もし、今度生まれ変わったら？

20代30代には、
こうした問いかけをよく
仲間うちで言いあったものです。

最初のうちは、
無邪気なもので、
「今度生まれ変わるなら、
建築士になりたい」とか
「自分は刑事になりたい」とか
今なら「ユーチューバーになりたい」
と言うのでしょうか。

そのうち、
「私は風になりたい」とか
「僕は屋久杉になりたい」とか
「沖縄のヤドカリになりたい」など
森羅万象の何かになりたい、
と、気障というか、
ふざけたりもしました。

でも！です。
もし今度生まれ変わったら？
という問いかけは、
やはり、人間になるのが、
基本前提にあるように思うんです。

仕事に関心がある時は、
仕事で回答するでしょう。

旅や地理に関心がある時は、
イタリア人になりたいとか、
マチュピチュの村に生まれたいとか。

歴史やタイムトラベルに
関心がある時は、
戦国時代に生まれたいとか、
幕末の志士になりたいとか、
まあ、色んな回答ができて、
その人ならではの世界観が
回答からにじみ出ていて、
相手を理解するのに　
ちょっと役立ちそうでもある。

さあ、
そんな浮かれた問いかけが
楽しいのも、20代30代まで
ではないかしら(笑)。

では、
50代あたりには、
どんなふうになってくでしょうか？

それは、
もう一回、人間をやるのは
もう勘弁して欲しい、
となってくる気がするんです。

ある人気漫画家に
私はまだ無邪気な心で、
今度生まれ変わっても
やはり漫画家になりますか？
と、訊いてみたんです。

食べて呑んで、
その帰り道だったと思うんです。

もう才能も人気も財産も家庭も
おしなべて恵まれたその漫画家は
「もう人間は、いいかな。
人間をやるのは一度でいいかな」
と、ツブやかれたのです。

な、な、な、なんと！
でも、確かにそうだ、
その通りですわ。

また、幼稚園児やって、
小学生やって、中学生やって、
受験やったり、
思春期の反抗期やって、
親とケンカしたり、
クラスでイジメられたり、
逆にイジメをしたり、
だんだんませて、
失恋もしたり、横恋慕したり、
大学受験したり、
また、就活したり、
しくじって就活浪人したり、
大人の恋愛をこじらせたり、
そこへ、
コロナがパンデミックしたり、
大地震が起きたり、
まあ、そりゃあ、
ごく平凡な人生だって、
大変密度の高い時間や
濃密な体験を送っているんですよね？

どうですか？
もう一度、人間やりたい、
と思えそうですか？

私は正直言って、
人間にだけはなるのは
ごめんかもしれません。

どんな人にも、
濃密な体験と時間がつまっている、
この人生という奴は、
いっぺん切りでもう充分？
なのかもしれません。

それに、せっかくなら、
来世は新しい存在になりたい
とも思いますね。

私は、沖縄のヤドカリが
ちょうどいいかな？
あるいは、風になりたいかしら？

人間という存在が
もう少し、楽に生きられたら、
それなら、人間になるの、
考え直してもいいんですけれど。
(汗)。