鞋を吐きつつ、さらに読売新聞で相撲部の活動をこれまたユーモラスに紹介してくれていて、毎週、楽しみにしていました。

「すぐに大学院を受験し、大相撲を研究しよう」。後先を考えない無謀な試みか、それとも人生80年の今しかない絶妙のタイミングなのか!? “人生、出たとこ勝負”を座右の銘とする著者が挑んだ学生生活。想像以上の厳しい講義、若者だらけのキャンパス、その3年間はまさに「知的冒険活劇ロマン」であった!

Amazonの紹介文より抜粋。
人生、出たとこ勝負という立派な(?)座右の銘もじわじわきます・・w

自分は理系の大学院で修士・博士の学位を取得しました。
本書を読んで、まず感じたのは文系・理系の大学院の雰囲気の違い。
これは大学や研究室に依存するところが大きいように思いますが、理系の大学院を出た自分からすると、「文系の大学院、厳しい!」という感覚です。

理系、特に自分の通っていた工学系の大学院は、修士課程に進む人が8割方で大半である一方、一般には文系の大学院に進む人はもっと少ない。自ずと、少数精鋭になっていくような気がします。
内舘さんの入試の様子(口頭での質問)やゼミでの議論の内容を踏まえても、「そんなにズケズケというんか・・・」という感じを受けました。
これは、ある意味工学系の研究は質の差はあれど「手を動かせば何かしらの成果が出せる」というものと、文章なりがベースにあり、それらの積み重ねである解釈なり発見を導く必要があるという研究の質に由来するところお大きいような気がします。

本書では、内舘さんが
・学生生活を円滑に送るために喜び組を結成した話
・学内で遭難しかけた話
・ゼミでけちょんけちょんにされた時の心理
などが紹介されており、クスッとせずにはいられません笑

こういった体験を綴った本は、自分の人生の時間が限られている中で、もし違う人生を歩んでいたら、というのを想像させてくれ、模擬体験という意味でも価値がある。

最近、学び直しというフレーズをよく耳にするようになりました。
一義的には、社会人の就労期間が延び、かつ社会の変化のスピードが上がってきたことに対し、これまでの「若い頃に身につけた知識とスキルで定年まで逃げ切る」ようなスタイルの生き方が通用しなくなってきてることが要因の一つかと思います。
一方で、個人的には内舘さんのように仕事で活用するのだ!という実務的な目的ではなく単に興味があるから・面白そうだからという理由で大学院の門を叩く。それも素敵な生き方だと思います。娯楽に上も下もありませんが、同じ楽しむであれば、少しでも世の役に立ち、かつ自分も楽しく長期にわたってのめり込める深さ。
短期的な快楽、娯楽も必要ですが、大学院に戻って研究をライフワークにするというのも一つの手かもしれませんね。

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