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愛のある、ユニークで豊かな愛 【文字をめぐる日常 vol.03】

フロップデザインさんにオファーを受けて平成最後のフォントにゲスト参加しました。自分に振り分けられた文字は「愛」。フォント見本帳にあるあの文言の一文字目。これは結構な重責なのではと思いながら制作してみました。今回はその過程をご紹介します。(制作方法や考え方は参考にした文献もありますが個人的なものです。あしからず)

愛ってなんだ、ためらわないことさ

まず、今回の平成最後のフォントというお題目に対してコンセプトを決めよう…と考え始める前にまずは手馴しでプロポーションと字形をなんとなく模索します。自分の場合は最近ではポストイットでスタートが多いかな。そこにシャープペンシル、筆ペン、ボールペンなどでとりあえず書いてみる。

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なるべくサッと、雑でもよいので多く案を書く。最近webで文字作品を上げる方々と知り合う機会が多くなったのですが(皆めちゃくちゃ上手い)結構な割合でサムネイルほどの小ささからスタートしているんですよね。あれってなんとなく手書き文字の大きさ感なんだろうなと思っています。文字のストロークのリズム感もここにあるのかな。大きく書ける方はそれだけで文字に宿るグルーブが違う様な気がします。

愛ゆえに、人は苦しまねばならぬ

いい感じに「愛」の文字がゲシュタルト崩壊してきました。先にいきます。平成最後のフォントのゲスト参加オファーがきた頃、平成を代表するフォントってなんだろうというツイッターのリツイートが回ってきていました。純粋な平成生まれのフォントというよりは時代性を帯びた、よく使われたフォントという内容だったと思います。(リツイート先見つからず)で、そのフォントはなんだったかというと新ゴだったんですよ。

新ゴかぁ、あんまり平成を代表するという意識ないけど(どちらかというと丸明オールドの方がずっと一線にいたような…広告畑だけど)デジタルフォントの世界になって写研を引きずり下ろした書体といえばそうなんだろうなと一人合点をしていたのです。それじゃあひとつ仮想ボディめいっぱいな平成最後のフォントでもつくろうかと。

愛するがゆえに、見守る愛もある

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さて、方向性も決まったのでまた案出しです。①〜③はまず矩形を使用したオーソドックスなものですがプロポーションを少しずつ変化させながらやっぱりボツだなと思ってここで終了。④〜⑤はそもそも緩いのは違うんじゃないかと思い終了。残りの⑥は極太の筆文字で字形が喪失しているのが面白かったのでこれをブラッシュアップしていきます。

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ウェイトが太く、字形が喪失するかしないかのギリギリを攻めてるフォントといえばフォントワークスのラグラン。そういえばこの書体も新ゴと同じく仮想ボディめいっぱいでした。あと筆文字形の極太書体でオーソドックスなものといえば勘亭流。この辺の字形を参考に詰めていきます。

ラグランには派生書体にアニメ・キルラキルで一世を風靡したラグランパンチがあります。書体紹介文にはインパクトと視認性についての解説があり、「パンチ」の意味も書かれています。

白抜き部分の穴(パンチ)の大きさや、線の交差する接触部や平行な線の隙間を広げることで、これまで同様の極太なインパクトをそのままに、見出しサイズでも文字の潰れが少ない使いやすい書体に生まれ変わりました。

この白抜き部分の再調整は仕方によってはかなり個性がでるので、ここを切り刻んで(Cutting)今回のフォントの個性としました。(下画像右の黄色部分が切り刻んだ部分)

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愛だろ、愛

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という訳で完成です!「心」が大きめな字形がいいなぁと思っていたので最後の切り刻む過程ではっきり見えてみたので良かったかなと。平成最後のフォント全体のお披露目は4月30日、楽しみです。今回お声がけくださったフロップデザインさん、ありがとうございました!


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