見出し画像

シニアが月額課金を嫌う理由

嫌うの?

シニアは月額課金を嫌う。意外だと思いません?自分も、ようやく腹に落ちてきたのはここ半年くらいだ。どちらかというと月額課金や定額制を好むのではないかと思っていた。だって1つの商品使い始めると基本的に乗り換えはしないし、頻繁に価格や新商品をチェックすることもあまりない。実際、固定電話にはお金払い続けているし、子どもがいなくなっても衛星放送解約しないとか、ざらにある。

それはその通り。月額課金について、正確に言うと、「新しく月額課金を始めることを嫌う」だ。新しい商品やものを買う時に、それを月額課金で買うことに抵抗感を覚えるのだ。これは結構抵抗感ある。それなら1年分の利用料前払いしたほうがいい、みたいな声すらあるくらい。

なぜ月額課金を開始するのが嫌なのか

なにが嫌なのか。結論から言うと、自分の生活コスト水準が上がるのを嫌がるのだ。年金で収入が決まっているために、あるいは将来年金で収入が固定されることが分かっているがゆえに、生活コストが高止まりして赤字に近づくことを避ける。大前提として、毎月の収支は黒字であること。これは十分な資産があっても同じで、資産を切り崩す、というのは基本的に耐えられないようだ。たとえ資産が1億円あって、計算上100歳まで生きても貯金が残るとしても。

一方で、一時的な支出であれば、それは生活コストではないので、資産の切り崩しとして承認できる。資産が切り崩されることを否定しているのではなく、切り崩すことが常態化することを否定しているのだ。だから豪華客船の旅に出ることは問題にならない(資産があれば)。

どうすればいいのか

困ってしまう。世の中トレンドはサブスクリプションなのに、明らかに逆行している。さらに問題は支払い方法だ。シニアの定義にもよるが、70を超えるとクレジットカードの利用率すら低い。電子マネーやアプリ課金などほぼ行われていない。あるのはプリペイドのWAONや交通系くらいだが、これを使ってオンラインで毎回決済させるのは難しい。そうすると対面の支払いが必要になる。大変すぎる。だから口座引き落としにしたいが、月額課金だから口座引き落としは嫌われる。難しい。

こうすれば解決する、というシンプルな解決法はなく、シニアに課金する場合にはこの前提でビジネスモデルを設計しないといけないという事だ。例えば月額課金ではないが、健康食品であれば毎月こちらから架電して注文を電話で受け付け、着払いで決済する。回数券的なクーポンや1年分の前払いがお得な設計にして、さらに継続利用のための施策を入念におこなう。そうした細かいUI/UXの設計が肝になる。

そう考えれば、行きつくところはカスタマージャーニーであり、カスタマーサクセスだ。心情に寄り添うという意味で通常のマーケティングとなんら変わらないのかもしれない。



神山晃男 株式会社こころみ 代表取締役社長 http://cocolomi.net/