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For Beautiful Human Life-2

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ショートショート「それでは、第一問」

異星人がやって来た。宇宙の遥か彼方、何万光年もの距離を越えて。とはいえ、彼らの科学技術をもってすれば、そんな距離は近所のコンビニに行くも同然である。異星人は、人類を遥かに凌ぐ知性を持っていた。人類の数学者が長年考え続けていたような未解決問題だって、異星人にしてみれば子供の頃に学校でやった懐かしい問題である。
「我々がやって来た目的は」と異星人は全人類に対して呼び掛けた。異星人の高度な技術によって

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ショートショート「金魚」

「あなたと一緒にすくった金魚が、いつの間にかこんなに大きくなりました」と書いた手紙を破り捨てながら、自分の未練がましさに辟易した。一緒に送ろうと撮った金魚の写真は壁に貼った。金魚に罪はない。
どうせすぐ死んでしまうだろうと思っていた金魚が、長生きをして、今では金魚鉢が手
狭といった具合。いつまでも続くだろうと思っていた恋が、呆気なく終わった。
形を整え、輪郭をはっきりさせて、綺麗な包装紙で包

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ショートショート「前世」

その夫婦の前世は犬であった。夫婦はそのことを知らないけれど。まあ、たいていの人は自分の前世を知らない。知っていると主張するひとはたいてい白い目で見られる。知っているけれど、知っていると主張すると白い目で見られるから、知っているのを隠している人もいるかもしれないけど、知っているということを主張すると白い目で見られるということは、少なくとも自分の前世を知っているということは表立って言うべきことではない

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ショートショート「賢い人々と愚かな人々」

そこは人跡未踏の秘境、たどり着くまでにいくつものジャングルを通り抜け、険しい山を越えなければならない土地。そこには賢い人々が暮らしていた。飛び抜けて賢い人々だ。賢い人の集まりではなく、人々が人々として賢い。
賢い人々は狩猟採集の生活をしていた。もちろん、賢い人々なので農耕をしらないわけではない。種が発芽する仕組みもわかっていたし、品種改良の技術だって持っていた。それでも狩猟採集の生活をしていたの

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