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内向的なひとり旅 /47都道府県女ひとりで行ってみよう

益田ミリさんの本が好きで、なおかつ旅エッセイも好きなので、この本の存在を最初に知った時、私にドンピシャだ!と思った。

でも、実を言うとしばらく購入を躊躇してしまった。

Amazonでのレビューが、なかなかに荒れていたからだった。

でもまたしばらくして、いや、それはそれで読んでみたいなという風に考え方がシフトし、発注するにいたった。

本の内容はタイトル通り、益田ミリさんが少しずつ全国を旅してまわり、旅での出来事が記されたもの。47都道府県の話が一冊に詰まっているので、地域毎で見れば内容は数ページとコンパクト。それゆえに内容が薄いと感じる人もいるようだけれど、これまで海外にばかり目を向けてきた私には、国内のそれぞれの地域のことを少しずつ知れて、「へー、ここにはこんな場所があるんだぁ」「ここは1度は行ってみたいなぁ」とゆるい気分で楽しめた。興味を持つ小さなきっかけを見つけられれば、私はそれで十分満足だ。

益田ミリさんの最近の本では、1人旅にすっかり慣れ、マイペースに楽しんでいる様子が感じられるけれど、この本は益田ミリさんが33歳から37歳の頃の旅の記録。そして、最初に登場する青森県が、記念すべき人生初の1人旅である。なので、なんだかとても初々しい。

そんな著者の変化を感じるのもなんだか楽しかった。

念入りに力を入れて下調べをする感じではなく、本にも書いてある通り、「ただ行ってみるだけ」の旅。

誰かと一緒に行く旅だったら、事前にけっこう調べたり細かい予定を組んだりして、相手にも満足してもらえるようにしないといけないようなプレッシャーを感じてしまうけれど、1人旅であれば、どれだけゆるくても許される。100%自分のワガママ、気まぐれで決めていい。それが1人旅の醍醐味だと思う。

そして経験値が増えることに、自分にとっての「ちょうどいい」が少しずつ見えてくる。

***

食べたいものを食べよう。それでは旅の面白みが半減するよ、と言う人もいるかもしれないけれど、わたしはもう大人だし、自由にしようと思う。

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益田ミリさんのこの言葉に、私はとても共感した。

旅行に行くと、その土地の名物を食べないといけないような気になってしまう。

旅行ガイドの本でも、地元の名物料理がゴリ押しされているし、誰かに、「ここに旅行で行ったことがあります」と言うと、「じゃあ、あれ食べました?」と高確率で聞かれる。そして、「いいえ」と答えると、きょとんとされる。

自分も相手も居心地の悪い空気が、一瞬流れる。

でも別に、どこにいようとその時自分が食べたい物を食べるほうが幸せなんじゃないかと思う。

「ここに行ったらこれを食べないと!」と言ってくる人もいるけれど、そんな考えを窮屈に感じ、逆に旅を楽しめなくなる人だって世の中にはいる。旅は、自由だからいいのだ。

益田ミリさんは、地元の人と積極的にふれあおうとはせず、夜ごはんはお惣菜をデパ地下で買って、ホテルの部屋で済ませたりする。

Amazonのレビューで低評価にしている人の中には、そういうところをマイナスに捉えている人も多そうだった。そういう人たちはもっと違うものを期待していたんだろう。

でも、どんな旅があってもいいし、自分にとって心地よい旅が正解なんじゃないかと思う。

私も1人旅が好きで、定期的に知らない場所に行きたくなる。「この道を行ったら何があるんだろう?」と、未知の場所をわくわくしながら探索する時間がとても好きだ。もう興奮状態で、ひたすら歩きに歩く。なんならたまに倒れる寸前になるくらい、歩く。

そしてあっという間に疲れ果て、益田ミリさんのように、どこかで買っておいた食べ物をホテルで食べるという形で、食事を済ませることも多い。

極限まで思う存分歩き回って刺激を貪り、誰に気がねすることもなく、だらっと1人の部屋で過ごし、食事をとる。最高に贅沢だ。本当に疲れている時には、お店に入って、店員さんとコミュニケーションをとることすら億劫に感じてしまう私には、このペースがちょうどいい。

1人旅に、誰かのつくった高いハードルはいらない。

そう思いながら、今後もハードルの低い1人旅を楽しんでいきたいと思う。

それから本の購入については、レビューを参考にしつつも、自分の好きな作家のことをもっと信じるようにしようと思った。









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