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Soap Opera -2

34年連れ添った、37歳年上のおじを失い、悲壮にくれる近所のおば (情報量よ……)おじの財産を狙う実子のハゲタカ共の来襲。おばを守るためにやってきた非常に気性の激しい姉おば3と、実子たちの財産をハゲタカのように狙う発言に怒る夫アルゴ。怒りの天魔王ども降臨の巻である。

その1はこちら。

その1の記事で、そういやなんでメロドラマはメロドラマか調べてみたら、英語 soap operaの方の語源も気になって調べてみた。おもしろ事実を知った。

Why is called soap opera? soap opera, broadcast dramatic serial program, so called in the United States because most of its major sponsors for many years were manufacturers of soap and detergents.
なぜソープオペラと呼ばれるのですか? ソープ オペラ。ドラマチックな連続番組のことで、米国ではそう呼ばれています。これは、長年にわたってその主要なスポンサーのほとんどが石鹸と洗剤の製造業者であったためです。

https://www.britannica.com/art/soap-opera

まさかのスポンサー由来。 長年、なんでソープなんやろ?と思っていたけど、メロメロと一緒くらい、ふふってなりました。 そんなわけで我が家のSoap Opera. 私のNote用語的にいえば、ファミリークソドラマの続きを書き記していきたい。

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実を言うと、私も一瞬、怒りの天魔王変化しそうになったのだがその経緯と状況を記していきたい。

おじが亡くなったのは、日曜日。その3日前から腎臓の検査でひっかかったから今すぐ入院するようにと主治医からの連絡が来た。おじはピンピンしていたが、UTIーurinary tract infection、尿路感染症であるとの診断が出された。明日(月曜日)には退院と言われていたので、おばも、我々もその日がおじの臨終の日になるとは思ってもいなかった。

尿路感染症はおしっこの出口(尿道口)から細菌が膀胱内に進入することで生じる感染症である。細菌が膀胱から腎臓まで進入すると腎盂腎炎を起こしてしまう。齢90歳ということで、抵抗力と体の状態が弱かったのだ。おじは腎盂炎をおこし、それがトリガーとなりあれよこれよと言ううちに様態が急変してしまった。年齢の他にも、おじは大きな心臓バイパス手術も受けていたし、糖尿病患者でもあった。なので一つの臓器がシャットダウンしてしまってから、死に至るまで本当にあっという間だったのだ。

おじの死の数時間前まで私は彼の病床にいた。朝、病室を訪ねると「ちょっとお昼ごはんを食べにいくからここにいてくれる?すぐ戻るわ」という近所のおばと姉おばの言葉を私は快諾した。1時間経っても、2時間経っても二人は帰ってこない(苛)わかってたの〜。近所のおばってそうなのよぉ。いつだって、何するんだって時間の観念が違うのねぇ。ちょっとが全然、ちょっとじゃないんだわぁ(ため息)

おじは、タブレットでゴスペルステージを見ながらベッドに横たわっていた。時折、あいつ(妻・近所のおば)戻ってこねぇなぁとかなんとかブツブツ言っていたけど「まぁ、想定内ですよね(諦)彼女のすぐ戻るって、まぁよくて3時間くらいじゃん?」「あぁ、そうだなぁ。いつものことだなぁ」などと二人で言い合い、ニヒヒと笑いあった。で、3時間が経過。

おじは寝ていたが、超音波検査をするので、病室を出てくれと言われた。こりゃ知らせたほうが良かろうと思い、私は病室を出て、近所のおばに電話をした。おばは今、戻ってきた!とちょうど、病室のロビーにいたため、そこで少しだけ話をし、ほんじゃまたの、といつもとなにも変わらぬ挨拶をして別れた。いつもなら、昼食3時間とかアホか!スペイン人か?シエスタか?あぁん?(怒)と言うところだが、 そこは流石に我慢した。

その5時間後に、姉おばより私に電話がきて、おじの臨終を伝えられたのだ。つい数時間前までいつもみたいに話しをしていた人が、急にいなくなるというのは、大きな大きな穴の中にどんっと、突き落とされるような気持ちになる。

この時点から近所のおばが心配で仕方がなかったが病院から家に戻るまで時間がかかるだろうし、姉おばがとにかく落ち着くまで私がなんとかするから、朝イチで来てと言われ、そうした。

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朝6時。私は一人で近所のおばの家へと向かった。夫アルゴは案の定、震えるほどの不安と喪失感に苛まれていたため、一人の時間を与えることにした。で、その1に書いた「家を売る、分配はいくらになるか」なんて言うおじの実子の言葉に気絶しそうになったわけである。

我々夫婦は、クソな実子が、速攻で5時間のフライトを経てやってきたので「あんな人でもやっぱり実の親だもんねぇ。そら飛んでくるわねぇ」と感心したのだ。傷心のおばと支え合い、手に手をとって葬儀の手配、親族たちへの連絡などをするのだろうと思ったからだ。後妻と実子だもの。普通ならそうだろう。常識的に、人間のモラルという意味的に。それでこれよ。クソはやっぱりクソなのである。

おじはデトロイトで生まれ育った人なのでせめてそちらの親族には娘が連絡するだろうと思っていたが、実際、連絡をしたのは姉おばであった。ほんっとになんなの……なんのために来たのか!と思ったが、即座に、金のためですヨネー、遺産のためですヨネーと自分で自分に言って納得した。

この時点でおじが亡くなって半日もたっていないのだ。

近所のおばは立ってもいられないし、姉おばもまた高齢であるので疲労困憊である。夫アルゴも私もずっと一緒にいてあげられない。そこで他のおばたち(2番目と3番目のおば、と3番目のおばの妻)が大都会からやってくることになった。近所のおばと実子たちとでは、葬式の手配すら不可能であるという判断もあった。

娘なんて無責任にも「生まれ故郷で葬式をするべきでは?」とか言い出す始末。何言ってんだ!おじはこの街で暮らした時間の方が長いし、人間関係だってこっちで築いたものばかりなのだ。おじは20代の終わりにデトロイトからNYにやってきてるのである。人生60数年をこの街で過ごしたんやぞ

「で、ダディは退職金、いくら位もらっていたのかしら?」
「退職金の受け取り手続きしなきゃ」
「あ、そうそう保険はどうなっているのかしら?死亡保険」
「あぁ、それと年金の手続きもあるわね」
「デトロイトの親族への形見わけ用にダディの貴金属、確認したかいら見せてくれる?」
「あれぇ?ダディの持ってたロレックスどこかしら?」
「貯金っていくらくらいあるのかしら」
「ダディのつけてたあのネックレスとブレスレット。24金だったわよね」
「あ〜あ、残念。免許返上してなければキャデラックもあったでしょうに」
「あ、そうそう、金庫あるわよね。暗証番号なにかしら?」
「2階のリビングにあるアンティーク食器なんかも売らなくちゃねぇ」

次から次へとよくもまぁこんなにポンポン、ポンポンでてくるのぉぉぉぉぉ

お前!韓国ドラマの悪モノとか、意地悪後妻でもこんなにも凄まじい勢いで出てこんぞ!

これらのクソ娘の発言。漫画だったら全部(ウキウキ)とか(そわそわ)なんて効果音が書き込まれる感じである。

しかもこんなクソ発言のまにまに、やれ腹が減っただの、喉がかわいただの、お客様扱いしろ感をひしひしと感じさせる発言を繰り出してくる。その上、もう一匹のハゲタカ、実子・息子もいるのだ。言っておくが、この人たち、50代後半と60代後半なんである。ひどい!

ちなみにこれらの発言は私がいる時にしでかしていたものであるので、私がいない間はもっと言っていたと思われる。こうして書いているだけでもイライラするため、キィボードをスターンッ!スターンッ!って打ち込んでますわ。ぷいぷい。

そんなこと心配する前に葬式の手配とかしろや!と思ったが、別働隊のおばたちが到着するまで一言もそんな話は出なかった。とりあえず、私は姉おばたちに、義母の葬儀を行った葬儀屋の連絡先を教え、葬式を行うためのアポイントメントを取るために電話をいれた。

近所のおばはショック状態だし、姉おばは温厚だし、私はあんたより年下の外国人だからってナメてんの?ふざけてんの?という言葉しか思い浮かばず、こんな状況でなければ、ゴールデンカムイ、鯉登少尉のごとく「きぃぃえぇぇぇぇぇ!」と奇声をはりあげクソ実子を殴り倒してやりたいという衝動にまで駆られた。大体にして、夫や夫親族が激しすぎるため、あまり目立たないが私もまた非常に感情的で攻撃的な部分を持つ人間なのである。

幸いにして、夫アルゴは早々に気持ちを落ち着かせ、そして他のおばたちが到着することになったため、私が怒りの天魔王に変化する事態には陥らなかったが、夫アルゴと姉おば3(通称ピットブル)はヒートアップすることここに極まれりであった。

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近所のおばにずっと付き添っていた姉おばにより私が夫には伝えていなかった実子たちによるすべてのハゲタカ発言が暴露されてしまい、私は夫により尋問され、洗いざらい話すことになった。正座までさせられて。あまりに酷いものなので、聞いたら絶対怒るじゃん、という私の言葉に、言い訳スンナァァァ!なんですぐ言わなかったんだぁぁと叱られた。こうやって怒り狂うからですヨゥ。

話を聞き終わる頃には、今すぐ近所のおばの家にいってクソ娘を叩き出すと大層な剣幕であった。怒りの天魔王、爆誕の瞬間である。怒りに震える(文字通り、ぶるぶる)人間なるものを初めて見た。夫のミルクチョコレート色の肌が赤く見えるほどであった。

私はメロドラマのキャラクターの如く、夫の巨体に縋り、腰にタックル状態で「まってぇぇぇぇぇぇぇ。お願いだから落ち着いて!おばさんのことを考えて!ただでさえ打ちのめされてる彼女にこれ以上のダメージを加えるようなことをしないでぇぇぇぇ」とものすごい勢いで家を出ようとする夫アルゴを止めた。心優しきリンゴ犬も私を援護するように夫アルゴにワンワン吠えた。

リンゴ犬の私への忠誠心に心打たれたらしい夫アルゴは「わかったよ。リンゴ犬まで止めるなら、我慢する。でもむかつくわぁ。殴り倒してぇぇぇ。今すぐ行きてぇぇぇ」とその巨体をゆら〜りゆらりしながら言っていたので「心配すんな。あと小一時間で、姉おば3、ピットブルが襲来である。彼女たちの到着を待ち、乗り込むべきである」と諭した。

どうにもこうにも「おば」数が多いので、ここからは、怒りの天魔王と化した姉おば3については、ピットブルおば、と書くことにしようと思う。整理すると、

●   姉おば1:ずっと近所のおばについていたおば
●   姉おば2:温厚な2番目のねぇちゃんおば
●  この間に義母  ●
●   姉おば3:ピットブル。激情系。怒ると手のつけられないおば
●   近所のおば 

ピットブルおばは、車で4時間かかるほどの道のりを半分の時間でやってきた。車に同乗していた姉おば2によると、それはそれは凄まじい勢いで呪詛を吐き散らかし、なんとかなだめようと頑張ってはみたが、落ち着くどころかヒートアップしたため、怒りのメーターに合わせ、車のスピードメーターもじゃんじゃん上がり、地獄のデスロードのようであったとぐったりとしていた。いつもであれば、ピットブルおばは、妻の言うことには従順であるのだが、あいにく、妻は体調が悪くぐったりしていたらしい(あ、ちなみにピットブルおばは同性婚である)。

怒り心頭のピットブルおばでも、流石にいきなりカマすことはあるまい。とにかく、落ち着いた頃合いを見計らって、近所のおば宅を尋ねることにした。万が一、乱闘になっても夫アルゴが止めに入ることができるほどの精神状態になってから。乱闘とかそんな大げさな、と思う?いや、やるんすわ、このピットブルおば。

ピットブルおばらの到着より2時間ほどしてから、我々夫婦は、近所のおばの家へと向かった。挨拶などを交わし、よっこらしょと椅子に座った途端に、ピットブルおばは宣言した。高々と。宣言というか、宣誓

「まぁ見てなさい。私がガツンといってやるわぁぁ。今から階下に降りて、がつんと言うわよ。あんなクソでカスな実子たちが受け取るものは1セントすらないってねぇぇ!好き勝手なこと言ったりしたりしやがってえぇぇぇ妹を侮辱するにも程がある。許さないわよぉぉぉぉ

横に座っているだけで、彼女の怒りの熱風がひしひしと伝わる。そんな宣誓を横目に、私はぼんやりとビジュアル系バンドの人が観客を煽るためにつかう「かかってこいやぁぁぁ」の姿を思い出していた。

近所のおばは、あわわしながら涙ながらに「やめて、やめて!何も今、言わなくていいじゃない」と縋る。彼らだって実の父親を亡くしてるのよ。悲しいのよ!だから今言うことないじゃない、という近所のおばの言葉に、ピットブルおばと夫は声を揃えて「はぁぁぁぁぁぁぁぁ!?アホかぁぁぁ」とその先の言葉を遮った。

あれだけのハゲタカ発言を繰り出してきた実子たちである。おじ(実父)の死なぞ屁とも思っていないのだろうなぁと、その部分だけはこの怒りの天魔王たちに激しく同意した。近所のおばは、人が良すぎるのである。

「よし!俺も一緒にいくぞ!おばさん!」夫アルゴもピットブルおばに同調し、天魔王どもは完全に戦闘モードである。ひぃぃぃぃ。

姉おばは一時帰宅したが、入れ代わりで他の二人の姉が来たせいか、近所のおばもようやく泣き止み、諸々の手続きのための書類やらを探していたのである。

というか、ピットブルおばにより、探すように命じられたのである。その1にも書いたが、近所のおばは全く、全然、整理整頓ができない人なので、書類探しは、それだけで大変なのだ。あぁ、そういや義母が亡くなった時も同じノリだったわぁ、と私は遠い目をした。

義母の時のクソどもは、ママの元旦那とアルゴ弟。籍は外していなかったが20年以上別居していた元旦那。義母もまた整理整頓のできない人で、葬儀を出すための書類を探し出すのに大変な苦労をした。あのときもやはり、ピットブルおばが陣頭にたち、指揮をとっていた。乱闘騒ぎって書いたじゃん?そう、あったの。やったの。ちなみに、夫アルゴも弟と乱闘になり、葬式だってのに警察きたからね。最悪だったよ。

しかし、あれからもう11年…怒りの天魔王たちも少しは落ち着いたであろと、私は思いたい。信じたい。

姉おば2「あんたたち、落ち着きなさいよ」
近所のおば「だから、ほんと、今、言わなくていいでしょぉぉ(懇願)」
私「こえぇぇぇぇぇ。あたしゃ、ここに控えとくよ。巻き込まれたくねぇからな!行くなら二人でいきな!」

そんな我々の声をちっとも聞かずに、怒りの天魔王、ピットブルおばと夫アルゴは、階下にあるリビングでまるで我が家のようなノリで寛いでいるおじの実子(娘)の元へと突撃していったのであった。

次回メロドラマ:怒りの天魔王ども曹操モード、巻に続く。



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こちら11年前の話。義母の死に纏わる修羅場に耐えかね、スペインを徒歩で歩いた夫の話。


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