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マンチェスターユナイテッドという鍋@マンチェスターユナイテッド対フラム

 クレイブン・コテージで行われたフラム対マンチェスターユナイテッドの試合は、後半アディショナルタイムにブルーノ・フェルナンデスが値千金のゴールを決めて、ユナイテッドが勝利した。

 ラスト10分ほどは見応えのあるものだったが、それ以外は実に心拍数の上がらない試合だった。

 相手を抜き切ることのできないユナイテッドの両WGと、シュートまでいけないホイルンド。
 10番がベンチ外という状況は、誰かがエースに躍り出る絶好のチャンスでありながら、今日のFW陣はそれを活かせない。
 アントニーにいたっては、ほとんど仕事ができずにいた。

 中盤はブルーノもなかなかエンジンがかからず、マクトミネイが推進力をみせるという構図。エリクセンに関しては変わらずビルドアップに貢献はするものの、キーパスを提供することはできていなかった。

 一方の守備陣だが、彼らには及第点が与えられて然るべきだろう。相手WGのウィリアンに何度か危ないシーンはつくられるものの、久しぶりの無失点は今後のチームにとってポジティブな影響を与えるものだ。

 個人的にはマグワイアの姿勢に賛辞を送りたい。

 前半早々に脳震盪のような症状をみせ、その後の出場は困難かと思われた。しかしそこらかも積極的に身体を張り、何度も縦パスを供給することでチームにリズムと安定感を与えていた。
 身体が危ない状態での強行出場はあってはならないことだが、今日の彼のパフォーマンスにはかつてのキャプテンであった時と似たものを感じたファンも少なくはないはずだ。

 ワンビサカも攻撃時の貢献こそ少ないが、やはり守備時にみせる彼の安定感は、いまのユナイテッドにとって頼りになるものだ。
 そして相変わらずダロトは豊富な運動量とユーティリティ性の高さで、攻守ともに与えられた役割を実行していた。

 今日の試合。実況の倉敷さんの言葉が印象的だった。

 「弱火でじっくりコトコトやっている」

 その言葉通りの試合内容で、アディショナルタイムの得点はまさにマンチェスターユナイテッドという鍋が吹きこぼれた瞬間だった。

 鍋はどんなに良い食材が揃っていようとも、熱い火の上で煮込まなければ意味がない。
 火が通りやすい食材、通りにくい食材。すべてが同じ鍋のなかで共存していて、食べ合わせなんかも考えはじめると、少々めんどうくさい料理である。
 
 しかしそれでも、寒い冬を越すために私たちは鍋を食べる。

 そして鍋が煮え立ち、とうとう吹きこぼれたとき。そっと蓋を開けると、そこには私たちの身体を熱くする最高の食材たちが、グツグツと武者震いをしているはずだ。

 これからの冬。そんな鍋を期待して、いまは煮え立つのを待つとする。

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