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映画で学ぶ、図書館のあり方

こんにちは。

図書館が舞台の映画ってあまりないんですが、昨年と最近観た図書館を舞台にした映画がすごく面白く、そして今まで抱いていた図書館のイメージがだいぶ違って感じるようになってきたので、その思いをnoteに書いてみたいと思いました。

その2本の映画の紹介と、そこから見える図書館のあり方を書いていきたいと思います。


『パブリック 図書館の軌跡』

まず1本目は、2020年7月17日に公開された『パブリック 図書館の奇跡』です。こちらはまだ公開中です。

舞台はアメリカ、オハイオ州シンシナティ。大寒波が来るという日にホームレスが暖を求めて図書館に立て籠もろうとする! さあどうする職員の人たち、という感じの映画です。

主人公の職員は、日頃から図書館にやって来るホームレスたちと交流もあり、大寒波の夜に追い出すことは凍死を意味しているので一緒に立て篭り、それを排除しようとする図書館側と対立します。

この騒動をスクープしようとするテレビレポーターや得点稼ぎしようとする政治家が絡んできたり、主人公の過去や同僚や隣人との関係性などドラマは盛り上がりを見せるのですがそこは一旦置いておいて、この映画が問題提起しているポイントにフォーカスしてみたいと思います。それは、「公共施設の役割って何なのか?」という根本的な問いです。

公共施設が社会的弱者やマイノリティを排除していいのか、本来は万人に開かれた場であるべきではなかったのか。

図書館は本を借りるだけの場所というイメージとは違い、公共施設としてのあり方というもっと根本的な部分を考えさせられるメッセージがこの映画には込められています。


『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』

そして2本目は、昨年公開されたドキュメンタリー映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』です。
監督は、ドキュメンタリーの巨匠フレデリック・ワイズマン。

ニューヨーク公共図書館に日々いろいろな人々が訪れる、それを何の解説もなくただひたすら撮り続けたドキュメンタリー。

でもそこから図書館に訪れる人々が求めているもの、課題が浮かび上がり、それに対するニューヨーク公共図書館の現在進行形のアンサーが日本の図書館しか知らない身には衝撃的なほど素晴らしく、未来を感じさせる内容になっています。

ニューヨーク公共図書館では、著名人のトークショーなど様々な催しが行われています。
エルヴィス・コステロやパティ・スミスといったミュージシャン、作家、詩人、陶芸家、生物学者などがゲストとして訪れます。

ウディ・アレンやスパイク・リーなどの映画監督も常連なんだとか。

ニューヨーク公共図書館は、財政の半分をニューヨーク市から、もう半分を民間から受けています。その運営をめぐる幹部たちの会話シーンも面白いのですが、今回注目したいのが、その中で開催されている小さな催しです。
・中国系住民へのパソコン講座
・点字・録音本の教室
・障害者のためのサービスを説明する会
・シニアダンス教室
など
それに、自宅にパソコンがない人たち向けに無料でインターネットを解放していたりする。

図書館って、課題を持った人たちが解決策を求めてやってきたりするんです。その人たちに向けたワークショップが小さな催しとして開かれています。
宗教や人種、障害などを含めたマイノリティの人たち向けの講習をしていたりして、それは、課題解決の場でありコミュニティであったりします。

そんな"世界で最も評価されている"というニューヨーク公共図書館の姿が浮かび上がってくるところがこの映画の面白いところなんです。


図書館のあり方

この2本の映画で見えてきた図書館の公共施設としての役割、そして課題解決の場であり、コミュニティであることの考え方が、これからの図書館に必要なんではないかと思えてきます。

◎日本の図書館
国内では、1970年代から利用者数や貸出数を伸ばすことに注力してきたそうです。一部の知識層や学生の教養のための図書館から、仕事や趣味など幅広い市民ニーズに応える図書館にシフトすることを目標にしてきたのだとか。

しかしながら、ベストセラーのような人気書籍ばかりを数多く揃える図書館に対しては、「無料の貸本屋ではないか」という出版業界や書店業界から民業圧迫だとして批判を受けたりもしているのだそう。

この辺りは、映画『パブリック 図書館の奇跡』のパンフレットに書かれています。(猪谷千春 著)

◎ニューヨーク公共図書館
これに対して、ニューヨーク公共図書館は、人々の暮らしの問題解決のために情報を使いこなしているようです。

例えば、ガンを医者に宣告された患者が自分の病状を理解し、今後の治療の選択肢を考えるためにやってくる。図書館には専門的な資料やデータベースがあり、専門司書に聞けば懇切丁寧に教えてくれ、仕事や家計、子供の面倒のための公的支援の情報や地域の関連機関やサポートグループなども教えてくれる。

こんなエピソードもある。
頻繁に通ってくる50代の男性が、図書館の無料インターネットを使って有料の競馬ニュースを送るビジネスを始めた。
さすがにそれはやり過ぎじゃないないかと職員に聞いたところ返ってきた答えが、
「彼が失業して社会保障のコストをかけるより、図書館の資源を大いに活用して得意分野で"才能"を伸ばし、経済的に自立して自信をつけてもらった方がニューヨーク市にとっても彼にとってもメリットが大きい」
というものだったとか。

こういう大局的に物事を見る姿勢や考え方がすごい。

このエピソードも映画『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』のパンフレットに書いてあります。(菅谷明子 著)

この在米ジャーナリストの菅谷明子さんは、書籍も出されていますので興味ある方は映画だけじゃなく、本も併せて読むとより理解が広がると思います。


◎今後の図書館のあり方

調べてみると日本でも公共施設として図書館をコミュニティの場に活用しようという動きが出てきているようです。

カフェを併設したり、地域活動の拠点としてサポート機能を注力するような動きになってきている地域もある。

年配者、受験生、ママさん、外国人、障害者の方などその地域に住む人たちが図書館によって少しでも救われることができたらとても素敵だなと思います。 図書館には色々な役立つ情報やデータベースがあって、その資産の活かし方はアイデア次第でいくらでもありそうです。

ただの"無料の貸本屋"から、公共施設として課題解決の場であり地域のコミュニティとなっていくのが今後のあり方なのかなと感じます。

図書館という「知」のプラットフォームが、今後どのように進化していくのかとても楽しみです。 ニューヨークが今は抜きん出て進んでいますが、各国でこの流れは出てくると思うので、日本でもどのように進化していくかワクワクしながら見ていきたいと思います。


最後に

昨年と最近、たった2本の映画を観ただけなんですが、図書館の可能性をとても感じてしまったので、今回noteを書いてみました。

こういうことが学べるから映画って面白い!

これからも映画での気づきを書いていきたいと思います。


最後までありがとうございます。

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