見出し画像

BOOK REVIEW ❽:21世紀型スキルとは何か〜コンピテンシーに基づく教育改革の国際比較〜

国立教育政策研究所の統括研究官をされている松尾智明氏の著書。21世紀コンピテンシーに関する世界的な流れ(PISA/P21/ACT21sなど)と世界各国におけるコンピテンシー教育改革についての国際比較と、日本への示唆が書かれています。

個人的に学ぶことがとても多かった一冊で、再読したいと思いますが、取り敢えずは今の段階で理解した事や、面白かったことをメモしておきます。

取り扱われていたのは以下の国々。
・イギリス
・ドイツ
・フランス
・フィンランド
・アメリカ
・カナダ
・オーストラリア
・ニュージーランド
・シンガポール
・香港
・韓国

どの国においてもすでにコンピテンシーの育成を目指した教育が国レベルでも現場レベルでも始まっており「コンピテンシーに基づく教育改革は世界的潮流」化しています。特に以下の2つの流れがあります。
❶OECDのキーコンピテンシー
❷21世紀型スキル

ヨーロッパはOECD傾向、アメリカやカナダは21世紀型スキルの傾向が強いようですが、アジア圏は両方の影響を受けていたりと、どちらか一方をとるのではなく、両方の基準と各国の状況を鑑みている。

注目すべきは各国で育成が目指されている資質・能力の構成要素が以下の3つに整理されると指摘している点です。

1. 基礎的リテラシー:リテラシー、ニューメラシー、ICTなど言語や数、情報を扱う
2. 認知スキル:批判的思考力、学び方の学び
3. 社会スキル:社会的能力、自己管理能力

21世紀スキルとしての位置づけ(どの段階で明記するかなど)、現場の裁量、そして、もちろん内容も各国の現状や歴史に応じたものになっていますから様々で面白です。またどの国も、評価の体制を整える努力があったり、専門の評価機関や調査機関を立ち上げたり、教員の資質の向上にも力を入れているあたりが面白いなと感じました。

この国際比較を見ていても、日本は、国際人材の育成に出遅れている感がやっぱり否めません。世界では全市民教育として21世紀型の教育が始まっているのにもかかわらず、グローバルスタンダードの教育を今だに、スーパーハイスクールとか私立とかだけに任せている点も問題です。

こういうことを現場で言うと先生方は自分たちのやっていることを正当化したいので、世界の真似をしなくてもいいとか、日本には日本にあったやり方がある的なことをおっしゃる方がいます。それはごもっともですが、だからと言って現状の教育がグローバルスタンダードではないことを見過ごしてはいけませんし、どのような力をこれから生徒につけさせていけばいいのかを問い続ける姿勢はこれからさらに大事になって行くでしょう。

最後に、この本の中に書かれていた日本の「新しい教育システムの革新に向けて」のTo Do Listを個人的リマインダーとしてここに残しておきます。私は細かいことは苦手なので、②と③は興味がないのですが、①と④はいずれかの形で将来貢献できたらいいなと思っています。

①育みたいコンピテンシーを明確に定義する。
②それを元に教育課程をつくる。
③教育課程に対応した評価システムをつくる。
④コンピテンシーを育てる教育実践を促す支援体制を整える。


この記事が参加している募集

読書感想文

Teachers of Japanではティーチャーアイデンティティ (教師観)の発見を通じて日本の先生方がもっと自分らしく教育活動に専念し本来は多様である「教師」の姿を日本国内外へ発進しています。日本の先生の声をもっと世界へ!サポートいただけたら嬉しいです。