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再婚と卵巣がん【6】

ひと昔前のキロク

卵巣のう腫の為、腹腔鏡下術にて片側の卵巣の一部を切除したものの、切り取ったモノからごくごく微量のガンが出たとの事で、ドクターから3択の宿題が出た。

1、ガンは全て取れたと仮定して経過観察。
2、開腹手術にて一部摘出してその後は経過観察。
3、根治を希望するなら卵巣、子宮ごと全摘出。

ガン宣告(…と言う程でもないのかな「ごくごく微量のガン宣告」)を受けて1週間後、病院へ。
年齢的にも子供を生みたいという希望はない。でも、全て摘出というのは更年期症状が出やすいとも聞いているので残せる部分は残したいと伝える。
つまり3択の中から私は2にしたいと伝える。

ドクターは子宮を残す場合の説明をもう一度して下さった。
腹腔鏡手術で残して頂いた問題のある方の卵巣は卵管から切除、盲腸も取り、腹水を調べ、健康な方の卵巣も一部削る。手術中に簡易検査に回して問題なければ終了。もし悪いモノが出れば全摘する可能性はありますと。

私自身もそれがベストな方法だと思うので同意して手術日を決める。

入院計画書に『右卵巣癌』と書いてあり、あぁやっぱりガンなんだなぁと自覚する。
約1ヶ月後が開腹手術日。
後にこの担当ドクターがガンに強いドクターと知り、びっくり。

…ものすごいラッキーなんじゃないか?
と、ガンの身ながらもちょっと喜ぶ。
心強い。

 ーーーーーーーーー

入院日:
早めに到着したのでココスで夫とお茶。
夫がフレンチトーストにシロップをたっぷりかけて嬉しそうに食べていて、甘党なのか…と知る。
ろくに付き合ってないのに(入籍まで3ヶ月のスピード婚)こんな所まで来るとは…再婚までして、ある意味すごいねと思う。離婚の時もものすごい追い風が吹いていたけど、この勢いも追い風と信じたいとぼんやり思う。

手術日当日:
本来は2番手だったのに1番の方が風邪の為、急遽私が1番に。今回は麻酔が効きにくかったのか背中に針を刺された際にビクッとなって医療チームの皆様がびっくり…すぐ寝ちゃったけど。

術後はまた一晩中足にマッサージ機…うぅ…。

今回はさすが開腹手術、お腹がすごく痛い。正確にはお腹の中。
痛み止めの座薬1回。痛みで泣きそうな上に熱い…。
病室の壁からたくさんの手が出て来てウネウネと動いているのを見た。
でも私の寝ている位置から見えたのではなく、離れたところに立ってる自分が見ている様だったので幻覚かも。
うなされつつ1回吐いたらラクになり、少し眠る。

2日目:
午前中、機械類を外し尿の管を抜く。
起き上がって少し出血したら更にラクになった。不思議な程に。
生理だったので溜まってた分の出血だったのかも。
落ち着いたら歩く練習。
開腹手術でも翌日に歩けるんだねーとびっくり。
思ったより元気だったので今度は空腹過ぎてツラい…。

なんと食事は3日目からで、しかも流動食の三分粥からと知ってショック!
それは無い…と思い、こっそり売店でヨーグルトとおせんべいを買う。(絶対真似してはいけません!!)

夜中に口の中でおせんべを溶かしながら舐める。
…ほんとはちょっと飲んだ。

見回りに来た看護師さんがおせんべいの袋を見つけ、
「食べてないですよね!?」
と驚いた様に言うので、小さい声で
「お腹が空きすぎて…ちょっと舐めてみました…」
と答える。

「絶対ダメよ〜」と当たり前に注意され、しゅんとする。
食べた事にではなく、これで体調悪くなったら真剣にお世話して下さってる看護師さんに迷惑かけちゃうなぁと思って。
自分はね、自業自得だし、すごく味わったからいいのだけど…。

3日目:
点滴が終了して抜針。
腕が曲げられるって嬉しい。動きやすい。自由!と歓喜。

食事はお湯か!?と思うくらいの三分粥…悲しい。

傷に貼られたテープを剥がしてシャワー。
ホチキスの針みたいなものがいっぱいでびっくり。15個も。
…ベニヤ板にでもなった気分。
足取りしっかり、正座もOK、なかなか順調だと思う。

4日目:
シャワーに散歩、洗濯などをしてのんびり(洗濯機や乾燥機が使えるので便利!)。
屋上でひなたぼっこしたり。
同室の女性が退院したのでひとりになり、イヤホン無しでテレビが観られて嬉しい。
足上げ体操も始めてみた。ゆっくり足を上げ下げ。
大丈夫そう。

出血もナシ、生理も終った模様。

5日目:
朝ご飯、やっと普通の。
それまでは、三分粥、牛乳、ネクター、みそ汁の具無し…という、かつて無いくらい大切にして頂いたので、噛んで味がある物をありがたく味わって食べる。

6日目:
お腹の傷がかゆい感じと、腹筋が使えてる感じがする。
ゆっくりお腹に力を入れてみたり、緩めてみたりしてみる。

7日目:
ホチキスの針15個と糸を1本外した。
午後にはシャワー。
ニンゲンてすごいなぁ…傷がくっつくんだなぁとしみじみ。
もちろん最速でそうなる様に手術出来ているドクターにもびっくりだけど。
こういう手術が出来るようになるまで、たくさんの犠牲もあったはず。
ありがとうございます、お陰様で…の気持ち。

8日目:
とてもラクに動ける、何も困らない。
前回の様に後頭痛にもならず、お腹を切ったわりに身体も元気。

9日目:
退院。お世話になったドクターを始め看護師さん方にご挨拶。

本当にこの病院はすごくみなさんテキパキしていて気持ちよく接して下さるので感謝しかない。
退院の時、5年は定期的に診せに来てねと担当ドクターに言われたのだが、後日、別のドクターに卵巣ガンは術後10年は診ないとねーと言われて驚いた。

担当ドクターはいつも安心させてくれるので、いきなり長くは言わなかったのかも…。

そして私は、経過観察中である術後3年で妊娠し、4年目に息子を生む事になる。
当時44歳、出産時は45歳となる私にこのドクターは
「まさか君の赤ちゃんを診る事になるとはねぇ〜」
と穏やかに笑って、楽しみですね〜と言ってくださった。

ごくごく微量のガンを見つけてくれたドクターが、ごくごく豆粒の息子も見つけてくれた。

私はちょっとした風邪とか不調なら近所の病院へ行ってしまうのだけど「何か大きな病気は?」と問われた際に卵巣ガンと答えると、だいたいの医師は手を止めて「今、治療の方は?」と尋ねる。

「卵巣のう腫の手術の時に見つかって切除したので抗ガン剤も使わず、今は定期検査だけです」と言うと

「あーそれは本当に良かったねぇ、卵巣ガンはなかなかそんな初期には見つからないよ〜本当にラッキーだったねぇ」といって頂ける。

その度にありがたい事なんだなぁと思う。

たまたま娘の結婚とか私の再婚とかバタバタが無ければ、わざわざ腹腔鏡の手術はしなかっただろうなぁ、仕事しなきゃ…が先だったと思う。

せっかく救って頂いた命なら、ヒトに優しく、調子に乗らずに生きていかなくては…と思ってるんだけど…。

そしてもう既に術後10年が経過し、私は生きています。

この10年も家庭内はすったもんだでしょーもない事だらけなのだけど…対応出来ているのは健康だから。

卵巣ガンについては最終回です。
読んで頂いてありがとうございます。



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