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テレビの教科書

 を読みましたので簡単にまとめ。著者は碓井広義氏。

 前回はテレビビジネスにおいて、どのようなお金の流れが起こっているのかを見ました。お金の流れは制作費と電波料の2つが主でした。
 
 ではこれが視聴率至上主義とどう関係するのか、というのが今回です。
 関係するのは電波料でした。

 放送局はCMが挟める枠を企業へ売って、企業がその枠を買ってCMを放送してもらっているわけです。この枠には大きく分けてタイムスポットの2つがあります。
 タイムは、その番組を丸ごと買い取って、その番組では特定の会社のCMしか流さないというもの。例えばかつての東芝日曜劇場でしょう。
 スポットは、番組が終わり次の番組が始まるまでの時間、15秒のCMなどを流している枠です。

 現在はスポットの割合がタイムの割合を上回っていると思われます(本内では古いデータですが7:3となっていました)。理由は一社が番組を負担することへの企業内での見直しがあったから、スポットで視聴者の目に何度も触れた方が効率がいいという考えが出てきたから、などです。

 そして企業は放送局に対して、「GRP」という指標をもとにCMを流すことをお願いします。GRPとは「Gross Rating Point」の略で、「延べ視聴率」を指します。
 例えばCMをある期間100本打ったとしてそれがすべて視聴率20%を取った場合、100*20=2000GRPとなります。

 企業は「2000GRPでお願いします」などというように放送局へ依頼します。そしてこの2000をどう因数分解するか。100*20でもいいし、1000本*2%=2000でもよいわけです。

 ここで放送局としてはどうしたいと思うか。100*20で2000GRPを達成できれば、打つCMは100本で済みます。一方1000*2の場合打つCMは1000本。つまり同じ2000GRPを達成するのに、990本分も多く枠を使わなければいけないのです。1日の放送のうちCMに使っていい総時間は限られているので、そのぶん他の企業へ使えたはずの枠が減ってしまいます。

 つまり、放送局はなるべくCMを効率よく打つために視聴率の向上を求めるのです。

 しかし、このせいで視聴率至上主義になり、視聴率のためならなんでもやってよい、という考えまで行き着いてしまうのはそれはそれで問題でしょう。テレビ番組の存続にはある程度の視聴率は必要でしょうが、同時にテレビ番組には創造性も求められます。視聴率を稼ぐため視聴者に迎合した番組ばかり作った結果、テレビ局同士番組が似たり寄ったりになるだけでなく、視聴者を分散させてしまい結果的に視聴率が上がらないということもありえます。

 視聴率は大事だが、視聴率一神教になってはいけない。このテーマの章はそう締めくくられていました。

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