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【推薦作家】何を書いても小説になる作家がいる?

戦後作家で、小島信夫という
人がいました。
1955年に芥川賞をとった
『アメリカンスクール』や
代表作『抱擁家族』などがあります。

この小島信夫さんは
「何を書いても小説になる」
という風に言われていました。 

何を書いても!
何を書いても?

とりわけ、
晩年に書いた小説群は、
一見、エッセイみたいな、
あるいは、日常身辺記みたいな
温もりのある文章なのですが、
読んでいるうちに、
どんどん引きこまれていく。
ただのエッセイではなくなる
世界に案内されていきます。

こんな作家は実に羨ましい。 

又吉直樹がリスペクトする
古井由吉という、
近年他界した作家も
一見、エッセイみたいな
始まりを見せながら、
どんどん深みをましていく。

何を書いても小説になる
タイプの作家でした。

そういえば、
小島信夫と古井由吉は
戦後に「内向の世代」と
呼ばれた流派の人たちでした。

内向の世代とは、
元々は、戦争や社会みたいな
大事な?テーマを取り上げない、
という意味で、悪口として
先輩作家や批評家から
命名されたグループ名でした。

ですが、古井由吉や小島信夫、
吉行淳之介、安岡章太郎ら
内向の世代は、
戦争や社会の問題などを
あえて提議しなかったはずです。
しなかったのですが、
今から考えると、
戦争や社会問題を取り上げた作家より
普遍的な視線で
世間や社会をよく見極め、
自分なりに、 
世間との距離のとり方を
模索していた人たちでは、
という気がします。

いつまでも、作家といえば
戦争や戦後社会を書くべきだ、
という当時の決めつけに
ウンザリしていたのでしょう。

まるで、人見知りの人が
より無理をせず、生きている、
その知見の中に
人生全般の知恵があるような…。

ああ、そうか、
今きづきましたが、
私が内向の世代を
ちょくちょく読みたくなるし、
このnoteででも書きたくなるのは、
戦争や戦後社会が大事だから
ではありません、
その反対だったのかも知れません。

内向の世代といわれた人たちの、
世間との距離のとり方、
距離を縮めたいと焦る訳でもなく、
その独特の在り方に
惹かれていたのでした。

今さら気づくとは、
もう54才にして、、、。
遅すぎますね(笑)。

しかし、
小説を書こうとして
無理やり別世界を創るのではなし、
何を書いても、小説になる!
そんな在り方は羨ましいなあ。

何を書いてもエッセイになる、
みたいな(笑)。

そうしたら、毎日更新も
もっと楽にできるでしょうね。
最近、ちょっと
書けない日があるからか、
小島信夫のことが
よけい気になっていたのでした。

世間や社会との距離の取り方を
極め尽くしたら、
もしかしたら、自ずと
何を書いてもエッセイになる、
そんな人になれるのかもしれません。

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