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【企画参加】鳥獣戯画ノリ②

『海苔を護摩壇前に置き、一晩真言を唱え続ければ鳥獣戯画海苔は完成する。それを食せば願いは叶う。』

来年の受験に向けて合格必勝の鳥獣戯画海苔を作りたいと言うと、住職は心得たように頷いた。

護摩壇前に海苔を供え、木を焚べながらジャラジャラと数珠を鳴らす。重低音の声で一通り唱えた後で、住職は自分の言った言葉を繰り返すようにように促した。

「ノウマクサンバンダバサラ ノウマクサンバンダバサラ ノリノリノリノリ ノリノリノリノリ」

唱えるたびに住職の頭が左右に振れる。真言のリズムに合わせ首がズル、ズル、ズルと長くなる。

「ノウマクサンバンダバサラ ノウマクサンバンダバサラ ノリノリノリノリ ノリノリノリノリ」

住職の伸びた首がリズミカルに上下に揺れながら床をずりずりと這い回る。そのまま僕らの前まで来るとニュイと鎌首をもたげた。口から裂けた舌がちろちろと覗いている。

逃げようとしても体が動かない。すでに僕は蛙に、瑛太は兎になりずり落ちた衣服の中でもがいている。

鳥獣戯画海苔が愚か者を誘き寄せるための方便だと知った時にはもう遅かった。住職は真言を唱えながらますます激しく頭を振る。

僕と瑛太は動けないまま立ち竦む。僕らは食われる。全てはノリが悪いせい。

                 (終わり)

*次の企画に参加させていただいています。

①の別バージョン(裏バージョン?)です。話が作れず七転八倒する様をおわかりいただけただろうか…?

字数をこれ以上削れず。難しいね😓







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