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光のない海

20240206

どんな人間のいのちも、それ一つでは立っていられないのかもしれない。私たち一個一個のいのちは、別の一個一個のいのちによって支えられて初めていのちとして存続していくことができるのかもしれない。

歴史上に名前を刻むことのできた者以外のすべての人間が、いずれは存在の有無さえ確認不可能な黒々とした闇の中へと飲み込まれてしまうのだ。

私が過ごしたかけがえのない時間も、私が死んでしまえば、チョークで描いた黒板の文字が消されるように何もなかったことになってしまう。残るは真っ黒な黒板一枚に過ぎない。
だとすれば、私たちは一体何のために人生という長ったらしい物語を書き続けなくてはならないのだろうか?
どうせいずれは消されてしまう文章を、私たちは一体どんな目的のために黒板に書きつけているのか?
しかも、私たちは、そうやって自分の物語を書き連ねることで、近くにいる別の人たちの物語にも余計な一行や決定的な一行を絶えず書き加えてしまっているのだ。
というより、私たちが紡ぐ、私たち自身の物語そのものが、その余計だったり決定的だったりする他人の一行によっていつも大きく捻じ曲げられてしまう。
捻じ曲げられた物語に辻褄を合わせようと、もがいてみても、結局は辻褄を合わせらぬまま、物語は、終わってしまう。
どうせ、完成もできず、辻褄も合わせることもできない物語なのであれば、自分の好き勝手、でたらめな思いつきに従って自由気ままに書いていった方がよほど楽しいのではなかろうか。







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