ぼんくら|Twitter|詩集
「貴方のこと」
体温をした雪を抱きしめているようでした
「貴方のこと」
そんなに簡単にボクのこと、許さないでください
「貴方のこと」
そこまで追い詰められてはいなかったけど一緒に死のうなんていうことで
ひとつになれたと思った真夏の夜はどこを捜しても見つからないよ
なにもかも去って行くからサヨナラと書かれたいつかの便箋さえ
捨ててしまっても罪悪感を覚えることはないだろう
錆びたオルゴールの音色がする あの街にまだ住んでいるのだろうか
「貴方へ」
冬の終わりが編んだ華奢な風を
満月が地上に吹き降ろすとき
涙は乾き人は少しだけ優しくなれる
「貴方のこと」
許してほしいというボクを許せない貴女のこと、ボクは許したい
「0時過ぎのグッド・バイ」
今夜だけはちっぽけな哀哭に
身を委ねてもいいだろ
いつかはこんなことも
きっと忘れちゃうんだから
ボクらはいつからか
痛みや傷を分け合い
白の幕切れを願った
春は照れくさそうに
近寄ってくるけれど
幾つ季節が過ぎても
赦されない罪がある
枯れるまで涙を流し
荒れ狂ったあの日々
多くは望まないから
あなたはその地から
ボクはこの場所から
同じ月を眺めようね
言葉に出来やしない
気持ちを風に乗せて
「貴方へ」
まるっきり楽しくなかった今日は
ずっとキミに触れていたいんだ
「あんちゃんへ」
誰より荒くれな男は
ナイフを捨ててペンを持った
夜毎書き殴る詩は
泣きたいほど切なくて
センチメンタルが止まらない
Happy Birthday To U
いつまでもセクシー
そしてdandy
震えるような詩を読ませてくれ
「姉との面会日」
本当に明日は来るだろうか
陰日向なく往けるだろうか
恙無く呼吸出来るだろうか
あの人の病状が少し癒えて
微笑んでくれるのだろうか
貴方のたった一人の弟だと
思い出してくれるだろうか
「姉との面会を終えて」
面会に許された四十分の中で
差し入れのドーナツを食べて
美味しいねって言ってくれた
それ以外は何を訊いても無言
帰り際に貴女は眉をしかめて
また帰って来てねと微笑んだ
ここは貴女のうちじゃないの
姉貴こそ早く帰っておいでよ
なんて口には出せずにいたよ
枕元の小さなテーブルの上に
幼い二人の写真が飾られてた
フォトフレームに薄っすらと
綿ぼこりがこびりついていた
「貴女へ」
ジェリービーンズをあげるからその長い髪を撫でてもいいかな?
また泣いていたってもう二度と涙の訳を尋かないと約束するから
「ノクターン」
苦い後悔が微笑をもたらす時
遂げられやしなかった想いが
性懲りもなくまた翼を纏うぜ
自信はあるさ次は失敗しない
ドビッシーのシレーヌは誘惑
何度敗者となっても諦めない
挑み続ける僕を愚か者と笑え
「貴女へ」
サングラスなんて使い物にならないほど眩しくて二人焦げた夏を憶えてるかい
「貴方へ」
こころを取り出してこの眼で見たいと思った
陽のあたるベランダの丸いテーブルに置いて
もし不都合があればトースターでよく焼いて
バターを贅沢に塗って食べてしまいたかった
裸木が風を斬る
遠雷が夢を裂く
皆いなくなった
それでもボクは
今を歩き続ける
横一列に二人並んで同じ着地点を見ろって言うけどさ
ボクは向かい合って座り一晩中見つめ合いたかったよ
その人の小説をめくれば
黒人兵や百五十匹の犬や
死体や学生運動や混血や
戦争や墮胎や苦い静寂が
仄かに鼻をつくのだった
どの頁も多種多様が匂い
モノトーンで縁取られた
描写はもはや描写でなく
さながら現実を見ていた
僕は貴方が自死を遂げる
そう思って今日まできた
老衰で死んだと聞いたが
貴方らしくないと思った
バイトの帰りには書店で
著書を一冊買おうと思う
大江健三郎さんサヨナラ
どうしてこんなに悲しいのと総武線の高架下で思わず口に出してみたよ
硬いオルガンの音をした車両が通過する時にいつか消えるよと聴こえた
うん、人生そんなに長くはないんだからねとぎこちなく笑ってみたんだ
挫折は罪じゃないんだよ
到達するまでの寄り道さ
何度でも寄り添うからね
飽きるほどに悩めばいい
見上げた空の青、蒼、碧
何故こんなにさみしいの
狭く急勾配の螺旋階段だけど二人手を繋ぎ上っていると信じてた
ひと晩中スマホを握りしめていた
もうじきサクラの時期だというのに
夜明けになっても電話はこなかった
私たちはひとり残らず何度も気づくはずだ
私たちはひとり残らず死んでしまうことを
私たちはひとり残らず真の孤独へ戻る前に
思い遣りを使い果たそう未来の子のために
March 16, 2023
この世でたったひとりの人
魂の片割れだと思ってた
愛はダッチロールして
2人ボロボロになった
空が割れ
夜は欠け
街は死んだ
オレの確かな日常
…still only u
ただいまー そっか おかえりーと言ってくれる人が昨日いなくなったんだ
ひとりの部屋では冷蔵庫がブイィインと鳴いているので
ハモるようにボクもシャララァなんて泣いてもいいかな
一人の夜は2日目だけどさ
自由過ぎて身動きがとれないよ
静か過ぎて上手く呼吸出来ないよ
壊れた夜に観るフランス映画の主題歌が哀し過ぎて罪だよ
共依存から抜け出すには僕が部屋を出るしかなかった
「リバティはもう要らない」
ドグマに背き手に入れた自由なんてもう要らなくなったよ
「さくら舞姫」
夏を超え 秋を過ぎ 冬を耐え 舞姫よ お前の季節だ 強く儚く美しく
「サクラ咲いたね」
頬がよければくっつけよう
腕がよければ肩を抱くよ
指がよければ絡ませる
胸がよければおいで
サクラが咲いたね
唇がよければ…
「Dear」
あなたこそを支えたい
傷だらけのダンディよ
孤独を操るダンディよ
いつも守ってくれるね
その強さは祈りに似て
広くあまねく降り渡り
胸が温かくなるのです
わずかでもかまわない
あなたこそを支えたい
それが私達の望むこと
「雨の午前5時」
アスファルトを叩くのは雨
ワルツのリズムを奏でる雨
踊る相手も見つからずに雨
ピエロの涙は見えるのに雨
「首都高の夜」
間に合わないよ
キミにつながる
湾岸ハイウェイ
ガラス細工の夜
「メタンフェタミン」
大いなる悪は魅惑的な香りを放ち
良き仲間の姿をして近づいてくる
まやかしに魂を射抜かれるな君よ
その肩に置かれた好意を振り払え
「元気でいますか」
ありったけの想いを掌に乗せ
ふーっとそれを吹くこの息で
ねぇ穏やかに眠れていますか
「一期一会」
太陽は見つからないけど貴方達ふたりに出会えて良かったわ
永遠の孤独を耐えるには 独りきりじゃさみし過ぎるからね
僕らがイルカだった頃 人魚はそう言ってまだ上を目指した
「Good Luck」
夏草が匂う
胸騒ぎ消え
遠く微かに
波音は響く
太陽は傾き
影は伸びて
夏待ち人よ
大地を往け
振り向かず
「soon」
若さという武器など
すぐに使い古すから
満月の夜は宙を眺め
青いソーダを飲もう
季節ごとの風を脱ぎ
海の底で語り合おう
「pain」
ハートに刺さる細い棘
抜いたら終る何もかも
傷みは証と言ってくれ
「ティアーズ」
凪の夜明け 青紫に抱かれ 泣いたことなんて誰も知らない
「黒」
すれちがう殺気 街角の狂気 魂の疼き 最後の悪あがき
六弦のアルペジオが奏でるノアールは何色にも染まらない
「教え子さんへ:短歌3編」
惜別の さやけき声は 旅立ちの
エールの如し 吾振り向かず
学舎に 差し込む光 金色に
包まれ泣いた 夢かみしめて
揺籃の しばし影なる 逆境を
越えて叩くや 友の背や肩
「瓶詰めにした宇宙」
小さな硝子瓶に
詰め込んだ宇宙
明日の見舞いに
持って行きたい
姉の好きだった
星空と夜の匂い
「最期の見送り」
残照と夜の境目が美しく観える部屋は海辺にあった
主の老人は毎日毎日その刻がとても待ち遠しかった
もう待たなくてもよい日に限って午後から雨だった
残照と夜の境目は主の死に寄り添い天国にいたのだ
「Roses ballad」
ギザギザに傷つけばいい バラ一輪添えて哀しみをバラードにするから
「書き置き」
人生の迷子さんへ
昨夜はよく眠れましたか?
急用で先に出掛けます。
朝食をお腹いっぱい食べたら、
また寝るのも良し、本を読むのも良し、
風に吹かれるのも良し。
憐れんでなんていませんよ。
誰もが何度か通る道ですもの。
焦らずに、急がずに、慌てずにね。
大丈夫ですよ。
スタートラインならいつも、
あなたの足下にありますからね。
「seize the day」
一瞬で消える
大輪のひかり
ねえボクらも
泡沫夢幻だね
いまのうちに
キスをしよう
「藤の花心中」
垂れ下がる藤の花の隙間から木洩れ日が降る昼過ぎなら
キミのナイフで心臓を一突きにされてもいいと想うんだ
いつか滅びる命
無常の風が舞う
キレイだったと
今ここに記そう
幾度となく僕は
救われたんだと
今やはり記そう
涙の様な星々よ
「virgin blood」
蒼い果実の香り 今宵は潮が満ち 蚊帳の中の二人 色、纏いました
濡れていました 月、赤く染まり 泣いていました たゆたうように
「Alone」
烈しく灼けた砂浜の思い出を食べ尽くせば果てしなくアローン
痛みと醒めた肌が僕を置去りにする、その夏の色濃い斜陽へと
「gone」
ボクは途方に暮れている
貴方は目を開いたままで
途絶え、尽きて、終わる
ボクは途方に暮れている
緯度と経度のない場所で
ボクは途方に暮れている
「無言」
横なぐりの哀しみは鮮かに
死者と生者を引き離すから
否応なしに貴方の手を握り
冷たくなるのを待っていた
「ヘヴンズ・ララバイ」
貴方の亡き骸が
横たわっている
鎮魂歌じゃなく
子守唄を歌うよ
寄り道などせず
天国の扉を叩け
戦いは終わった
ここで見送るね
「よわむし」
何も尋かず泣かせてくれますか
キミの細い肩に顔をふせたまま
頼りないボクの背中を日暮れが
追越してく今、貴女に会いたい
「争いの爪痕」
あなたにカゾクはいますか
トモダチになってくれますか
「ペーパームーン」
夜になれば
飽きもせず
空を見てる
貴女だった
窓際の壁に
折り紙の月
褪せた金色
かなしくて
いとしくて
眠る棺の中
しのばせた
「終わりのない歌」
行き先も告げず透き通る卯月に背を向けたキミを見ていたよ
信じたいために疑うなんて糞ったれだとその時わかったんだ
眩しすぎる後ろ姿に命がたぎっていたから何も言えなかった
旅の途中で孤独に会えたら終わりのない歌を唄ってください
poem : ぼんくら ~ waiting ~
Twitterの有料化に伴い
『詩人 ぼんくら』の垢が
削除される可能性が強くなった為
誠に勝手ではございますが
保存版としてここに転記させて頂きました
ご理解のほど宜しくお願い致します
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