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20180527 夢の近くのユートピア

湿風や塾の帰りの五人組
炎天と知りながら岩触る指
夕焼に夕餉の支度揺さぶって
三叉路にプールの匂い溢れ出す
秘密裡に見ていないふり揚羽蝶

7年前の5月のある日、海沿いの歩道をひとり歩いていた。犬を連れた女性や、ジョギングをする男性をすれ違う。わたしはというと、1週間着の身着のままの爽やかでない身体を先へと急がせる。海の向かいには大好きな夢の世界が広がっている。かすかに明るい音楽が風に乗って流れてくる。

ここは千葉県・舞浜、東京ディズニーリゾート。1983年に開園した東京ディズニーランドの隣に、東京ディズニーシーが2001年にオープンして、周辺の宿泊施設や商業施設もまとめて『東京ディズニーリゾート』と呼ばれている。

わたしは東京ディズニーリゾートの大ファンである。こどものころ、家族でランドへ行って、その非日常感の虜になった。東京でひとり暮らしをすることになって、大きな夢をひとつ叶えた。両パーク共通の年間パスポートを買った。

年間パスがあれば、いつでも大好きな場所へ行ける!ランド、シーの両パークに入園できる年間パスポートは約9万円で決して安くはないのだけれど、迷いはなかった。ミッキーの可愛いデザインに顔写真の入った年パスを、わたしは社員証と一緒にパスケースに納めた。

近いと行っても、住んでいる千歳船橋からは1時間20分ほどもかかった。働いている神谷町からのほうが近く、日比谷線と京葉線を乗り継いで約40分ほどで着いた。仕事終わりに夜のパレードだけ見たり、シーでお酒だけ呑んだりできる…!と、わくわくした。しかし、実際は仕事に追われてそれどころじゃなかった。

1ヶ月ほど休みなく働いた、大きな仕事が終わった日。わたしは1週間ぶりの自宅ではなく、舞浜へ向かった。舞浜駅に着いて、わたしはふっと思い立つ。海沿いにずっと歩いて行こう。東京ディズニーシーへ行こう。どれくらいで着けるのか、予想もせずに、歩きはじめた。時間はこれからたっぷりあるのだから。

雲ひとつなくて、夏日かなと思うくらい暑かった。海の風は穏やかで気持ちいいのだけれど、1時間も歩いていると、さすがに日差しに疲れてくる。それに2日ほど全く寝ていないのだ。寝不足なのに、自宅へも帰らず、好きな場所へだらだらと向かう。わたしはとても疲れると、少し混乱して、自分でも疑問に思う行動を起こすことがある。どうかしている。

ようやくディズニーシーが見えてきた。その傍らには『舞浜ユーラシア』という場所がある。温泉とサウナを楽しめる、大型スパ施設である。どうかしているとは言ったが、わたしはこういう場所があるという情報を得ていて、途中でタクシーも拾わず歩いていたのだ。ついたら汗を流せるし。まあ、拾うどころか歩いてしばらくすると、タクシーの往来などなかったのだけど…。また、汗をかくどころか、暑くて軽く貧血も起こしかけていたのだけど。

そんなぼろぼろの状態でたどり着いた『舞浜ユーラシア』、わたしは東京ディズニーリゾートと同じくらい愛することになる。今回は舞浜ユーラシアへの愛について書こうと思ったのだけれど、少し前置きが長くなったので、それはまたあらためて。

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