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令和2年国勢調査から見える愛媛県の状況 ~ひとり親世帯編~

最新の国勢調査 (令和2年 = 2020年) の結果から愛媛県の各市町の状況を見てみようと思い立ち、公開されているデータを基にいくつかの表を作ってみました。

前々回は高齢者について、前回は働き方についてのデータをご紹介しましたが、今回は”ひとり親世帯”に関するデータをご紹介していきます。


ひとり親世帯の20歳未満世帯人員数

愛媛県内各市町のひとり親世帯の20歳未満世帯人員数

20歳未満の「一般世帯の世帯人員数」のうち、母子世帯と父子世帯、他の世帯員 (祖父母など) もいる世帯とそうでない世帯に暮らす人数の割合を、それぞれ市町別に算出しまとめました。
「一般世帯の世帯人員数」とは、施設等に入所されている方を除いた人数を指し、集計方法の違いにより「人口」よりも多くなる場合があります。

この表を見ると、愛媛県は20歳未満の方のうちひとり親世帯で暮らす方の割合が全体的に高い (他の世帯員もいる世帯で全国7.9%に対して9.7%) ことがわかります。
この特徴は父子世帯よりも母子世帯において顕著です。
また愛媛県内でも地域傾向が見られ、他の世帯員もいるひとり親世帯の割合を見ると、南予南部地域の宇和島市 (13.8%)、松野町 (13.3%)、鬼北町 (13.2%)、愛南町 (15.5%) は特に高くなっています。
南予北部地域の八幡浜市 (11.3%)、大洲市 (12.0%)、西予市 (10.5%)、内子町 (11.8%)、伊方町 (11.7%) も、すべて10%を超えています。

この傾向の背景には様々な要因が存在していると思われます。
心理的な要因では、未婚のまま子どもを産むことへの意識や、結婚と離婚に対する意識の違い、配偶者の親族との関係性についての地域の“しきたり” (いわゆる「嫁」の役割意識等) などが関わっているのでしょう。
環境要因では、雇用者の賃金や職種による求人数の偏り、賃貸住宅の数と家賃水準、子育て支援制度の充実度合いなど。
愛媛県は全体的に雇用者の賃金が低い (2024年1月1日時点の最低賃金は897円、対して東京都では1,113円) 県ですが、その中でも南予地域は雇用者の働き口が賃金の低い業種に特に偏っている (製造業は少なく、卸売業、小売業、医療、福祉は多い) ため、暮らしに余裕のないことが婚姻関係の継続に悪く影響しているのかもしれません。
また、子育てしながら勤めやすい職種の求人が多かったり、家賃の安い賃貸住宅が多かったり、行政のひとり親世帯向け支援制度が充実していたりすれば、近隣地域からひとり親世帯が集まる要因になるかもしれません。

要因を考えることも大事ですが、より重要なのは対策です。
ひとり親世帯では、子育ての事情から勤めることのできる職種が限られ、貧困に陥りやすいと言われています。

また、様々な場における“両親の居る家庭が標準的”とされる言動が、知らず知らずのうちに子どもたちを傷つけているかもしれません。
こうした問題は、子どもたちの挑戦意欲を損ね、活躍の可能性を狭めることにも繋がります。
それは先々、高齢過疎化の進む地域の“担い手不足”を更に深刻化させる要因にもなるのではないでしょうか。


割合の比較と対策の関係

割合が比較的高ければ対策が必要になるのか、というと、それは少し違うんじゃないかと思います。
割合が低くても、困難に面するおそれのある方が1人でもいらっしゃるのならば、社会として対策を考えておくに越したことはありません。

ではなぜ割合を比較するのか。
それは、優先順位と予算配分を考える指標になるからだと考えています。
様々な困難に面するおそれを全て0にすることは、どれだけ労力とお金を注いでもできません。
その上で、困難に面するおそれの比較的大きい課題には優先的に労力とお金を注いでいくことでバランスを取りながら、様々な課題の改善に並行して取り組んでいく。
そのために統計データを見て、割合を比較し、地域の特徴を考えることが役に立つのだと思っています。


国勢調査を基にした連載はひとまずこれまでとしますが、引き続き統計などに表れる客観的な視点、そして暮らしの現場に表れる主観的な視点の両面から、社会の有り様を見つめていきたいと思います。

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