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【文学】明治の私小説『蒲団』が映画化。現代に受けるのか?

作家・田山花袋が
1907年(明治40年)に書いた
作品『蒲団』を原案にした
映画がもうすぐ公開になるらしい。

今から117年も前の小説が
現代にそのまま通じるだろうか?

そんな不安は、
映画制作サイドにも
もちろんあったらしく、
主人公の小説家は、
映画では、シナリオライターに
変更されているらしい。

田山花袋が書いた小説では、
妻子ある小説家が、
作家志望の女学生を弟子にし、
自分の家に住まわせる。
やがて、女学生は若い男に惹かれ、
嫉妬に狂った小説家は
女学生に当たったため、
彼女は作家宅から出ていく。
やるせない事態に絶望した
小説家は、こっそりと
弟子の女子が使っていた
寝間着や蒲団に顔をうずめ、
なんとも言いようのない
気持ちを味わっていく、、、
田山花袋の作品は
そんな話ですが、
これが私小説、
つまり、実際の体験を元に
書かれたという訳で、
当時の社会や文壇は
スキャンダラスだと話題になった。

さて、
気になるのは、
このシンプルな私小説が
より刺激を求める現代の映画館で
どう受け取られるか?
牧歌的過ぎでは?と
興味を持たれないのではないか?
という心配です。

私は古い小説好きで、
とりわけ私小説が
もっと私たちの日常に
よみがえることを願う者ですが、
田山花袋の『蒲団』は、
現代によみがえらせるには、
相当なテコ入れが
必要になるのではないか?
そこが心配なのです。
大丈夫かな。

117年前には 
妻子ある、いい歳をした作家が
それも、自然主義文学の
リーダー格の作家が、
弟子の女子学生の
寝巻きや蒲団を取り出して、
顔をうずめる姿は、
たしかに生々しい、
変態チックな姿ですね。

それも、自分の家に
住まわせたから、 
その部屋には
女子学生が使っていた
寝巻きや蒲団がある、、、
それを未練たっぷりに  
匂いを嗅ぐ、、、というのは、
情けなさでは、
ひけをとらない普遍的な姿でしょう。
それが、117年後の現代人に
どれくらい心に刺さるのか?
映画『蒲団』がどんな話題になるか
注目したいと思います。

『蒲団』には
読む人を惹きつける何かがあるのか
中島京子はデビュー作で
田山花袋『蒲団』をアレンジした
ユーモラスな作品がある。

現代的な価値観で観れば、
蒲団や寝巻きに顔をうずめるのは、
気持ち悪くてヤバいし、
不快感を呼び起こしてヤバいし、
主人公のラストの行為は、
ボロクソにいわれるでしょう。

この映画、正直いって
当たるとは思えない。

ただ、男の心の根っこには
こうした情けなさ、 
未練がましさが
令和6年の今でさえ、
コンプラやポリコレとは関係なく
残っていることは確かで、
だから、映画化されたり、
新しい小説にされたり
するのではないでしょうか?

まあ、こんな情けなさ、
決して褒められた話では
ないのですが。

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