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「存在の耐えられない軽さ」と「カサンドラ」

随分昔に「存在の耐えられない軽さ」という映画を見た。

どよ〜んとした映像&フランス語でボソボソ語る感じが文学を感じさせ、見た後に何だか賢くなったような気になる映画だった。(と記憶している)

あれから20年余り時が過ぎ、最近私の頭の中に「存在の耐えられない軽さ」という言葉がチラチラと舞い降りてくる。

夫は、アスペルガー。(だと思われる。)そして私はまんまとカサンドラ症候群になった。

カサンドラ症候群になったのは、私が人間的に未熟な訳だからではない。と断言できるまでに相当な痛みを伴い、時間を費やした。

私の周りにも、同じ症状に苦しんでいる人が数名おり、そして感じている事、苦しんでいる事は、ほぼ同じと判明した。

そして皆、まんまとカサンドラ症候群になってしまうのだ。

それは何故か。


それは、
自分の存在が耐えられないレベルで軽いと感じてしまうからではないか。と私は思っている。
そして、それは想像以上に人間に深いダメージを与える。

話しかけても、返事がない。
困りごとを相談しても、他人ごと。
体調不良で倒れて助けを求めても、放ったらかしで、いびきをかいて寝ている。
改善要求をしても、そっちが悪いと逆ギレされる。
収支を考えず買い物する。


これは相手が悪意を持っている訳ではなく、性質上そのようになってしまう訳だが、こちらは上記の様に受け止めてまう。
こちらの存在が耐えられない程、軽い気がしてしまう。


そこに毎日モヤモヤし始め、次第にカサンドラ症候群に向かって行進んでいく。気がついた時には体調不良が頻発し、そしてお子さんがいる場合には、子どもの発達障害も判明し、いよいよ、心の不調が出てくる。いわゆる、うつである。


それで終わらないのがカサンドラ。子どもの幼稚園やら学校やらで何かとフォローか必要になり、奔走しなければならない。一方で夫は相談しても他人ごと。さらには、夫自らが問題を起こし、その処理すらも背負わなければならなくなる。うつを伴走させながら。


こうなったら、誰でも一度は思うはず。


私は何の為に生きているのか。
この苦しみは何なのか。


しかし理由など求めている時間もさほどなく、次々苦悩が湧いてくる。


我が子たちも、社会に出たら同じ様になってしまうかもしれない。それは避けたい。もっと努力しなくては。いわゆる家庭内療育が始まる。


この時点で心も身体もこれ以上ない程、疲弊しているというのに、さらにこんな事を考え出す。


夫への様々な感情は、他人からは子ども達も同じ様に思われると言う事か。私がまず考え方を変えなくては。子ども達に申し訳ない。
夫と子どもとの狭間に立ち、そして、悲しさ虚しさ寂しさ怒り等々の素直な感情すらも自らに禁じてしまう。

いよいよ、わけが分からなくなってくる。

ついに起き上がれない程に疲弊し、私からは笑顔が一切消失する。


絶望。


あれから数年。


私は以前よりも元気になり、そして状況を少し俯瞰して見られるようになった。


そしてふと思い出した映画が「存在の耐えられない軽さ」。


映画では恋愛、愛に対する価値感の違いを重量で描く。時代背景を織り交ぜながら、登場人物の男は軽く(チャラい)、女は重く(真剣で重い)設定されて話が進む。

女は愛と未来を信じ、男は愛など信じず、今だけを生きる。

女は存在の重さを求め、男は求めない。

この2人、全然噛み合わないのに、何故か一緒に生きることになる。

そして最後は…結局人間は、重さがある事に安堵する生き物なんじゃないでしようか。というお話。


やっぱそうでなきゃ!と、若い私は思った。


けども、 20年経ち、今、私はこうも思う。重いとか軽いとかは、もういいのよ。重さって比較するから差がわかる。あくまでも比較した時に分かる話。


だから、比較しなければいい。比較しなければ、私が重いのか軽いのかなんて分かりゃしないんだから。


私だったら、こう言葉をかけるのに。
私だったら、助けてあげるのに。
私だったら、相談にのるのに。
私だったら…
私だったら…


何度となくつぶやいて悲しくなったこの呪文。
これは、相手と自分の重さを計量していたのかもしれない。


私にとってこの計量には、未来がない。
何故なら相手は変わらない。
私は計るのをやめ、私は私の軸で自分の重さを感じる事にしようとしている。


そうしたら、夫がどうとか、どうでも良くなってきた。幾分気分は軽くなり、自分の心地良い時間が増えた。子どもたちを心配する時間は減り、ただただ可愛いと思える時間が増えた。



しかし、まだまだ実験中である。未来は敢えて見ない。考えない。
とりあえず今。今を快適にしなくては未来など見えてこないから。


私も映画の男のようにチャラくなつてきたかも?


映画の主旨とは全く逆の選択を敢えてし始めている自分。この映画を見た頃の自分は、こんな事を考えるようになるとは思ってもいない。深いね。生きてみないとわからない事ってあるよね。



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