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残すべき伝統と伝統を変えること

残すべき伝統と伝統を変えること、もしくは良い伝統と悪しき伝統の違いはなんだろう。なんだと思いますか。

若かった頃はこんなこと辞めてしまえと思うことが多かったように思うが、最近はこれは良い伝統だし残していきたいと思うことも増えてきた。
歳とったのだと思う。


さて、子供の頃の夏の思い出といえばひとつに赤ふんがある
「赤ふん」それは赤いふんどしのことで、私が通っていた小学校の伝統のひとつだ。
その伝統も少し変わってきているという。


先輩からの伝承

私の小学校では毎年夏になると6年生が4年生にふんどしの巻き方を教えにくるという一大イベントがある。
ついにお兄さんたちの仲間入りだという喜びと赤ふんなんて恥ずかしいという気持ちが混じっていた。混じっていたといっても、9割恥ずかしいだ。

先輩たちは当然結び慣れているのでささっと1人で結べるわけだが、教わったばかりの頃は友達と協力し合わないと結べない。
結べないならまだいい。一見結べたように見えていざ泳ぎ出すと緩んで解けることもある。
先輩からのアドバイスを復習し、友達と確認し合っているうちに、夏が終わる頃には、固く解けにくく、そしてはみ出しにくいコツを各々習得していく。


遠泳

なぜ水着ではなくふんどしだったかというと、伝統ということもあるが、もう一つに遠泳が関係している。夏の水泳の最終目標は海での遠泳を泳ぎ切ることだ。

遠泳中に溺れそうになったり、途中でリタイアしたりする際、並走している船に引き上げられるわけだが、その際に海水パンツを引っ張ると破けてしまうのに対し、ふんどしならばその心配がない。思いっきり引っ張れるというわけだ。
実際ふんどしを掴まれ引っ張られている友達もいた。

しかしよく考えると実際には女子も一緒に遠泳はしたわけで、女子はもちろんふんどしではなく普通の水着だった。
女子はどうしていたかというと、腰紐と言って、腰に紐を結んでいた。赤ふんじゃなくても良いのだ。

長い距離を泳いだ後、海岸に戻ってくると体は当然疲労でいっぱいだが、赤ふんの体力もギリギリでゆるゆるになっている。人によっては完全に解けてしまっている。そんな時は一緒に泳いだ仲間たちが駆け寄り周りを囲みその子を隠す。隠している間に結び直すなんてことも良くあった。
赤いふんどしで結ばれた絆は固く一体感を生み出す。


奥義伝承

自分が6年生になると、前述のとおり後輩たちにふんどしの結び方を伝承することになる。
いざ結び方を見せると、「キャー」という悲鳴。
自分たちの時もこんな反応してたなという懐かしさと、自身の成長を感じたのを覚えている。

単に結び方を教えれば良いというわけではない。
解けない、はみ出ない奥義を教えなければならない。適当に教えて解けでもしたらきっと恨まれる。


変わる伝統

数年前からこの赤ふんは希望性になったと聞いた。
理由はわからない。

LGBTで服装が自由に選べるようになったことと同じように水着も選べるようなったのかもしれない。

保護者から「今時赤ふんなんて」と言った声もあったようなことも聞いた。

「子供にふんどし履かせるなんて」という外部の人からの声だったかもしれない。

理由は何にせよ、きっといつかはこの伝統も終わるのだと思う。

選べるということは良いことだ。
ただ、水着は小さい頃から履いているので馴染みがあるのに対し、赤ふんを履いた良さなんて時が経たないとわからないので、それで今選べというのはちょっと平等ではないかなとも思う。

赤ふんを履いた思い出は履いた者同士でしか共感できないし、履いた者しか作れない思い出もある。
同級生と会うと、いまも赤ふんの話が出ることもある。「あの時解けたよな」とか「ふんどし引っ張りあげられてたよな」など夏の思い出にちょっと赤色が加わる。そういうことがあるということを知ったうえで選んで欲しい。(小学生には難しいかもしれない)

保護者もその伝統があるのが予めわかっているのだから、それを踏まえたうえで学校を選択すべきであって、入った後に水着を選ぶのは後出しジャンケンのように感じる。

本人や保護者が赤ふんを選んだのであれば、外部の方はその選択を尊重すべきなのではないだろうか。

この赤ふんという伝統の場合、先輩から後輩に伝承していく段階があるので、伝承する者が残すべきと考えるならば伝承を続けていけばいいし、悪しき伝統だと思うならば伝承しないということで良いように感じる。

伝統が続き、今後出会った歳下の人と実は赤ふんの共通点があったといったことが起こることを期待したい。


余談

余談になるが、結ぶ場所も結び方も全く違うものの、感覚的にはネクタイを結ぶのに近い。
端っこをどのくらい余らすかとか、形が綺麗結べていると緩みにくいとか、人によってこだわりの結び方があったりする。
赤いネクタイを持っていないのは赤ふんを思い出すからかもしれない。

そして一度だけ家族と海水浴に行った時に、1人赤ふんを履いたおじさんを見かけたことがある。
プライベートで、しかも1人だけで、赤ふんを履くなんてなんて度胸だと驚いた。

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