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久しぶりの日本、初めての日本での少年サッカー体験。12歳が肌で感じた大きな違い

コロナが世界的に蔓延してから早行く年、私たち家族も2019年に一時帰国の予定がキャンセルになって以来ずっとチャンスを伺っていましたが、ヨーロッパ含め海外から日本への一時帰国者への門戸はしばらく閉ざされたままでした。

2022年になって、ようやくワクチン証明・PCRテスト陰性証明を持って入国ができることになりましたのでおよそ3年半ぶりに日本で夏を過ごすことができました。

帰国するにあたり、結構長く滞在できることになりましたので知り合いの元サッカー選手に日本で練習参加ができるようなクラブはないか聞いてみたところ、いくつかクラブを当たってみると言っていただきました。しかし長男は日本に帰ってまでサッカーしたくないわ、ということで。次男は普段から見聞きしている日本のレベルがどんなものなのか、興味があったようで参加の方向でお願いしました。

聞いたところによりますと、コーチネットワークで聞いてみたが、コロナ感染対策の問題もあり、ましてその当時ニュースなどで欧州で感染者爆増などど言われていた状況下でなかなかJクラブのユースは受け入れてくれないようでした。それでも一つのクラブは最後まで検討していただいたそうなのですが、いかんせん関東のクラブであり、我々の帰る関西からはさすがに移動距離が長すぎるということで大変申し訳ないですが今回はお断りをさせてもらいました。

しかしながら関西にある地域クラブの強豪2チームから良い返事をもらえたそうで、一つは全国大会などにも出場されているクラブ(仮にAクラブとします)、もう一つはまだ新しいクラブながらOBにプロを複数輩出している人気のクラブ(同Bクラブとします)ということでした。

日本でのサッカーを体験するにあたり、まず考えたのはコンディションの違いです。気温はドイツもこのところ37℃に上がる日があるなど、暑さは同じなのですが湿度は全く違います。地面にしても、彼らは土のグラウンドでサッカーをしたことがありません。ドイツでは天然か人工芝がほとんどですが、ただ子供が使う芝のグラウンドはクラブによって全く質が異なり、水気が多すぎて粘土のようになっていることも、また、地面が凸凹すぎてパスがあちこちに跳ね回るような場所もあります。それでも、土でやることはまずないので、土用のスパイクを買ったほうがいいのかな、などと考えたりしていました。

気温は36℃、人工芝

まずは一つ目のAクラブ。指定された住所に向かうと、ものすごい人混み。なんとその日はたまたま、パリサンジェルマンが大阪に来て試合をする日で、練習会場はそのスタジアムの横の人工芝フィールドでした。試合時間よりもずいぶん前だと思うのですが、行列の間をくぐり抜けるようにしてフィールドに向かうとそれと思わしき小学生の子供たちがパラパラと集まってきていました。

コーチらしき大人の方の到着を待って挨拶に行くと、どうやら私の知り合いがコンタクトを取っていた方はまだいらっしゃっていないということで、自己紹介をしたのですが話は通っていなかったようで、割とピンと来られていないようでした。それでも外部からチームに練習参加に来られることはよくあることらしく、そしてそのような場合もオープンに受け入れられているそうで、次男に関してもすんなりと参加を許していただきました。

その後フィールドが空くまで20分ほど傍で待っていたのですが、何しろ暑い。暑いです。汗が止まりません。久々に感じる日本の夏。アスファルトの上で逃げ場がありません…。次男もきっと暑いだろうと思いながら、私と同じように付き添いで来られているであろうご父兄も大変だなあ、と思って待っていました。

さて次男は中学生・小6グループに振り分けられ、練習が開始されました。子供たちは幼稚園から中学生まで、幅広い年齢層が広いフィールドのそこかしこで学年で分けてそれぞれのメニューをこなしていきます。予想していた通り、次男は練習の中でリフティング時はだいぶ苦戦しているようでした。そしてみんなとても上手。

その後グループでミニゲームが始まると、次男は見るからに暑そうにしながらサイドハーフのポジションに入ります。傍で見ていて、みんなとてもドリブルやボールの持ち方が上手いのですが、パスはなかなか出さないのでそういう約束事でもあるのかな?とも思いました。象徴的だったのは次男がハーフライン付近でボールを受けた際、ゴールキーパー役の子が前に出てきていたのでロングシュートを決めたのですが、その瞬間チームに微妙な空気が流れているのが伝わってきました。次男曰く、『ボールを蹴らなきゃ点は入らないでしょ?』ということらしいのですが。

その後低学年の練習終わりに従いコートを広くしてまたミニゲーム形式で練習です。まあ日本の子供たちの走る量も素晴らしく、皆なれた様子でコートの端から端まで走り回っていました。次男はヘロヘロになって、最後は完全に足が止まってしまっていました。真っ赤な顔をして帰ってきましたが何やら不機嫌な様子。聞いてみると

「あいつらサッカーわかってない」

という答えが返ってきました。次男がタイミングを見てサイドで仕掛けようとしたり、ワンツーで抜けようと動いても誰もパスをくれないので全く攻めにくかった、ということでした。それは確かに見ていて私も感じたのですが、最初にコーチの方が言っていたように、個人が上手くなることを目標にしているということで、個人技を重視されているのかな、と思うところでした。

練習が終わり、コーチにお礼に伺ったのですがコートの後片付けでお忙しそうで、しかも人混みがとんでもないことになっていましたので、早々に引き上げる必要があり次男が挨拶をしただけで私は挨拶をさせていただくことができませんでした。ただこの規模の練習を1人で回しているとなると、あまり見ていただけなかったかな、とも思いました。

大会に参加、雨の人工芝

次に参加させていただいたBクラブは、試合をするのでそこに参加するのであればウェルカム、というちょっと驚く条件で参加を許していただきました。どうやら練習の中でもAクラブのようにリフティングをさせたりというはあまり無く、実戦を重視したプログラムで指導されているようでした。たまたま、義理の姉の知り合いにそのクラブに所属している子のお母さんがいらっしゃって、わからないところを色々と助けていただきました。

実はAクラブで練習するにあたって、夏場の人工芝で練習をすると地面が鬼のように熱くなり、足の裏が熱いので白い底のスパイクがいいとアドバイスを貰ったのでせっかくだからと日本のメーカーさんの白いスパイクを買って行ったのですが、ガッツリ両足踵に靴づれを作ってしまいました。合わない靴をぶっつけ本番で使うものではないですね…。Bクラブの練習までは一週間ほどしかなかったため、慣れたドイツから持ってきたスパイクに、踵に絆創膏貼りまくっての参加です。

その日は複数のチームが集まっての練習試合大会のようで、さまざまなチームと対戦できるのは楽しみでした。とても気さくなコーチともご挨拶させていただき、快く受け入れてもらえました。

試合が始まってみるとまず守備の形が違うことがよくわかりました。次男が腕をガッサーと相手の前に差し込んで、体をぶつけながらボールを奪いにいく形に対して、クラブの子供たちはどちらかといえば複数で囲んで相手を追い込むスタイルです。次男はこの試合はツートップの片方で参加していましたが、何度か前からボールを奪ってゴールまで行く形が見られました。

次に気がついたのがフィールド上での声です。ドイツでずっと言われてきたのは、フィールド上で戦う姿勢を見せない子はダメだ、であるとか自分がプレーしていない時でも声で味方を助けることができる、などトレセンやセレクションで言われつづけた結果、次男はフィールド上で声を欠かすことはありません。当然日本でやるにあたっても同じ感覚でプレーするのですが、思いのほか子供たちの声は少なく、それに対してフィールド内外から(審判はコーチが交代で行われていて、中からの指導もありで試合は進みます)のコーチの指導が響き渡ることが大きく違っていたと思います。

雨上がり

Bクラブはいいチームで、堅守速攻、しっかりした守備から勝利を積み重ねていました。子供たちもとても暖かく次男を受け入れてくれて、お約束の『ドイツ語でなんか喋ってみて!』攻めにあったらしいのですがあっという間に仲良くなったようでした。ただ、対戦相手に苦手意識があると子供たちが目に見えて萎縮し、点を取られるとシュンとしてしまう姿が見られました。

途中雷雨により一時中断というアクシデントがあったものの、朝から昼過ぎまで3−4試合に参加させていただきました。本来は2日間の大会であったらしいのですが、次男の靴づれがひどいことになってしまっていたこと、そして体力面でも無理することもないということで、コーチと相談させていただいて翌日には参加をしないことで了承いただきました。

一点、側から見ていてどうしても気になったのが一部のチームに見られたコーチの怒号です。コーチが怒鳴ることはドイツでもありますが、日本語なので余計に気になってしまったのかもしれません。指導というよりどちらかというと精神的に追い詰めるような、

「そこで何してんの?自分がしてることわかってんの?」

「こらハゲェ、何遍も言わせんな!」

「お前ら外で試合終わるまでダッシュしとけ!」

などなど。大半のチームはそこまでではなかったのですが、一つのチームがちょっと目に余って、思わず私から一言申し上げようかと思ったくらいです。ドイツでも怒号は飛びます、親からもコーチからも。でも学年が上になってくると試合中の怒号は審判に注意されますし、下手をすれば警告も出ます。次男のコーチは試合が終わった後に怒鳴ることはほぼなく、負けた時は静かに良かった点、悪かった点を指摘します。彼はまだ20歳です。次男もそこは気になったらしく、後から「すごいね、あれ」とだけ言っていました。

その日の試合が全て終わって、ご挨拶に伺った際少しだけコーチに感想を伺うことができました。開口一番聞かれたのは、『ドイツではどういう感じでやっているんですか?』ということでした。ちょっとおっしゃっている意味を掴みかねたので、一応本人はプロになりたいと言って頑張っているんですが…と答えたのですが、コーチの質問はそこではなく(恥ずかしい)、どういう指導でやっているのか、ということのようでした。

曰く、Bクラブは近隣の少年サッカークラブの中でもコミュニケーションの風通しが良くて、子供たちが声を出す方であるが、基本は外からコーチが指示を出してそれに従って動く。それが当たり前。しかし次男が入った試合に関しては、コーチが言おうとするところを全て次男が先にフィールドで言ってくれるのでいう事がなかったと。そして、初対面のチームにもかかわらず落ち込んだら鼓舞したり、励ましたりする姿に本当に感心したと言っていただきました。なのでドイツでどうやっているのかが気になった、ということでした。

次男なりにドイツで意識して頑張ってきたことが日本で評価されたことは素直に嬉かったです。チームにも馴染めて、子供たちもいい刺激を受けるとどんどん変化をしますので、試合が進むにつれてチーム全体の守備の入りが強く激しくなり、ボール奪取が明らかに増えたと思います。最後にはコーチからも子供達からも、また来てね、と言っていただき、記念撮影もして、次男もこっちの方が楽しかったなと言いながら感謝いっぱいで帰路につきました。

ただ、ドイツ語で普段使っているサッカー用語をどう日本語に訳していいのかわからず試合中困ったと漏らしていました。笑

このような機会を作っていただいて、本当にありがたかったです。できることなら今後も続けていって、次男や長男の刺激になるといいな、と思っています。

ではまた。

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