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【短いおはなし】2月19日は「プロレスの日」

人の一生は数字だ。

「0」の形で生まれて立ち上がり「1」の形のように真っすぐ立つ。そして真っすぐ「1」の形の状態で歩く。たまに疲れたら「2」の正座もしくは「6」の椅子の形に座る。そして社会では目上の人に「7」の形で丁寧にお辞儀し、家族について「9」の形で頭を抱え悩み、「10」の形で子供が生まれ共に生き、「11」の形で将来を再度2人で話し合い、結局また「1」に戻り、最後に「0」になる。

「一」

今わたしの目の前には、漢字の「一」がいる。あぁそうか先輩は数字には収まらない男になったんですね。わたしは1人そう思った。その場にいた中でそんなことを考えたのは多分わたしだけだと思う。
その「一」を見てるとわたしはとても興奮して、声の限りをもって応援してしまった。「がんばれ、がんばれ、せんぱい、がんばれ」いったい何をどんな風にがんばってほしいのか自分でも謎だ。
こんな声を出すのは嵐のライブか嵐のライブ映像を家族のいない土曜日に居間のテレビで1人観る時くらいだ。そんな嵐と同程度の応援をするわたしを見て、となりの友達は怪訝な顔をした。

スポーツはルールが決まっている。スポーツマンシップになんちゃらで決まっている。当たり前だ。ルールがなければサッカーは手でもって運んじゃうし、バスケは梯子を持ってくる。決められたルールの中で、恐らく1番効果的であろう準備をして、試合ないしは本場に臨む。

社会にもルールがある、強盗、殺人ダメ絶対。ルールは守って暮らしましょう。by警視庁

わたしは頭があんまりよろしいほうではないので、難しいことはよく分からないが、そんな社会の大なり小なりのルールを、とてつもない誰も想像しなかったスケールで飛び越えちゃうことがあるんじゃないのか。その瞬間が今なのではないかと思う。

先輩は「1」「1」「1」の世界から「一」で飛び出ちゃったんだと思う。強いぞ! 漢字の「一」は強いんだぞ!
高かった。え? 先輩空飛んではります? って思うくらい高かった。あぁ思い出したらなんか泣けてきた。なんで泣くのよわたし。

「一」で「1」を

「一」が「1」「1」を

「一」だけが「1」「1」「1」を

校庭で倒れる生徒生徒生徒、駆け付ける教師。そのなかで先輩は誰よりも高くそして誰よりも美しくドロップキックしていた。

「一」最高。

2月19日は「プロレスの日」


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