【オーラ】愛の苦悩から、色気を解明した哲学者・九鬼周造

「文章にもオーラがある」と
いう記事を先週かしら?
書いたことがあります。

その記事は、ある一冊の本が
きっかけになっていました。
硬いんだか、柔らかいんだか、
不思議な本でした。

「『いき』の構造」九鬼周造。
岩波文庫。
底本は昭和5年に出された
同じ題名の本です。

九鬼周造という方は、
戦前の京都帝大哲学部を代表する、
西田幾多郎、
和辻哲郎、
三木清、
田辺元ら、
京都学派の一人ですが、
細おもてのイケメンです。

しかも「いき」とは何かを
哲学的に解明しようとしています。

戦前の九鬼らにとって、
「いき」は〈媚態〉、
今風にいうと、色気、淡い色気です。

京都学派のホープが
なんでそんなことに
取り組もうとしたんだろう?

淡い色気なんて、
言葉によって定義するのが
一番難しい要素ではないですか?
不思議な学者だなあ、九鬼周造。

しかし、本を開くと、
哲学の本場ドイツでハイデガーから
学んだ分析方法などを駆使し、
本自体はけっこう固いんです。
ただ、中身は柔らかいんです。
よし、読み解いてやろう!

九鬼周造は「いき」を解明するため
似ている概念や反する概念を
いくつも出して、
チャートにしていきます。
「いき」「やぼ」「地味」「派手」
「上品」「下品」「甘み」「渋味」
こうした概念から「いき」そのものの
特徴を見つけていくんです。

大先生の西田幾多郎が「善」を
和辻兄さんが「精神」を
三木清兄さんが「倫理」を
ライフワークにしていく中で
九鬼周造は違う道を選びます。
なんて「いき」な人なんだろう?(笑)

でも、それには理由というか
深い訳がありました。

九鬼周造の父親は、
男爵で、役人でしたが、
その部下に、岡倉天心という
変人美学者がいました。

情熱家であったと聞きますが、
それが美術品たけでなく、
恋愛にも熱かったのか?

岡倉天心はこともあろうか、
上司・九鬼男爵の妻に恋をする、
それも、周造を身ごもった時の
奥さんに!?です。

もともと、男爵もイケメンなら、
奥さんも美人だったそうです。
出身は京都の芸子さんだったとか。
そりゃあ、周造もイケメンな訳です。

話がそれました。
岡倉天心の愛の求めに
なぜか奥さんも応じて、
一時期、九鬼夫婦は別れたり、
また、周造が生まれては
九鬼夫婦はもとに戻ったり、、、
そうした破天荒は、周造が
大きくなるまで続きました。
天心も、九鬼男爵の妻も
ファンキーですねえ。

残念ながら、
最終的には、周造のお母さんは
男爵の元を離れていき、
心のバランスも崩して
今でいう精神病院にこもりました。
二人の男性の間をさまよって
苦しんだからでしょうか。

さらに可哀想というか、
もろに、大人たちの恋愛事情に
振り回された周造は、
大のマザコンになります。
そして、
いつかこの、人をかくも狂わせる、
あやうい感情を、
分析したかったのでしょうか。

分析し、解明することで
胸のうちで騒ぐ感情を
やっつけるしかなかったのか。

でも、まっすぐに、
恋愛小説家にならずに、
哲学者になっていったのが、
九鬼周造の真骨頂でしょう。

チャートにしたり、
座標軸を駆使して
恋愛や美味、美について
解明する発想のモデルは、
九鬼周造あたりにあるのか。

「いき」の反対は「やぼ」。
その「いき」には「上品」やら、、、
いや、待てよ、、、、。

岡倉天心って、
あの『茶の本』で有名な岡倉天心
ですよね。ちょっと待てよ。
身重な上司の妻と恋愛をして、
他人の家庭を壊していたのか?
うーむ、今度はそっちを
調べてみたくなってきた。

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