見出し画像

【本の記事】本には書評にしにくい本もある?

書評にはしにくい本は
存在するでしょうか?
読書感想文にするのに
好ましくない本はあるかしら?

今まで考えたこともないのですが、
どうもあるみたいだな、と
最近、気がつきました。
 
1つは、コーラン、
イスラム教の教典です。

専門家が解説するのは
全然ありでしょうけれど、
色々な視点から分析をする、
しかも、非イスラム信者が
書評を書く場合は、
よほど芯を食うのでなければ、
たくさんの信者を傷つけたり、
悲しませるでしょう。

読書感想文ならありでしょうか。

表現の自由があるよ、
と思われるかもしれませんが、
信者を傷つける権利はありません。

ところで、もうひとつ
書評、それも
様になる書評に落としこんでは
危険な本があります。
メンタル失陥の本、 または、
精神障害の話を土台にした本です。

簡単な印象や感想文なら
人畜無害で構わないでしょう。

一歩踏み込んで、
様になる書評に落としこんで
書くのなら、
メンタル失陥の人に非常に注意
しなくてはなりません。

最近、河合隼雄先生の本に対する
文学的な書評を目にし、
あまりに深く傷つき、
目の前が真っ白になりました。

15年近く河合隼雄先生の本を
ほとんど読んできました。
いや、この際、読書の量は
関係ありませんね。

河合先生の本には
本当に救われてきました。
文学的な比喩として
救われたのではなく、
治療行為者・河合隼雄に
助けられてきたんです。

いつ今のうつ病が爆発し、
発狂したら?狂人になったら? 
メンタル失陥の者には
今の段階が今後どうなるか
毎日が戦々恐々です。
私はまだ軽い方でしょう。

私みたいな人はたくさん
いるでしょう。
河合先生によって救われてきた
何万、何十万という人が。

noteでは、カウンセラーの方が
よく河合隼雄先生の著書を
紹介する記事にしてますね。
さすがは「プロ」。
細部に患者への注意が届いてます。

しかし、メンタル失陥にも
なっていない人が、
「エッセイ」として
いかにも様になった文学的書評を
書くのは非常にデリケートな
問題をはらみますね。

私1人の体験や感想として
書いたとしても、
それ以前に、河合先生に
助けてもらった無数の
メンタル失陥者や
メンタル失陥候補者がいます。

彼ら彼女らには、また
それぞれの河合隼雄像があります。 
それを余りかえりみずに、
尊重せずに、
自分の分析&観察で書く「書評」は
彼らを傷つける可能性が…。

メンタル失陥の人間でなければ
河合隼雄の話を描いてはダメなの?
というと、もちろん、そんなことは
ありません。
読書の自由も書く自由もあります。

でも、著作が多い河合隼雄さんは、
パッと見では一般書でも、
根底には、治療者らしい
優しさが出発点にあります。

いかにも独自な文学的書評を書いたら、
大勢のメンタル失陥者が持ってる
河合隼雄像がどうなるでしょう?

あまりに読みやすく、
幅広く愛されてきた
『こころの処方箋』などは
身近過ぎるようになりました。

でもタイトルは『処方箋』です。
「カルテ」でもあります。
医療書の性格もあります。

それに、精神失陥者との体験が
土台になっています。
いくら、身近なベストセラーで
あろうとも、
医療行為者が書いた医療本
という側面があります。

素朴な感想文を書くのは
構わないでしょうけれど、
様になる文学的な書評にするには、
イスラム本を書評に落としこむのと
同じくらいの覚悟がいります。
多くの河合隼雄先生の患者を 
傷つける可能性は避けられません。

その代わり、
『セラピスト』を書いた
ノンフィクション作家
最相葉月さんのように
何年もかけて取材するならば、
話はまた違ってくるのですが。

河合隼雄はもしかしたら
メンタル患者の私にとっては
宗教なのかもしれない。 
余りの偉大さによって
教祖になっているかもしれない。汗。
そこは風通しのため、
様々な検証が必要ですね。 

ただ、河合さんを拠り所にする 
メンタル患者は何万、何十万といます。

よほど深い覚悟がないまま、
通常のエッセイと同様に考え、 
メンタル失陥に造詣も薄いまま
文学的書評にしたら、
たくさんの人を傷つけ、
混乱させるでしょう。 

これは単なる文学的な本では
ないから起きる現象です。
河合隼雄は厄介なおじさんです。

メンタル失陥の者には、
河合隼雄先生は、
作家であると同時に、
いや、作家である前に
治療行為者なんです。

河合さんの本は、
常に根底では医療行為を目指して
書かれているからです。

文学書で救われた、
というのとは全然違う訳ですね。
メンタルな失陥を
書評にするというのは、
デリケートで難しいテーマですね。

表現の自由か。
傷つけない心か。

問題はそれによって
必ずや傷つく人がいるということ。
できれば、両方を兼ね備えたい。

この記事が参加している募集

読書感想文

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?