ガザからの願い
エルサレム駐在員の大澤です。昨年(2023年)10月7日から3ヶ月、ガザ地区への無慈悲で無差別な空爆や地上からの攻撃によって、命を奪われる人が後を絶ちません。これまで私たちがガザに足を運ぶ中で知り合った人たちも、幸い命を落としていなくても、家族・親戚・友人、家、生活、夢、さまざまな大切なものを奪われ続けています。
その中の一人、2018年からJVCパレスチナ事業のクリスマスカード(※)のデザインをお願いしていたワラー・シュブラックさんについてご紹介したいと思います。
JVCパレスチナ事業では、マンスリー募金および年間一定金額以上のご寄付をいただいた方々に毎年現地からクリスマスカードを送付していました。2018年からは当時の駐在員が縁あって知り合ったガザ在住のワラーさんにデザインをお願いするようになりました。
私が初めて彼女に会ったのは2022年9月。透明感のある白い肌に奥ゆかしい笑顔、とても控えめな印象を抱きました。しかし、絵や日本のことなど話をしていくうちに打ち解け、気がついたら2時間近く話をしていました。絵を描くことが本当に大好きで、聡明で、純粋な彼女。少し後に、以前私がガザで購入した絵葉書としおりが彼女が制作したものだと気が付きました。
毎年届けてくれたステキなイラストとメッセージです。
2022年のクリスマスカードの原画と同時に、JVCにクリスマスプレゼントを作成してくれました。ガラスに描いたサンタクロースとトナカイです。”あなたのクリスマスが明るく楽しいものになりますように”というメッセージ付きでした。
そんな彼女も現在は家を追われ、何度も移動を繰り返す避難生活を続けています。ワラーさんの自宅はガザ市にありました。空爆の激化に伴い、家族は同じガザ市の別の地域に移りました。一時休戦が実現した11月24日、家族とともに自宅の様子を見に行った彼女が目の当たりにしたのは、半壊状態になった自宅でした。彼女が制作に励んでいた、夢が詰まった机も写真のような状態でした。
10月末頃から、空爆に加えてイスラエル軍の地上侵攻が始まり、数日のうちにガザ市を含むガザの北部が地上軍によって包囲され、徐々に侵攻されていきました。その侵攻は北部にとどまらず少しづつ南下していき、それに伴ってだんだんとイスラエル兵は北部から撤退を開始しました。撤退とともにイスラエル軍はさらに街を爆破し、ワラーさんのお父さんが家を見に行った時、下の写真のように7階建ての建物は跡形もなく崩れ去っていたそうです。
ワラーさんのように、占領と封鎖に伴って課されるさまざまな制限や差別、人権侵害に苦しめられながらも、平和を望み、夢を抱いて生きてきた人々が今、すべてを奪われ、命の危険にさらされています。
そんな中でも、「私たちの魂を奪うことはできない。いずれまたすぐに自分のアートコーナーを作る」という強い意志を持って、毎日を生きる彼女。彼女をはじめとして同じ状況に置かれる220万人のガザの人々が、どうか安心して暮らせる日々を取り戻せることを願うばかりです。
最後に彼女からのメッセージをお届けします。
JVCのパレスチナ事業では、現地に暮らす人びとの意思を応援する形での支援を行なっています。また、パレスチナの問題を日本社会にも伝えることで、一人ひとりが取り組むための橋渡し役を担うことも試みています。 サポートしていただいた分は全額、JVCのパレスチナ事業に寄付いたします。