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擦り切れるまで読んだ細雪


小説はあまり読まないのだが、どういう訳かこの谷崎潤一郎の細雪だけは、繰り返し読み続けた。
谷崎ものの他のも読んだのかと言われれば、多少は読んだけど、気に入った作家さんが見つかると次々別のものも読み漁る傾向があった割に、谷崎潤一郎の作品を全部読む、なんてことはなかった。

この小説、特に何が起こるわけでもなく、戦前の大阪のリッチな商家の姉妹の日常がただ、タラタラ書いてあるだけで、縁談だとか花見だとか、さして面白くもないようなことが長々と続いていくのだが、それが不思議に面白いのである。
これは谷崎潤一郎のあの流れるような文章力に寄るものなんでしょうか。
一行読み始めると、ズルズルと切れ目なく続く文章に一気に物語の中に入ってしまう。吉本とは違う大阪のことばも魅力の一つ。
本がこんなになるまで読んだものだから、ここに書かれていることは全て覚えている。 どこから読んでも面白い。
開いたページの1ページごとに自分なりの映像が浮かぶ。
文字が全て映像になって現れる。

こんなふうに破れてきたので新しいのを買ったが、なんだか馴染みがなくて、一旦捨てようかと、本の中に落書きまでした本だが、今だに読みたい時はこの本で読んでいる。

たくさんの本を読んだというわけではない。最近はどんな作家さんが活躍しているのかさえ知らないが、一冊の本をこれだけ読んだ、ということに満足している。


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