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言葉の蛇口〜子供から学ぶのも親の役割〜団欒の意味

 おじいさんとおばあさんは、子供から学校の話や友達の話を聞くことを大切にする人だった。毎日、夕食の時間だとか、お風呂の後の団欒の時間に「今日は学校はどうだった?」って聞かれるの。「特に話すようなことはなかったな」と思う日や、「今日は嫌な一日だったな」という日もあったけれど、二人が嬉しそうに聞いてくれるので、楽しかったことや嬉しかったこと、面白かったことを探して話すようになったわ。話題がない時は、別の日の話しをしたり、友達から聞いた話しをしたりしていたの。二人はいつも嬉しそうに聞いてくれた。感心したり、驚いたりしてくれるので、私たちも話すのが楽しかったの。話しの終わりには、「今日も楽しいことがたくさんで良かったね。聞かせてくれてありがとう。」って笑って言ってくれていたわ。
 私も子供たちが幼稚園に通い始めたら同じようにしていたわ。自分がしてもらったように、子供の話しに、感心したり、驚いたりして聞いているうちに、「あぁ、こうやって子供が話せるようにしてくれていたんだな」って気付かされたの。子供たちが嬉しそうに、誇らしそうに話してくれることが喜びだった。それだけじゃないの。子供たちも、私と同じように、特別なことが何もない日でも「給食のおかずがおいしかった」とか「友達がこんなにおもしろいことを言っていた」とか、話題を探して話している様子を見ながら、「こんな風に話しながら、学校は楽しい場所なんだって確かめていたんだな」っていうことにも気づかされたの。
 ある時、おばあさんにこのことを話してみたの。そうしたら、こんなことを話してくれたわ。
「私たちはそんなに難しいことまで考えていなかったわ。私たちは戦争で苦労をしたから、楽しく学校に通っている様子を聞くことが嬉しかっただけだよ。おじいさんは少し違ってね、『楽しい思い出は、誰にも奪えないものだから。』っていつも言っていたわ。」
 子育て中のお母さんたちから「子供たちが話しをしてくれない」っていう言葉をよく聞くけれども、子供たちに話しをさせるように、子供たちが話せるようにしてやるのも親の仕事、親の喜びなんじゃないかしら。忙しがらないで団欒の時間を大切にしてほしいなって、いつも思うのよ。
 子供が小さいうちは、話しを遮らないで、「大切なことを話してくれているんだ」っていう気持ちで聞いてあげてほしいの。「大事なことを教えてくれている」っていう聞き方をしてみてほしいわ。子供たちは、新しい世界で冒険や挑戦の日々を過ごしているんだから、感心したり、驚いたりするような聞き方をしてあげてほしいの。そうやって子供の世界を一緒に楽しんでおくことが、悩みや不安を打ち明ける勇気に繋がるのだと思うから。

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