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日本に暮らすパレスチナの人。サマーさんに聞いてみた日本のこと、故郷のこと

哀愁の塊のようなカバー写真の彼女。日本で大学院生として2年間を過ごし、今まさに帰国直前のサマーさんです。背景が黒なのとぼやんとしたエフェクトのおかげで私にはプリンプリン物語のように見えるんですが、取材したときはラフな格好でくだけてらっしゃいました。

江戸川沿いの長い散歩帰りのなか、オンライン取材に応じてくれました。

日本での暮らし

さて、たまたま縁があって日本に留学に来たサマーさん。パレスチナと違い、道端での人の交流が少ないなぁと寂しく感じつつ、日本の

・自由があって、安全なところ
・すごく親切な人がいること
・手仕事の文化、着物

に親しみを覚えてくれています。そして、海!
年中海を見に行くそうです。お気に入りは逗子公園とか、葛西臨海公園。あまり海がきれいなイメージが無いというと、ぜひおいで!と日本人なのに逆に勧められました。

パレスチナでの暮らしと仕事

彼女の生まれた場所はクウェートですが、人生の一番長い時間を過ごしているのはパレスチナ西岸のナブルスという町。パレスチナの定番スイーツクネーフェの発祥地で旧市街には元祖のお店が残り、観光客に大人気。石鹸が特産で、昔ながらの工場が今も稼働しています。町は大きな山に挟まれた谷間にあり、占領政策で山にはあまり家を建てられないために市街地がぎゅっっと密な状態です。サマーさん、

山の環境が守られるという意味では・・・いい?笑(意味深)

ナブルスをはじめとして、パレスチナはオリーブや柑橘類がたーくさん採れるよとサマーさん。パレスチナ産の柑橘類、アボカド、そしてガザのいちごが近隣のシリア、レバノン、ヨルダン、サウジアラビアに輸出されているそうです。日本まで来ないのが残念!

サマーさんは6人兄弟で(やっぱり多い)、ナブルスの家は古い家を増築した古きと新しきが融合した建築になっているそうです。家族が増えると自分で家を拡張させるのがパレスチナ流ですね。パレスチナにいた頃は仕事が忙しく料理はしてなかったそうですが、留学してするようになり、今ではオンラインで初対面だった私に「家に来て!パレスチナの家庭料理をふるまうからね~」と言ってくれるほどに。

気軽に家に呼んでくれるこの感じ、パレスチナの人だなぁと思います。

大学を卒業したあと、英語の先生→法律事務所→国連機関ORCHAへ。この機関でサマーさんは故郷ナブルスを含むパレスチナ西岸北部の人権侵害を調査・報告して必要な人道支援のコーディネーションをする仕事をしていました。
ーきつい仕事じゃないですか?私にはできない・・・

家屋破壊、オリーブの伐採、入植者の暴力沙汰の現場(※)に行って聞き取りをして、証拠を残す仕事。私たちがそうすることで、写真や数値を残し、いつでも裁判に持ち込めるようにする。意義を感じていたし、好きな仕事だった。

※パレスチナの内部にはイスラエルの飛び地が占めています。その周辺でパレスチナの人の家が破壊されたり、オリーブの木が狙われたり、飛び地の住民から暴力を受けるケースを指します。

刺繍の喜び

パレスチナと言えば刺繍。サマーさんとも刺繍の話で盛り上がりました。

パレスチナは紀元前から刺繍文化のある地域。

サマーさんは7年生(中学生)のときに授業で刺繍を教わり、自分の作品を先生が気に入って展示してくれたことがきっかけで刺繍にハマりました。中学高校と忙しく刺繍から遠ざかったものの、16歳の時に経験した戦争のロックダウン下で再び糸を手に取るように。働き始めてからも、冬に雪嵐で自宅勤務になったときには刺繍をする習慣がつきました。

パレスチナの文化では、伝統的には刺繍はお母さんから教えてもらうものですが、サマーさんの家ではお母さんは刺繍をしなかったし、おばあさんは歳を取りすぎていて教えられず、という環境だったそうです。でも刺繍の出来る親戚のおばさんたちからはプレゼントを貰い、今でも大切に身に着けているそうで。

色々あっても、刺繍をさしているとすっと穏やかな気持ちになる。

と彼女は言います。

ー古いモチーフもまだ使ってますか?
混ぜているかな。伝統的には海にいる虫から取る赤の染料が主要な色だからよく使うけれど、例えば虹色のモチーフのように、自分のアイデアを加えたりもする。国際化が進んでいるけれど、古いものもちゃんと継承していると思う。

ー観光客として、自分が文化をだめにしてるような気がするんですが・・・
刺繍はフレキシブルで、なんでもできるのが良い所。観光客の需要という新たな側面に適応しているだけだから安心して笑。

パレスチナの刺繍は地域によって全部違っていたんだけど、出身地のナブルスのものは一番刺繍が少ない笑 昔の女の人は農作業で忙しくて、刺繍を施す時間が無かったから全然華やかではないのよね。

日本とパレスチナの共通性

着物も年齢で袖の長さが変わったりするよね。パレスチナも女性の年齢や結婚の有無で刺繍の色や量が変わったりしていた。
どちらにも、手仕事を大切にする文化があると思う

着物が好きなサマーさんはパレスチナでの卒業パーティのためにばっちり揃えているそうです。

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ーパレスチナでは西洋風のドレスが安いし人気で、若い人はあまり刺繍の施された伝統衣装を着ないイメージがあります

経済的に厳しいというのと、後は実用性。実際、歩き回ることを考えたら動きにくい民族衣装よりもズボンを選ぶでしょう。(伝統衣装は)特別な日の晴れ着に着たいと思うかな。でも、叔母が作ってくれたような、刺繍のトップスならどこへでも着ていける。決して、古いものが大切にされていないのではなくて、ぜいたく品になってしまっているだけ。でも自動で刺繍する機械なんかも出ていて、本来の味を損ねていると思う。

伝統文化の立たされている境遇はどこも共通するものがあります。

さて、彼女が日本に抱いた印象、パレスチナでの暮らし、刺繍への思いなど、ここまで綴ってきました。

サマーさんの話をもっと聞きたい、直接しゃべりたいという方は、リンクからイベントへの参加申し込みが可能です。28日の金曜日夜、オンラインで登場してくれます♪(イベントは終了しました)

また、彼女の経験した戦争のこと、思いなどを有料ゾーンに設定してお話します。書くかどうか迷いましたが、彼女が話してくれたことであり、良いことも悪いこともあって彼女がいるので、分けて出させていただきました。

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架け箸はこれからも継続的にパレスチナを訪れ、日本に出回らない生の情報を発信したいと思っています。いただいたサポートは渡航費用や現地経費に当てさせていただきます。