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Netflix『終わらない週末』の積み重なった皮肉がじわる

「終わらない締め切り前」ならイヤというほど経験したじゅんぷうです、こんにちは。

ジュリア・ロバーツとイーサン・ホークという何だか夢の90年代的豪華キャスティングと、ビーチにタンカーが近づいてくる不気味なプレビュー映像が気になってNetflixオリジナル映画『終わらない週末』を鑑賞しました。オバマ夫妻が製作に携わっていたりと話題の作品です。

☆ネタバレありあらすじと感想

ジュリア・ロバーツが主人公というより2家族のお話

広告会社に勤めているアマンダ(ジュリア・ロバーツ)は、現実社会にかなりお疲れ気味。人と距離を置きたくて突発的に海辺の別荘を借り、家族4人でバカンスに出かけます。大学教授の夫クレイ(イーサン・ホーク)、お年頃の息子アーチ―とドラマ『フレンズ』大好きな娘ローズ。(『フレンズ』のマシュー・ペリー、最近亡くなりましたね)

別荘は森に囲まれたゴージャスでスタイリッシュな邸宅で、庭に鹿も現れる非日常空間。4人はさっそくビーチに繰り出します。このあとがプレビューで流れていたシーン。平和なビーチでくつろぎながら、沖から船が近づいてくる様子が描写されて、ローズの「船がこっちに来る」で急展開。本編でも淡々と時間経過が表現されて不気味な予感。そして巨大なタンカーが静かにビーチ目がけてきて座礁してしまい、アマンダたち一家は間一髪で難を逃れます。

あれはいったい何だったのか?一家は動揺しながらも別荘にもどり、現実に蓋をして優雅なひと時を過ごしますが、もう何かが着々と始まっているのです。

その日の夜中にこの別荘の家主だというG.H(マハーシャラ・アリ)と娘のルースがフォーマルな装いで突然現れ、市街地が停電で混乱しているので泊めてほしいと申し出られて、アマンダは不信感バリバリ。人のいい(外面のいい)クレイは受け入れようとしますがアマンダはナーバスモード全開。

だけど契約書類を確認しようにもスマホもパソコンも使えず、契約も彼らの素性も、周囲の状況も調べることができない。テレビには緊急警報文が表示されるだけ。すべての情報が遮断された状況で、人はどう考えてどう行動するのかが描かれています。

淡々と静かに、それでいて不穏な見せ方は抜群。とくにオープニングからG.H父娘が訪問してくるあたりまでのアーティスティックで変態チックなカメラワーク、サティ「グノシエンヌ」を思わせる不協和音のピアノ。ざわざわさせる演出でした。

電子機器はすべて使用不能、タンカー同様航空機もコントロールを失い墜落、自動操縦のテスラ車もオモチャのように次々に追突して道路を塞ぎ、街へはもどれない。いったい何が起きているのか、誰が起こしているのか、何も明確には説明されないまま、着々と大国アメリカが、もしかしたら世界全体が終末に向かっていくのです。

もどかしい部分もあったけど、考えちゃうと作中の人々と同じく誤情報に振り回されることになります。情報の錯綜、疑心暗鬼、過剰な自衛…これってコロナ禍で既視感のある世界。

何が皮肉って。

緊急事態でも、いや、だからこそ大切な『フレンズ』の最終回が見たくてたまらないローズ。もちろん配信サービスは停止しています。

ラストで、近所の家の地下シェルターに迷い込んだ彼女が目にしたのは膨大なDVDコレクション。そして『フレンズ』の最終話チャプター「The Last One」…まさにこれがリアルな終末。

このオチで締める映像作品がNetflix配信というのも、同じようにサイバー攻撃されたらもう見られないわけですよね。ソフトって大事!わたしも世界が崩壊するそのときに大好きな映像を見ているかも。

音楽もサブスクは機能しません。アマンダがG.Hの書斎で目にしたのは棚にぎっしりのレコード。圧巻です。G.Hがジャズを薦めてくるのに対してアマンダが選んだ「踊れる」のがこれ。作品中、唯一といってもいい弾けるシーンであり、やはりアナログの大切さが伝わるシーンです。

90年代R&Bの超名曲!さわやかな歌声だけど中身はエロス。しかも、のちにイギリスのBlueがカバーしたのもヒットしたけど、当時BlueはN.Y.にMV撮影に行って9.11に遭遇しているんですよ。アマンダとルースが目撃した、森の対岸で都市部が軍事攻撃を受けて炎上しているシーンって、まさに彼らが目撃した惨状なんじゃないでしょうか?

かなり評価は分かれてそうだし、正直いまひとつどの人物にも感情移入しにくかったけど、見ておいていいと思う。

90年代の宝イーサン・ホークはベネディクト・カンバーバッチみたいになってるなと思って見てたら、ご近所のダニー役ケヴィン・ベーコンとそっくりで混乱しました。ケヴィン・ベーコンにはダンスで世界を救ってほしかったとかそんなこと書いてるこのnoteもいつか消えたらと思うと悲しい。

断捨離もいいけど、大好きな映画のDVDコレクションや思い出のつまった紙ジャケットのレコードやCDたちに囲まれているのは幸せな世界なんだって、いま一度考えたい。鹿からの警告でした。

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