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【令和6年初春文楽(前編)】平家女護島、伊達娘恋緋鹿子

 2024年1月7日(日)、大阪の国立文楽劇場で文楽を観ました。令和6年初春はつはる文楽公演です。いくつかの演目を観ましたが、夕方から開演される第3部を中心に記録を残します。

■初春文楽公演概要

(1)開催期間と場所

  • 期間:2024年1月3日(水)〜1月22日(月)

  • 場所:国立文楽劇場@大阪

(2)演目

  • 第1部(午前11時〜):七福神宝しちふくじんたから入舩いりふね近頃河原ちかごろかわら達引たてひき

  • 第2部(午後2時30分〜):伽羅先代萩めいぼくせんだいはぎ

  • 第3部(午後5時30分〜):平家女護島へいけにょごのしま伊達娘恋緋鹿子だてむすめこいのひがのこ

(3)記載にあたって

 私は関東に住んでいるのですが、今回の文楽公演の演目は(私にとって)初めてのものばかりで、どうしても見たく、朝早く東京駅を出て大阪まで行って来ました。
 しかし、朝早く出たこともあり、疲れから第1部と第2部は結構眠ってしまいました(涙)。
 そのため、第3部が記事の中心になります。第3部は一番楽しみにしていたこともあり、目もパッチリして観ました。
 昨年の後半ぐらいから思うのですが、もう少し1つ1つの作品を大切にしないといけないな、と思います。新年からの反省点です。

■今回の第3部について

(1)あらすじなど作品概要

 1つ目の演目『平家女護島』(鬼界が島の段)は、平安時代後期、平家への反逆の罪を問われ、配流された俊寛僧都の話です。文学作品としては、『平家物語』や能『俊寛』がベースとなっています。
 2つ目の演目『伊達娘恋緋鹿子』(八百屋内の段、火の見櫓の段)は、天和3年(1683)の江戸本郷で、前年の天和の火災の際、避難先の寺で出逢った寺小姓との再開を願って放火した八百屋お七がベースとなった話です。文学作品としては、『好色五人女』に含まれます。

(2)感想

 私は、どちらの話も知っていたのですが、それぞれ、主人公(俊寛、お七)の情熱(Passion)が感じられるような気がして、以前から舞台で観てみたいと思っていました。人生の極限状態で決断を迫られるというか、本音が覗くというか。短編であるが故に、それぞれ人生の重要なひとコマを切り出したを作品のようにも思えます。今回、見ることが出来て良かったです。

 また、それぞれの舞台セットも、シンプルながら(シンプルであるが故に)印象的でした。
 『平家女護島』では、去りゆく船を前に、最後俊寛は岩に登ります。今生の別れとして船を見送る一方、もう少し生きてみようと思う(悟る)、三島由紀夫の『金閣寺』のラストに通じるような気もしました。
 『伊達娘恋緋鹿子』では、雪が舞い散るなか、お七が凍てつく櫓を登って行きます。(冒頭の写真は、展示室に展示されていた火の見櫓です。)人形がどのように登っていくのか見るのも楽しみでした。また、急いで登ろうとするのと、寒さから、お七が吐き出す息も感じられるようでした。

(3)引用

 床本より引用してみます。(引用しつつ『平家女護島』では、俊寛から引用すべきだったかもと思ったりしました。)

鬼界ヶ島に鬼はなく鬼は都にありけるぞや

『平家女護島』千鳥の台詞より

鐘を打つたるこの身の科、町々小路を引き渡され、焼き殺されても男ゆゑ、ちつとも厭はず大事ない。思ふ男に別れては所詮生きては去ぬ体、炭にもなれ灰ともなれ

『伊達娘恋緋鹿子』お七の台詞より

■最後に

 今回、第3部を中心に記載しましたが、配信動画なども見て(動画配信前に気づいた部分だけでも)書けたら、第1部や第2部についても書いてみたいと思います。

追記:後編を書いてみました。こちらも、よろしければよろしくお願いします。↓

 もうすぐ関東の自宅に戻れそうです(日帰り)。強行スケジュールだったので、次回はもう少し考えようと思います。本日は以上です。

国立文楽劇場外観
書と鏡餅とにらみ鯛
芝居絵(長谷川貞信)

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