デザイナーのためのキャリア支援サービス「ReDesigner」に込めた想いとデザインプロセス

はじめまして!グッドパッチというデザイン会社でキャリアデザイナーをしている佐宗(さそう)です。

今日、こんなサービスを出しました。
https://redesigner.jp

(ちなみにこのモデルたちは、全員グッドパッチのデザイナーです。笑)

ReDesignerは、デザイン会社によるデザイナーのためのキャリア支援サービスです。企業とデザイナーを僕たちデザイン会社であるグッドパッチが繋ぐことで、デザイナーのキャリアやマインドセット、企業のデザイン組織における状況を把握した上で、ミスマッチのないデザイナーのキャリアアップを支援していくサービスです。2018年1月から全力でチームで作ってきました。

僕は2015年1月にUXデザイナーとしてグッドパッチに入社しました。UXデザイナー、ビジネスデベロップメントの仕事を通じて、合計200を超える国内外のデザイン組織や、デザイン組織を作っていきたい様々な領域の企業とお会いして来ましたが、そこには「デザイナー」の役割や認識に対するギャップが多々あると感じていました。このギャップをなくし、デザイナーへの正しい理解を促進したい。そんな想いでこのサービスを立ち上げました。
このnoteでは、なぜ僕たちがこのサービスを始めたのか、そしてデザイナーのためのサービスを立ち上げる中で実践してきたデザインプロセスの一部を共有したいと思います。

目次
はじめに:デザイナーのためのキャリア支援サービスを始めた理由
1. 社内の過去の新規事業から学んだことを活かす
2. 新規事業のユーザーインタビューは全員で行う
3. 設問1つ1つを丁寧に作りこむ
4. デザインの対象を広げる:求人票のリデザイン
5. デザインコンセプトとブランドの設計
6. 未来について考えるワークショップ

はじめに:デザイナーキャリア支援サービスを始めた理由

日本の 「デザイナー」への認識を変えていく
このnoteを読んでいるデザイナーの皆さんも経験したことがあると思いますが、企業が想起するデザイナーの認識と、自分たちが考えている役割とが噛み合わないことが特に最近あると思います。例えば、世の中一般的に「デザイナー」と聞くとまだ「見た目を美しくできる人」だと認識している人も多いのが現状です。社会でデザイン思考がもてはやされる中で「うちもいいデザイナーを採用したいんです」という企業側が増えている一方で、蓋を開けたら下請け的に仕様書やルールに従ってデザインを起こすだけの仕事をするデザイナーだったり、ユーザーインタビューや観察の時間を勿体無いと言われる環境があります。

僕自身も、まさにそのような環境に身をおいていました。前職で世界トップのデザイン会社と組んでUXデザインを中心にしたプロダクト開発を推進していましたが、当時はなかなかデザインへの理解が浸透していなかったこともあり、デザインプロセス自体への共感すら得られず、とても悔しい想いをうまくバネにできず会社に行けなくなったことがあります。

そういった想いをしたことがあるデザイナーがどれだけいるでしょうか。だから僕は、企業にデザインとデザイナーの正しい認識と価値を伝えたい。そして企業とデザイナーのミスマッチをなくすことで、よりデザイナーがパフォーマンスを発揮できる社会を作りたい。そんな想いでこのサービスを作りました。

デザイナーの皆さん、業界内だけで影響力を与えるより、日本の「デザイナー」に対する職業認識、そして「デザイナー」の在り方を共に変えていきましょう。

デザイン組織を作りたいという相談が増えた
上記に加え、2017年末から今年にかけて金融機関を始め様々な領域の企業から「デザイン組織を作っていきたい」という相談をグッドパッチとして受けることがとても多くなりました。デザインがビジネスにおいて重要である、デザイナーの役割が正しく認識され始めたこともあると思います。
デザイン組織を作る際は、デザインチームを作ったことがあるデザイナーが必要ですし、デザイナーとして求められる経験も異なります。

また、デザイナーを採用したいけれども、どうすれば採用できるかわからないという相談も企業から増えました。一言でデザイナー採用と言ってもデザイナーの種類はたくさんあり、それぞれのマインドセットやキャリアパスも異なることは、日頃noteを読んでいるデザイナーの皆さんなら言うまでもないことです。

図:デジタル領域におけるデザイナーのキャリアパス例

このようにデザイナーのキャリアや役割、種類が多様化している中で、企業側が求めるデザイナー像を明確にしないまま採用することで、入社後にミスマッチが生じてしまっている現状があります。

それをデザイン会社である僕たちが間に入ることで、企業の中でデザイナーが働きやすい環境を整え、デザイナーの指向性やキャリアパスを把握した上で、適切な企業へ繋ぐことでミスマッチを減らすことができるのではないかと考えました。

さて、ここからは実際にサービス開発をしてきた中で、参考になりそうな視点・プロセスを抜粋して6つ紹介します。

1. 社内の過去の新規事業から学んだことを活かす

ご存知の方もいるかと思いますが、グッドパッチは過去に新規事業としてフィードバックツール「Balto」と呼ばれるプロダクトを提供していました。残念ながら2018年1月にはクロージングに至ったのですが、その際に得た学びを「Baltoサービス終了の背景」というタイトルで公開したところ、たくさんの方に読んでいただきました。

今回の新規事業である「ReDesigner」は、その学びを生かして始めました。たまたま「Balto」チームメンバーもアサインされたことで、過去の学びがすぐに実践として活きるようになりました。

失敗からの学びを、次へ生かすことが重要であるかを学びました。ちなみにグッドパッチでは、esa.ioを社内のナレッジ蓄積ツールとして使っています。チラ見せ。

過去に新規事業で失敗経験を積んだメンバーが1人でもいてくれることで、過去の資産が生かされると思います。事業の失敗は学びの宝庫であり、チームとしてそれをすぐに生かせるチャンスがあったのはありがたかったです。

2. 新規事業のユーザーインタビューは全員で行う

デザイナーのキャリア設計・転職状況を明らかにするために、デザイナー10名、企業のデザイナー採用担当人事5名に対してデプスインタビューを実施しました。

今回のデプスインタビューは、富士通研究所が編み出した「AImインタビュー」にのっとって行いました。僕たちのチームには、AImインタビューを度々実践してきたデザイナーがいたので、彼にチーム向けの手法説明会とワークショップを開いてもらいました。

インタビューする時のポイントは、下の図のように未来視点⇄過去視点、主体視点⇄客体視点、デジタル視点⇄アナログ視点と、インタビューする視点を切り替えること。これがやってみると難しい...。視点を意識しながら実践あるのみでした。


さらに今回のインタビューでは1つ新しいことに挑戦してみました。
それは「ローテーションでインタビュアーを変えること」です。

新規事業の立ち上げにおいては、ユーザーリサーチこそがサービスおよび事業の一番土台となる重要な部分であり、メンバーの一人ひとりが一次体験として腹落ちしなくてはいけないフェーズということで、僕を含め3人で交代で実施しました。また、人によってインタビュー内容がブレないように、合計14ページのユーザーインタビューシートを事前に作っておきました。

そのインタビュー結果から僕たちが導き出した「デザイナーの課題」は3つでした。

そこで出てきたそれぞれの課題に対して、解決策を練りました。
・転職先の中の人を知りたいという課題 → オリジナルの求人票を作成
・デザインに理解ある人に見てもらいたい → デザインの専門知識を持つキャリアデザイナーを配置
・自分の市場価値がわからない → オンラインサーベイに基づいた面談でのキャリア相談

また繰り返しになりますが、チーム全員でインタビューを実施することで、文字起こしをしても伝わらない雰囲気や観察での気づきも共有できるし、インタビュー後にフィードバックし合うことでスキルアップにも繋がるのでオススメです。

3. 設問を丁寧に作りこむ

議論の末、「デザイナーのためのキャリア支援サービスで行こう」と意思決定をして、まず行ったのは面談前のオンラインサーベイの設計でした。

「デザイナーの価値観をいかに正しく理解することができるだろうか」という問いに対して、まずは様々な角度でアイディアを発散。
例えば「デザイナーのモチベーションを理解する」ための設問一つを考えるために、ホワイトボードいっぱいにデザイナーがデザインをする上で大切にしていることを書き出しました。

発散時にはメンバーの1人が「まだまだ出せるっしょ。」と口癖のように言っていて。正直「もういいから早く次行きましょうよ・・」って思ってたんですが、後から振り返ると、この発散にかける粘りがなければ品質が落ちていたと思います。ものづくりと同じレベルで発散も粘ってみるのは大切だと感じました。

最終的な設問に収束させていく際には、デザイナーが回答する際に迷う設問がないかなどを試すために、Typeformというアンケートツールを使って動くプロトタイプを作り、社内のデザイナーを対象にユーザーテストを実施しました。(ユーザーテストの結果、自分たちでフォームを作ることになりました・・笑)

(↑プロトタイプとして作ったTypeformの画面)

4. デザインの対象を広げる:求人票のリデザイン

作るものが決まり始めた頃に、「Webサイトだけ使いやすくても全体の質って上がるんだっけ?」という議論になり、ジャーニーの中でもっと改善ができる点はないか探していきました。

そしてリデザインできる対象を見つけました。それは「求人票」です。
求人票と聞くと、なんだか古めかしく煩わしいイメージを持ちませんか?そんな求人票でも心地良い体験にできないか検討してみました。

(↑3枚綴りのオリジナル求人票)

また、よくある求人票もしくは企業のWebサイト上にある情報だけでは、デザイナーが本当に知りたいこと(例えば具体的なチーム体制や組織内でのデザイナーの立ち位置など...)にアクセスできていないこともインタビューで分かりました、デザイナーにとってどんな情報があると意思決定ができるのか、項目をインタビューベースで改善を重ねていきました。

いちデザイナーがここまで企業内の情報を知ろうとすると中々骨が折れるし、とはいえデザイナー目線で聞きたいことはたくさんある。そこで僕たちがこのオリジナル求人票を使ってデザイナーの代わりに、企業へヒアリングすることにしました。

従来の市場に対して新規参入する場合は、ただWebサイトやプロダクトを作るだけでなく、カスタマージャーニー上でリデザインができるプロセスがないか検討してみることをオススメします。

5. デザインコンセプトとブランドの設計

サービスコンセプトができたので、次にデザインコンセプトとブランドコンセプト(ロゴ)の策定を行いました。

5-1. デザインコンセプトの設計
まずは市場の観点から紐どきました。ビジネスモデルとしてのポジショニングマップを作ってはいましたが、それとは別に人材サービスのビジュアルポジショニングマップを作って差別化要素を検討しました。

次に対象ユーザーの観点から紐ときました。キーワードをブレストして、「信頼」「挑戦的」「プロフェッショナル」「パワフル」などサービスが目指す要素を発散し、そこから想起するカラーパターンをいくつか作りました。

また、アニメーションにもその世界観を反映するために、Flintoでアニメーションを再現し、合計20近くのFlintoファイルをエンジニアと共有してコミュニケーションをしていました。

(↑ボツになったデザインコンセプト。Flintoで作って書き出している。)

5-2. ブランドコンセプトの設計
LPを作成しながら、並行でブランドコンセプトとロゴデザインを推進しました。これは先日「デザイナーがいないスタートアップを支援します」というnoteにも登場したベルギー出身デザイナーのBertに手伝ってもらい、ワークショップ形式で進めました。

A. サービスビジョンの言語化
まず改めてサービスビジョン・ミッションを言語化しました。英語しか話せないメンバーもいるので、ディスカッション中は英語でした。もちろんドキュメントも日英表記です。

B. ムードボードの作成
次にPinterestやDribbbleを用いて、自分たちが目指すものに近いと思ったものをザッピング。これもチームメンバー全員で行いました。見せ方から、フォントから、カラー、アニメーションまで集め、Millanoteにまとめて印刷して張り出して議論をしていきました。

C. ロゴのポジショニングマップを作成
デザインコンセプトと同じようにロゴのポジショニングマップを作成しました。ここの画像は割愛します。

上記A,B,Cをもとにロゴのラフ案を3つ作成しました。そして最終的にできたのが以下のロゴです。

(↑keynoteでアニメーションを作りgifに書き出したもの)
※noteさん、迅速なgif修正対応ありがとうございました!

企業とデザイナーを繋げるというストーリーに、デザインコンセプトで挙げた要素を加味してアニメーションを作成。最終的にバリューとロゴを併記して忘れないようにしました。

デザイナー1人でロゴやバリューを作るより、チームとしてワークショップを行うことでより想いが持てるようになりました。そして英語だとシンプル。

6. 未来について考えるワークショップ

最後です。サービス開発を進めながら、今後のロードマップを考えるために未来について考えるワークショップを実施しました。2時間で、ワークショップ形式でひたすらチームメンバーと未来について考えました。

僕は年間15社ほど、デザインワークショップのファシリテーターを務めていますが、ワークの中でも未来について発散するのが一番難しいと思っています。今回は「ReDesigner」が2年後に、ビジネス面・ユーザー面・チーム面でそれぞれどうなっていたいのか理想像を発散・集約するワークショップを行いました。

ポイントは、まず個人作業で誰とも話さずに深く考え、次にチームで共有しながらアイデアに乗っかって議論すること。BGMも忘れずに。

発散した後は、グルーピングして、そのカテゴリごとにより深い議論ができるようその場でファシリテーションをしました。
そこで出てきた未来はこういうものです。(ほんの一部紹介します)

・日本だけでなく海外の人材も対象としている
・自分のポートフォリオが管理できる
・CDOを100名輩出している

このワークショップの結果、1人で考えるよりもはるかに視点が広がり、僕たちがどういう未来を目指し、創り上げていくのか。共通の未来を描くことができただけでなく、チームメンバーのオーナーシップ向上にも繋がりました。

デザイナーの役割を再定義する

実は今のサービスモデルに行き着くまでに、他にもいくつかサービスの方向性がありました。デザイナーの体験入社やデザインスキルの数値化などです。しかし、それでは結局世の中のデザイナーに対する認識は何も変わりません。日本の社会におけるデザイナーの立ち位置も、デザイナーの年収も、グローバルスタンダードから置いていかれてしまいます。

デザイナーの役割を再定義するという想いを込めた「ReDesigner」というサービス名にある通り、僕たちが企業のデザインに対する認識を変え、デザイナーがあらゆる業界・規模の企業において適切な役割で最大限のパフォーマンスを発揮できる未来を実現したいと思っています。

そんな未来になれば、日本はもっと競争力を高められ、過去の僕のようにデザインの価値を伝えることができず、悔しい思いをする人も減るはずです。

デザイナーの皆さん、一緒に日本を前進させましょう。

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Jun Saso

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