上村

学生 | 作家 | noteには感想文と時々レポートを載せます

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本屋大賞ノミネート作・小川哲「君が手にするはずだった黄金について」の読書会をした!

あらすじ 「そ、そういう帯文だったんだ……」 「なんかわたしの読み方ぜんぜんちがった……」 「すごい帯文だなあこれ、へえ〜」 というわけで、はじめは『青山の占い師ごっこ』から失礼します 「よし。では、私は28歳の」 「なんですか?」 「OLをしています」 「あ、はい」 「ベイマックスが好きです」 「本当じゃん」 「はい。将来、どんな風に生きていけばいいのかわかりません。よろしくお願いします」 「28歳のOLって、将来に対して悩んでるんですか?」 「……仕事で! 仕事で悩

    • 京都市長選挙が若者に投票してほしそうにこちらを見ている

      いま、京都市長選挙がアツい。 本日、2024年1月21日に告示され、2月4日の投開票が迫る京都市長選挙は、告示直前、元京都市議の村山祥栄氏に政治資金についての疑惑が噴出し維新が不戦敗を余儀なくされ、「非共産対共産」の構図に一変。 昨今の「政治と金」についての報道の過熱も相まって、注目を集めている。 わたしにとっても、京都に住民票を移してから初の選挙だ。もっとはやく移せよという話だけれど、大学のうちはいいかなと先延ばしにしていたら遅くなってしまい……反省。 (1行自己紹介:

      • 安堂ホセ「迷彩色の男」(『文藝』2023年秋季号掲載/芥川賞候補作)の読書会をしました

        *以下、ネタバレを含みます! ご注意ください! どうでした? おもしろかったですか? 「インスタ映えみたいだなって思いました。色彩が統一されてて、光の描写が多くて、東京のおしゃれな感じ」 「わかるかも。殺された男を見に行くところの、フェイクレザーの皺に沿って光の反射がすっと動くところとか。あの光の球の描写はすごくすきだったなあ。最初は推理小説かサスペンス? っぽいなと思ったんですけど、そうでもない? でも、エンタメとしても楽しめましたね」 「ぼくは千葉雅也さんの小説に似た

        • ぼくたちはなぜ中島らもになれないのか — 中島らも『今夜、すべてのバーで』読書会

          *以下、ネタバレを含みます! ご注意ください! どうでした? おもしろかったですか? 「なんやこのエピソード……みたいなのがいっぱい入っていていいですね」 「意味もなく入ってくるヤクザとのシーンすきだった」 「とてもいい。とてもいい」 「これ、ただアル中が入院してから退院するまでのログラインで、無限にエピソードが連なって終わるじゃないですか」 「松尾スズキ『クワイエットルームへようこそ』と構成は同じですよね」 「そう。しかも、この主人公は自分の病状に対してある程度自覚的

        本屋大賞ノミネート作・小川哲「君が手にするはずだった黄金について」の読書会をした!

        • 京都市長選挙が若者に投票してほしそうにこちらを見ている

        • 安堂ホセ「迷彩色の男」(『文藝』2023年秋季号掲載/芥川賞候補作)の読書会をしました

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          00'〜02’年代大学生5人が金原ひとみ『腹を空かせた勇者ども』を読んだら

          *以下、ネタバレを含みます! ご注意ください! どうでした? おもしろかったですか? 「ぼくは金原ひとみの小説をよく読むんですけど、最近読んできたものと比べると、正直、厚みはだいぶ無いなと思って」 「たしかに」 「娘側の視点から描かれていて、母親は他者の方に置く書き方だから、そうなるのは自然だなと思いつつも、でもやっぱり、読んでる感覚として、ひとつまえの作品と比べてしまった気はします。ひとつまえの『デクリネゾン』は、母親が視点人物で、二度の離婚を経て中学生の娘と暮らしてい

          00'〜02’年代大学生5人が金原ひとみ『腹を空かせた勇者ども』を読んだら

          小泉綾子「無敵の犬の夜」(『文藝』2023年冬季号掲載/文藝賞受賞作)の読書会をしました

          *以下、ネタバレを含みます! ご注意ください! どうでした? おもしろかったですか? 「この主人公の『小指がなくて』っていう設定と、田舎にいるヤンキーになりきれないイキリ中学生って取り合わせがよかった。力こそパワーじゃないですかここ。なんらか社会とちがうと見做される存在は、田舎においてはパワーで上に立たないと最下層にいるしかないわけで。パワーで上に立とうとしているのだなあ」 「のだなあ」 「ん〜橘さんという存在がいいですよね」 「あとおっぱいを見て『ケーキ食べたい』って思

          小泉綾子「無敵の犬の夜」(『文藝』2023年冬季号掲載/文藝賞受賞作)の読書会をしました

          映画を早送りで観ないタイプのZ世代 - 稲田豊史『映画を早送りで観る人たち』、蓮實重彥『映画 魅惑のエクリチュール』を支えとして

          最近、映画監督の坂本礼さんの最新作に、こんなコメントを寄せた。 試写室で、絨毯敷きの床に寝そべって観る坂本監督のとなりで彼の映画を観た時間は、なんだか忘れられない。 映画は時間。平等な時間をすごす。それが、あたりまえだと思っていた。 稲田豊史『映画を早送りで観る人たち ファスト映画・ネタバレ——コンテンツ消費の現在形』を読むまでは。 なぜ映画を早送りで観るのか? 現代は映像作品が供給過多になったうえ、可処分時間の減少/多忙によるコストパフォーマンス(タイムパフォーマンス

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          宮島未奈『成瀬は天下を取りにいく』の読書会をしました

          編集者さんから「上村さんの前年度に受賞された宮島さんの単行本です」と紹介され、「ああ〜いまめちゃくちゃ売れていると噂の……」と言っていたら、3か月後に『成天』10万部突破のニュースが流れてきた。 売れすぎだよ〜。次年度のわたしのプレッシャーが半端ないよ〜。と泣き言を言いつつ、㊗️『成天』10万部🎉 ってことで、読書会をすることにした。 ということで、発言者の名前は伏せて話した内容をざっくりまとめたnoteです。 どうでした? おもしろかったですか? 「のちのち、なんらか

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          ジブリを1作も見たことがない22歳が「君たちはどう生きるか」で宮崎駿に出会った話 —— ノーマン・ブライソン「拡張された場における〈眼差し〉」を軸に

          ジブリを見ないまま22年間生きてきた。わたしのはじめてのジブリは「君たちはどう生きるか」だった。 *以下、ネタバレあり。 かまいたちのコントに「トトロ見たことないねん」と山内くんが自慢して、濱家くんが戸惑うコントがある。「何回も繰り返される再放送の網をぜんぶくぐり抜けて、37年間1回もトトロ見たことないねん。すごない? みんなはトトロ見たことない状態には戻れへんやん!」と力説する山内くん。「なにがすごいねん」とツッコむ濱家くん。 そのコントを見ながら、わたしはふと気づいた

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